“老婆役”を含め(!)、まだやっていない
キャラクターは何でもやってみたい
『道化の瞳』写真提供:東宝演劇部
「脚を出すこと自体は珍しいことではなかったんです。退団第一作の小林香さんの『DRAMATICA/ROMANTICA』でも、初ミュージカルである坂元昌行さん主演の『パル・ジョーイ』でも脚は出していたのですが、『ロコ~』はタンゴというセクシーなダンスだったことで、露出度が強調されているように見えたのかもしれないですね。男役を16年やっていたので、女性らしさをたくさん学ばせていただいた作品でした」
――男女のキャラクターが出てきてタンゴを交えて…となるとラブストーリーが予想されるところを、ヒロインのアイデンティティ探しの話に集約されていくのがユニークでした。
「小林香さんはよくあて書きをされるんです。女っ気をあまり感じない役でしたが、香さんから見ると私はそう見える部分があるのかもしれません。けれどもダンスシーンではタンゴを踊って、そこでは女らしさを追求する。そのギャップを楽しめる作品でした」
――そういう自立した女性の役もはまりますが、『道化の瞳』での母性愛を体現するようなお役もぴったりでした。
『道化の瞳』写真提供:東宝演劇部
――『ラブ・ネバー・ダイ』のメグ・ジリー役も素敵でした。オリジナルの『オペラ座の怪人』とはずいぶん異なる、哀しい女性のキャラクターでしたが…。
『ラブ・ネバー・ダイズ』撮影:渡部孝弘
――表現者として、今後についてどんなビジョンをお持ちですか?
「お芝居って、役者は台詞をあらかじめ知っているし、基本的に“嘘の世界”だと思うんです。でもいつも、嘘でない表現をしたい、「初めて聞いた」「初めて口から出る」という演技をしたいと思っています。お客様たちも、嘘の世界とわかった上で、芝居の中に真実を求めてきてくださっているので、お返しをしたいんです。“下手だったね”“伝わってこなかったね”となっちゃうのは、きっと真実を伝えきれなかったということ。嘘のことをやっていても、実際に起こった出来事として信じていただけるような役者でいたいと、いつも思います。例えば私は彩吹真央、さらに言えば本名の私ですが、今回なら“ジュディ・ガーランドを観た”と思っていただけるようにしたい、そこは大きな目標ですね。そう思っていただける方が一人でも多くいていただけるような仕事を、ずっと積み重ねていけたらと思います」
――役どころ的に「こんな役をやってみたい」というものは?
「宝塚をやめて6年目に入りましたが、今回の役に出会って、私はこういうお仕事がしたかったんだと気づきました。今回すごく魅力的に思えたのは、ジュディ・ガーランドを演じるということもそうですが、一人の女性を濃く、生き様を表現できる、そういう役を演じてみたいとどこかで思っていて、今回“これだ!”と思えたのだと思います。
『ラブ・ネバー・ダイ』撮影:渡辺孝弘
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「今回の台本を読んでいて、やはり親の育て方って大事なんだなあと痛感しました」というと「お子さんいらっしゃるんですね。何歳ですか?でも小さい時から舞台を見せてあげていると、きっといいことがあると思いますよ、私もそうでした」と、さりげなくアドバイスしてくれた彩吹さん。その優しい語り口に、これまできっと多くの後輩たちに慕われてきたのだろうと、容易に想像されました。そんな彩吹さんの肉体にジュディ・ガーランドが“降り”て来る、今回の『End of the Rainbow』。新境地を拓く役となること、必至です!
*公演情報*『End of the Rainbow』8月21日~9月3日=DDD青山クロスシアター
*次頁で観劇レポートを掲載しています!*