パートナーと「良い喧嘩」をしていますか?
男性と女性は根本的に違うもの。衝突をすることで見えるものもあります。(c)Vive la Palestina
クライアントさんからこういった相談を受けることがあります。その際、私は「相手とどれくらい“正直なコミュニケーション”をしていますか?」と聞くようにしているのですが、みなさん「まぁそれなりに……」という回答がほとんどです。相手を“人生の戦友”と思えるような深いパートナーシップを築きたいと思っている反面、思っていることの約50%程度しか相手に伝えていないというカップルが大半なのです。
理由を聞くと――「嫌われたくない」「相手には理解してもらえないから」「喧嘩をしたくない」という答え。その気持ちは、私にもじゅうぶん分かります。しかし、男女の関係というのは同性との人間関係よりも複雑であり、互いに意見を衝突させることでしか理解しあえない部分があります。
相手の価値観を理解すること
男性脳、女性脳というキーワードを目にすることがあるかと思います。話をするときに「男性は“解決”を目指したアドバイスをしがち」ということに対して、「女性は解決よりも“共感”してほしい」という傾向もそのひとつです。もちろん、すべての人に当てはまるというものではありませんが、ひとつの真実でもあります。男女の脳の違いは、「頭ではわかっていても理解できない」という方が多いと思います。男性は「どうして女性は会話に終着点がなく、ただ話を聞くだけでいいのだろう?」と思い、女性は「ただ共感して欲しいだけなのに、どうして男性はすぐ説教っぽくなるのかしら?」と思い、お互いの傾向を知っていても不思議で、腑に落ちないものなのです。
このように、男性と女性は行動の仕方から価値観などが大きく違います。いわば、お互いに持っている『ルールブック』が違うのです。よって、自分の価値観を主張するだけではなく、「相手の価値観や基準をいかに理解できるか」がお互いの関係性を深くするのに重要な要素となってきます。
衝突をすることで見えるものもある
では、相手の価値観や基準を理解するにはどうすれば良いのでしょうか?「あなたはどんなことが一番大切だと思ってる?」と会話で引き出すことができれば簡単なのですが、なかなかできるものではありません。
というのも、自分の中では当たり前すぎて、「これくらい知っていて当然」「これに関してはこのルールで決まっている」というように、お互いが自分の価値観を絶対に正しいと思っているので、相手に聞いてみようと思わないからです(笑)。
たとえば、「テレビのリモコンの位置は相手が直すのが当然」「仕事をしているときは話かけないのが大人のルール」「悩んだときは、恋人同士なら相談するべきでしょ」――このような自分だけのルールがあまりにも意識に溶けこんでしまっているのです。もし自分のルールを破られてあなたが怒ったとしても、相手は「どうしてそんなことで怒るの?」と疑問に思ったまま不機嫌になり、気まずい関係になってしまったりもします。
どうしてそう思ったのかを伝えるのが「良い喧嘩」
人は、仕事の仕方から服装の好みまで、違うところが沢山あるのが当然です。しかも男女関係の場合は、より一層相手と違うところが浮きぼりになります。そうした違いに関して、「どうして相手は分からず屋なんだろう」と嘆くよりも、「なるほど、そういう違いがあるんだな」「違うところがあるから、お互いに成長できる」と思うことが大切です。このようにお互いの違いをすり合わせるのによい機会なのが「喧嘩」です。つまり、喧嘩の火種である「意見の食い違い」を利用して話し合うのです。喧嘩に発展しそうなときに自分の考えを正直に言い、どうしてそう思うのを説明した方が良いのです。さきほどの例だと――「なぜ仕事中に話しかけるの? 自分は仕事中は話しかけられるのが苦手なんだ」と。そうすると相手も、「そういう理由で今までこういう行動をしていたのか!」と初めて理解することができます。つまり、「話を聞いてくれないと思っていたけど、仕事中は話したくなかったのね。でも、無視をするのは感じが悪いと思うよ」というように返します。決して感情的に相手を責め立てることだけが、喧嘩の仕方ではありません。
「喧嘩をしたり、意見をぶつけるのが怖い」という人は、「たとえ喧嘩になっても嫌いなわけではない。好きだからこそより深く分かり合いたいのだ」ということを日常から相手と話し合っておきましょう。くれぐれも、「好きであれば知っていて当然でしょ?」という態度を取らないことが重要です。
育った環境から何から何まで違うわけですから、価値観の違いを楽しむぐらいの気持ちでいましょう。このように喧嘩は『お互いのルールブックを交換しているだけ』と思えるようにすれば、こうした機会も楽しめるようになります。結果、本人が自覚していないくらい深い価値観を理解し、相手の行動の意味までわかり合えるようになるのです。