アルドンザという役が内包する
“女性”の生命力を探求中
『ラ・マンチャの男』記者会見にて。(C)Marino Matsushima
「女性としては、とても厳しい役どころですよね。“こんなふうに生きていくしかないのさ”と歌うシーンもあるのですが、それでもなぜ彼女は、生き続けることができたのか。ドン・キホーテに対して“なぜあなたはそんなに騎士道を求め続けるのか”と自分から発信してゆく様子などを見ていると、彼女は根本的に自分の置かれている状況に屈していなくて、あきらめていない。ドン・キホーテという存在にも刺激を受けて、自分自身の生き方を見つめなおせるバイタリティのある人なんですよね。
根本的に、女性は強いのかな、と思えます。言葉にすると薄くなってしまうかもしれませんが、男性がドン・キホーテのように彷徨える存在であるのに対して、女性は母なる大地のようにいろんなことを受け止めて生きてゆける。そういう女性の生命力を、アルドンザを通して表現できたらいいのかなと思います。最後にドン・キホーテの肉体は滅んでいきますが、彼のテーマをアルドンザが歌い、その魂を受け継いでゆくような流れになっています。女性としての“人生のとらえ方”を、悲惨な目に遭いながらも失わない人として演じられたらいいですね」
――音楽的にはミッチ・リーの本作はいかがですか? プラシド・ドミンゴ主演のCD版を聴くと、アルドンザを歌っているオペラ歌手の方は地声と裏声を行ったり来たりしていて、音域的に大変そうなナンバーに聴こえました。
「そうなんですよ。そこではおそらく男役の経験を活かせる部分もあるかと思いますが、それだけなく、クラシカルな発声での表現もできなければいけないので、喉のコンディションを含め、これからの大きな課題の一つになってくると思いますね」
――今回、特にご自身のテーマとされていることはありますか?
「すべてですね。先ほども会見で皆さんのこの作品に対する思いや情熱、役者人生ひっくるめての思いをうかがっていると、そこに自分も役者として人として、プライドをぶつけられるのかなあと思いますし、そういったことがすべてテーマになってくると思います。私の仕事人生においても、とても大きな体験になるような気がしますし、何かの力でここに導かれたように感じているところです」
*次頁では霧矢さんの“これまで”を伺います。ダンス好きの少女が宝塚に首席で入団、順風満帆のなかで経験した挫折は、彼女に何を与えたのでしょう?