テクノポップ/アーティストインタヴュー

ケラ&ザ・シンセサイザーズの新譜製作秘話(3ページ目)

有頂天の新作『lost and found』と同時発売となったケラ&ザ・シンセサイザーズの新作『BROKEN FLOWERS』からは、ニューウェイヴでありながらもサイケデリックなテイストも伝わります。予期せぬメンバーの途中脱退により難産となったこのアルバムの製作秘話についてKERAさんに語っていただきました。

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

8人のゲスト・ギタリスト

ガイド:
今回はゲスト・ギタリストが8人も迎えられていますが、実に多彩な顔ぶれですね。当サイト的には、ムーンライダーズの白井良明さん、POLYSICSのハヤシさん、FLOPPYの小林写楽さん、くるりの岸田繁さんの起用のされ方が興味深かったです。

KERA:
良明さんは後期ムーンライダーズでハッチャケ担当みたいな印象があったので、「ロケット・ソング」と「大発見(休息と抵抗)」で悩みました。どっちを良明さんでどっちをハヤシ君に弾いてもらうか。もちろん二人とも様々なスキルをもっているということは分かっているんですけど、陽性なギタリストが二人っていう印象だったんですよね。

岸田君と写楽君に関しては、バンドではギターも弾くヴォーカリストみたいなポジションじゃない?その二人に今回は、純然たるギタリストとして参加してもらう。声は一切入れない。写楽君はギタリストとして何ができるのか未知の部分もあったけど、この曲(「ポピーズ」)なら色々なアプローチが可能なのかなと思って。岸田君も、くるりで色々なタイプの音楽をやっているじゃない? だからこういうギタリストっていう(固定された)イメージがあんまりないんですよね。去年ワーハピで会った時に「ギタリストとして参加してほしいんだけど」って頼んだらとても喜んでくれて。岸田君はミュージシャンとして非常に面白いと思いますね、もがいてるさまも。

フラワー・ムーブメントから

ガイド:
歌詞に「枯れた花」が何度も出てきますが、これはどういうところから?

KERA:
サイケ・ミュージックをヒントにしたアルバムを創ろうと思いついた時点で、短絡的なんですけど、フラワー・ムーブメントから「花」というモチーフがありました。まだレコーディングに三浦が参加していた時期に「散り行く花」っていうタイトルでコンセプト・シートみたいなものを手書きして、枯れた花のイラストを描いたんです。リリアン・ギッシュって女優さん主演のサイレント映画の名作で『散り行く花(原題:Broken Blossoms)』ってのがあるんですね。それと、ジム・ジャームッシュの『ブロークン・フラワーズ』。意味は同じなんで、英タイトルと和タイトル、どっちがいいかね、みたいな話をしたの覚えてますけどね。

ガイド:
ジャームッシュの『ブロークン・フラワーズ』にイメージを重ねたところがあったのかなと思ったのですが。

KERA:
世界感は無関係ですね。「枯れた花」がなんのメタファーなのかを言っちゃうのは野暮なので言いませんけど、今の世の中、枯れた花だらけだと思うんですよ。僕の目から見て。どこか劇作家的な目線ですね。僕にとってフル・アルバムを作るってそういうことなんですよね。1曲1曲が演劇におけるシーンみたいな。
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