他の災害とは異なる、地震被害の特殊性とは?
大地震が起こった街の様子
保険は一般に、各損害保険会社が商品開発をして金融庁の認可を取り、営利目的で販売されています。
また通常の保険商品は、「大数の法則」を用いて保険料が算出されています。例えば、さいころを数回転がしただけでは、出る目は偶然出現しているように見えますが、転がす数が多ければ多いほど出る目の確率は6分の1に近づいていきます。つまり、たくさんのデータを集めるほどその発生確率は一定値に収まる。これが大数の法則です。火災や災害の発生確率などでもこれが当てはるため、一般の保険は大数の法則をベースに保険料がはじき出されています。
ところが地震で被害に遭う確率は、大数の法則には乗りにくい特性があります。それは他の災害と比べ、地震の発生数自体が少ない点が挙げられます。現在から過去500年を見ても、被害を及ぼす地震は350回しか発生していません。超長期で見れば発生頻度を推測することもできなくはありませんが、短期間のデータでは、一般的な保険のように1年毎の発生確率をはじき出すことは困難でしょう。
さらに、地震がどの規模で発生するのか、どこで起きるか、どのような季節でいつごろの時間に起こるかによって被害の大きさが変わるため、どの程度の保険金を支払うことになるかの予測も困難です。つまり地震による被害は、いつ、どこで、どの規模になるのかの予測が難しい地震の災害特性から、そもそも保険商品に仕立てるのが難しい損害といえるのです。
こうした理由から、地震保険は長年、民間損害保険会社だけでの運営は困難と考えられてきましたが、1964年の新潟地震を契機に「地震保険法」が成立。民間損保会社だけでなく政府もその保険金支払いをバックアップする官民一体の保険制度として1966年、地震保険制度が創設されたのです。
このように特殊な経緯で生まれた地震保険は、補償内容をはじめ、保険金の支払いや私たちが支払う保険料についても法律により定められ、どの損害保険会社も内容は同一です。
政府の被害予測をもとに純保険料を算出
私たちが負担する地震保険料は、地震保険料率により算出されます。地震保険料率は「純保険料率」と「付加保険料率」で構成されていますが、この点は一般的な保険と同様です。純保険料率は、将来の地震被害で支払われる地震保険金に充てるためのものです。純保険料率の算出にあたっては、地震の規模や発生場所、時期や時間、建物の状況その他を踏まえどのくらいの損害が発生するかが予測されます。その際に用いられるのが、文部科学省の地震調査研究推進本部が作成する「確率論的地震動予測地図」です。これはすべての地震の位置・規模・確率に基づき、各地点がどの程度の確率でどの程度揺れるのかをまとめて計算し、その分布を地図に示したもの。地震学の最新の知見を反映したものであり、2007年10月以降はこのデータが保険料率の算出に用いられています。下図の赤が濃くなるほど、地震の発生確率が高くなります。
■確率論的地震動予測地図(基準日:2014年1月1日)
2014年から30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布
確率論的地震動予測地図(基準日:2014年1月1日) 2014年から30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布
地震保険では、確率論的地震動予測地図の作成に用いられた地震が発生した場合に、どれだけの保険金を支払うことになるかを、個々の被害予測シミュレーションに基づき予測しています。それにより、1年間当たりの予想支払保険金を算出し、それをベースに純保険料が計算されています。よって、確率論的地震動予測地図が見直されると、地震保険料率もそれに応じて随時、必要な見直しが行われることになります。
次は、地震リスクに対する備えについてアドバイスします。