ジャズとフュージョンの違いは何か
ジャズとフュージョンの違いとおすすめの名盤
<目次>
ジャズとフュージョンの違いは「視点」
まず、最初にフュージョンとジャズは違うのか?と言うところから説明したいと思います。結論から言うと、同じものですが、言い方が違うということになります。視点が違うと言っても良いかもしれません。例を挙げると、ジャズがうどんならば、フュージョンがカレーうどん。カレーうどんは、うどんだけどいわゆるうどんじゃない。カレーだけどカレーでもない。カレーうどんはまさにフュージョン(融合)です。うどんの範疇にもカレーの範疇にも入り、立派にカレーうどんとして人気があります。
うどんであるジャズには、カレーうどん(フュージョン)の他にも具材や味付けでいろいろなヴァリエーションがあります。スウィング・ジャズ、モダン・ジャズ、ボサ・ジャズ、フリー・ジャズ、アシッド・ジャズ、スムース・ジャズなど、いろいろあるのがジャズです。
フュージョンは、いくつかの音楽がまさに融合してできたもの。ジャズを主体として、同じアメリカ生まれで兄弟のような「ソウル」、アメリカ生まれのイギリス育ちの「ロック」、南米生まれの「ラテン」がミックスされた音楽。スパイシーでかつ食べやすい(聴きやすい)洗練された音楽と言えます。
ここがジャズとフュージョンの違いです。
作品紹介1:フュージョンを代表する名盤
フューズ・ワン「シルク」より「ヒューマン・スピリット」シルク
特にこの曲「ヒューマン・スピリット」は、今やジャズ界を代表するトランペット奏者ウィントン・マルサリスが参加しているということで、話題となったものです。
ウィントン・マルサリスは、現代を代表するジャズ・トランペッター。ジャズ以外の音楽に対しては、自身のバックボーンにあるクラシック音楽を除き、否定的ともいえる過激な態度や言動でも有名です。そのウィントンが、若気の至りか、フュージョンでのソロを取っていたという、ここでしか聴くことのできない珍品でもあります。
この曲はまず、テクニシャンのスタンリー・クラークのベースソロから始まります。幾分スパニッシュなテイストで、情緒たっぷりにベースによって歌い上げられた後は、コンガとドラムがリズムを押し出し、そのままインテンポでテーマに入ります。
ここで、颯爽と登場したのが、ウィントン。8小節のテーマを2回繰り返し、その流れのままに、ここでのウィントンは40小節(5コーラス)に渡るブリリアントなソロを繰り広げます。まさに、圧巻の出来。これ以外では聴くことのできないウィントンのフュージョンは、フュージョンとしてもそしてジャズとしても立派なものです。もっとフュージョンでのウィントンを聴いてみたいという思いを抱かせる力演です。
この「ヒューマン・スピリット」は、ジャズ、ラテン、スパニッシュ、ソウルなどが見事に融合して出来上がったフュージョン全盛当時の代表的な演奏であり、極上のフュージョンと言えます。
フュージョンのきっかけとなった「ジャズ・ロック」
フュージョンは、ジャズの範疇にあり、他の音楽の影響も受けたものだということは、お分かりいただけたかと思います。そのフュージョンも、ジャンルとして確立するまでには、そこに至るまでの経緯がありました。ジャズ自体がその発生から発展に至るまで、様々な音楽が融合してできたものです。まさに人種のるつぼ、アメリカらしい音楽と言えます。
フュージョンと言う言葉は70年代後半から、80年代に入って使われるようになった言葉です。それ以前70年代の後半までは「クロスオーヴァー」と呼ばれていた時期があり、そもそもの流れを作ったジャンルは「ジャズ・ロック」と呼ばれ60年代中盤からありました。
そのフュージョンのきっかけとなった「ジャズ・ロック」の決定盤がコチラ!
作品紹介2: ジャズロックを代表する名盤
1964年の大ヒット!リー・モーガンの「ザ・サイドワインダー」ザ・サイドワインダー
親しみやすいテーマが、リーのトランペットとテナーサックスのジョー・ヘンダーソンにより奏でられ、そのままリーによるソロに入ります。このリーのソロももちろん雰囲気たっぷりで良いですが、さらに次に出るジョーのテナーソロが白眉。
ロックに対応したサックス奏者のアイコンとして、当時のジョーの存在は、日本においてもサックス奏者のあこがれの対象でもありました。乾き、ひしゃげたテナーの音色はまさにハードボイルド。すでにカッコイイ音楽が、ジャズからロックへと移行していたこの時代において、ジョーのサックスはジャズ界にもロック界にもアピールできる「時代のカッコよさ」がありました。
作品紹介3: フュージョンの隠れ名盤
フュージョンが、ジャズの中にあって、ジャズ・ロックからクロスオーヴァー、そしてフュージョンへと変わってきたことはお分かりいただけたかと思います。そこで、数多くあるフュージョンの作品の中でも、意外と知られていない隠れ名盤をご紹介いたします。
フュージョンの隠れ名盤がコチラ!
80年代の「クール・ストラッティン」ハリス・サイモン「ニューヨーク・コネクション」より「ストーン・ヘンジ」
ニューヨーク・コネクション
ソニー・クラークの「クール・ストラッティン」は、ハード・バップ期を代表する人気盤です。ブルーノートの顔とも言ってよい名盤。
クール・ストラッティン
- リーダーがピアニストであまり有名でない
- 共演者が極めつけの名演を残している
- 足ジャケ
1、リーダーがピアニストであまり有名でない
ソニー・クラークは、日本でこそバド・パウエル派のピアニストとして人気があり有名ですが、本国アメリカではジャズ界においても忘れられた存在です。この「クール・ストラッティン」も日本での人気が嘘のように、あまり評価を得ていません。
理由は、個性を重んじるアメリカにおいて、バド・パウエルのフォロワーとしかとらえられていないということがよく言われています。63年に31歳で早逝したということも要因の一つと思われます。
ハリス・サイモンも、80年代にこの「ニューヨーク・コネクション」と2作目「スウィッシュ」を発表して、その後は活動が聞こえなくなってしまったピアニスト。本国アメリカでは両者ともに無名に近いピアニストと言う点で共通しています。そしてハリスに至っては、日本でさえほとんど知られていません。
2、共演者が極めつけの名演を残している
「クール・ストラッティン」「ニューヨーク・コネクション」ともに、本人はもちろん、共演者が快演を聴かせてくれるのが共通しています。
「クール・ストラッティン」では、アルトのジャッキー・マクリーンが、そして「ニューヨーク・コネクション」では、テナーのマイケル・ブレッカーです。両者ともに、当時を代表する名演を聴かせてくれます。
3、足ジャケ
そして、ジャケット。「クール・ストラッティン」は、演奏もですが、女性の足を写したそのジャケットのデザインでも有名です。「ニューヨーク・コネクション」のジャケットも足ジャケ。ここが共通しています。
この他にもハリス・サイモンでは、この次に出た「スウィッシュ」における表題曲「スウィッシュ」も、疾走感あふれる快演です。ただ残念なことに、1作目2作目どちらも長い間再発されておらず、なかなか手に入りにくくなっています。どちらの作品も再発されたら、またすぐに無くなる前に手に入れることをおすすめします。
今回のジャズとフュージョンの違いはいかがでしたか。次回以降も、そのほかの音楽ジャンルとのわかりやすい違いをご紹介していきます。
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