ホープ(ヴァイオリン) 楽園への脱出
ハリウッドをテーマにした珠玉の名曲集! 毎回知的なコンセプトで企画性の高いアルバム作りをするホープ。今回は「楽園への脱出」をコンセプトに、ナチスを逃れてハリウッドに流れ、ハリウッド映画の音楽の隆盛を築いた亡命ユダヤ人作曲家の作品をテーマにしたユニークなアルバムを制作しました。コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲を核に、20世紀の新ロマン主義作品集といった趣のセンスが光る一枚です。
■ガイド大塚の感想
ハイフェッツばりの艶やかなヴァイオリンが全編を彩る。単に名曲集というのではなく、1曲1曲を慈しむように丁寧に弾き、トータルとして、甘美な音楽に隠された亡命ユダヤ人という切なさが伝わる、好コンセプトアルバム。アイスラーの「シークレット・マリッジ」では、ソロ作でカバーしていたスティング自身が歌で参加しているのも音楽好きには嬉しいポイント。
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シュラーダー(クラリネット) 古典派の室内楽、バセット・クラリネットとバセットホルン
200年以上前のヨーロッパでは、楽器のつくりも弾き方も今とは全く違っていました。だからモーツァルトたちの名曲も、現代の楽器では再現できない要素がたくさん。さらに古典派音楽の中心地ウィーンで育った演奏家たちは「ローカル音楽としての古典派のツボ」も肌でわかるそうです。今の楽器より低いところまで音が出せるクラリネットの亜種2種を交え、ウィーンの古楽器奏者たちが素材感たっぷりに聴かせる「生の古典派音楽」を!
■ガイド大塚の感想
ともかくバセット・ホルン、バセット・クラリネットの音色が魅力的。豊かな低音を中心に、全体として穏やかなレトロな感じが何とも絶妙な魅力。演奏もその性格を理解したなめらかさを意識したアンサンブルで、セピア色の写真が美しいのと似て、格別の愛着を持つような演奏が繰り広げられている。モーツァルトのクラリネット五重奏曲も温かで心地良い。
反田恭平(ピアノ) リスト:ピアノ作品集
20歳にして客席に熱狂を呼ぶ驚異のピアニスト、反田恭平デビューCD。
恐れを知らない大胆さと自在さ。前へ前へと果敢に攻めるかと思えば、意のままに時間を操る柔軟な歌の表現。磐石なテクニックの下、縦横無尽に繰り広げられる鮮やかで雄弁なピアニズムは、聴く者を瞬く間に虜にします。使用ピアノは「ホロヴィッツが恋した楽器」として知られた銘器。9月には東京フィル定期への大抜擢で、今後の活躍が注目されている大型新人。
■ガイド大塚の感想
溢れる情熱を銘器CD75にぶつけた青春のリスト。テンポなど思い切って揺らす部分もあり、熱狂を生み出している。「スペイン狂詩曲」などに顕著なように、音色の弾き分けが巧みで、美しさ・暗さ・激しさなど、作品の性格をはっきりと描く。反田の技術・個性はもちろんだが、やはりこのヴィンテージ楽器との相性の良さも特筆すべきもので、新たな才能を受け止め、鳴らし応えるような不思議な科学反応がある。このピアノを嬉々として弾く姿をコンサートでも見たが本当に良いパートナー関係にあると感じた。
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クリッヒェル(ピアノ) 春の夜~ドイツ・ロマン派名曲集
今ヨーロッパが大注目する新星ピアニスト、アレクサンダー・クリッヒェル。6歳からピアノを学び、15歳でハンブルク音楽演劇大学に入学、ロシアの名ピアニストで名教師のクライネフに師事。国際的なピアノ・コンクールに続々と優勝して注目を浴び、2013年にはドイツの権威あるエコー賞「新人賞」を受賞した逸材です。7月の2度目の来日公演に際して発売されるのは、シューマンの歌曲集「リーダークライス」作品39の最終曲「春の夜」をタイトルに据えたソニー・クラシカルへのデビュー盤。
■ガイド大塚の感想
考えられ完全にコントロールされ整えられた音楽。一聴すると優等生的な正統的な演奏だが、厳格な変奏曲のクレッシェンド、激しいフォルテ、なめらかなアッチェレなど、単なる優等生の枠に収まらない表現の幅がある。粒が揃っていて、美しい。歌を歌い上げる。物語を描き切った後、アンコールのように感じるウェーバーの軽やかに鍵盤の端から端までを駆け回る様もチャーミング。ここでも粒は揃い聴き応えある。
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