舞台から離れて見えたもの
吉野
演劇科の高校を卒業後、劇団四季に入って、いくつか舞台にも出させて頂いたのですが、当時は若かったこともあり「何か他にも道があるんじゃないか」ってふと思ったんです。元々、キャンプとかモトクロスバイクとかトライアルレースが好きで、ちょっとそういう道にも挑戦してみたいな、と。
それでまずは環境を変える為にも住み込みのバイトをしようと決めて、山中湖のキャンプ場に行きました。昼間はキャンプ場でスタッフをやり、夜は隣のホテルで布団を敷いたり配膳したりと裏方的な仕事をして過ごしていたんです。
そんな生活が半年くらい続いて、ある時キャンプ場の森の中でゴミ捨て場の掃除をしていた時に、気が付いたら木に隠れて「ジーザスごっこ」をしてたんです。ユダになって「♪私は今、分かるのだ~」なんて歌いながら一人ジーザス(全員爆笑)。その時に「ああ、俺やっぱり舞台がやりたいんだなあ」って自覚したんですよ(笑)。
それでキャンプ場のバイトを辞めて帰ったところでイベントのステージ出演のお話を頂き、有名メーカーの香水をプロモーションするショーに出て、その後はイベント制作会社の事務所でアルバイトをしていました。そんな時に音楽座の『シャボン玉とんだ宇宙までとんだ』を観て「ああ、俺、ここに入る!」と決め、青山劇場公演のオーディションを受け音楽座に入団しました。
――怒涛ですね(笑)。でも色々な方にお話を伺っていると、一定期間舞台から離れた経験をお持ちの俳優さんの方が、その後折れないで活躍なさっているように思います。
吉野
当時はとにかく強気で「いつでも辞めてやる」くらいの感じでいましたね。勿論、一作品ずつ最高の情熱も注ぐんですが、毎回「これが最後」位の気持ちでやっていたかもしれません。
今後演じてみたいキャラクターは
まさかの○○○!
――吉野さんが今後トライしてみたい役柄や作品がありましたら教えて下さい。吉野
それはもう……ファンタジー!です。ストレートプレイにも挑戦してみたいですね。これまであまりシリアス一直線みたいな舞台にはご縁がなかったので、そういう作品も面白そうとは思うのですが。
あ、人じゃない役をやってみたいです! 帝国劇場で犬が大活躍するファンタジーとか(笑)。後は……妖怪! 帝劇で『ゲゲゲの鬼太郎』とかやったらいいなあ。ウィーン版『ゲゲゲの鬼太郎』!(全員爆笑)。
演出はぜひ『ライムライト』と同じく荻田先生で! 僕はその時「カッパ役」を演じさせて頂きます。器用に強い方に味方しながら立ち回って、グロいところもありつつ、気に入らない奴を沼に引きずり込む、みたいな。でもきゅうりを貰うと途端に機嫌と愛想が良くなっちゃうという素敵なカッパ(笑)。そんな企画があったら、絶対に出演させて頂きたいです!
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『モーツァルト!』のシカネーダーや『レディ・ベス』シモン・ルナール、『ダンス・オブ・ヴァンパイア』ヘルベルトなど、ちょっとクセがありつつ個性的で、それまでの舞台の空気をガラっと変えるキャラクターを多く演じていらっしゃる吉野圭吾さん。
本作『ライムライト』では、そんな鮮やかさと大人の渋みを併せ持つ劇場支配人・ポスタント氏を演じられます。
今回吉野さんにお話を伺って”意外性”に富んだ俳優さんなのだな、と改めて思いました。ファンタジーがお好きと言いつつ、モトクロスバイクも巧み。ご自身のことは”不器用”と評される……舞台上ではあんなに自由に、華やかに跳んでいるのに。
いつか観られるかもしれない「カッパ役」に期待をかけつつ(笑)、老道化師・カルヴェロの戦友でもあるポスタント氏の魅力を、まずは堪能したいと思います。
音楽劇『ライムライト』
◆音楽劇『ライムライト』
2015年7月5日~15日 シアタークリエ
原作・音楽 チャールズ・チャップリン 上演台本 大野裕之 演出 荻田浩一
石丸幹二 野々すみ花
良知真次 吉野圭吾 植本潤 保坂知寿 ほか
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