12月11日に東京・日比谷のシアタークリエで開幕した『ロンドン版 ショーシャンクの空に』。スティーブン・キングの中編小説「刑務所のリタ・ヘイワース」を基にした本作は1994年にティム・ロビンス、モーガンフリーマンの主演で映画化もされています。今回は2009年にアイルランドのダブリンとイギリス・ロンドンで上演された戯曲を白井晃氏の演出で舞台化。佐々木蔵之介さん、國村隼さん、三浦涼介さんら男性ばかり18人のキャストが、刑務所という閉ざされた空間で繰り広げる濃密な舞台の模様を、演劇ガイドがレビュー形式でご紹介します!

”色のない世界”ショーシャンク刑務所に一人の男がやって来る
その男がもたらしたものとは

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『ロンドン版 ショーシャンクの空に』

恐怖と暴力に支配される最悪の刑務所”ショーシャンク”に一人の男が収監されてくる。その男の名前はアンディ・デュフレーン(佐々木蔵之介)。若い銀行家として成功していた彼の罪状は妻とその愛人の殺害。2回分の終身刑を受けての収監だ。刑務所での生活に馴染めないアンディが最初に話しかけたのは、受刑者が必要とするものをどこからか手に入れ商売している「調達屋」のレッド(國村隼)だった。アンディはレッドに趣味の鉱石細工に使うロックハンマーを入手して欲しいと頼む。

刑務所内では囚人に労働させた賃金のピンハネをしている刑務所長のスタマス(板尾創路)や看守長のハドリー(粟野史浩)が圧倒的な権力を持ち、暴力的な囚人・ボグス(谷田歩)、図書館係の老囚人・ブルックシー(小林勝也)、後にアンディとも親しくなるヘイウッドやアーニー、チェスターらの受刑者たちを完全に支配していた。そんなある日、若い囚人・トミー(三浦涼介)がショーシャンクに収監された事でアンディの運命は大きく動き出す……。

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『ロンドン版 ショーシャンクの空に』

舞台一杯に作られた複数の鉄格子……その鉄格子が大きく叩かれ金属音が鳴り響くオープニングで幕を開けた『ロンドン版 ショーシャンクの空に』。全編暗めの照明と、黒、グレー、白、くすんだ紺、茶色といった”色彩のない世界”から刑務所の閉塞感が客席にまで強く伝わってきます。

新人受刑者として連れて来られるアンディ役の佐々木蔵之介さんの目からは感情が消えており、全ての衣類と共に彼の人間としての尊厳が剥ぎ取られる様子は痛々しく、彼が刑務所内で次々と受ける理不尽な暴力に胸が痛みます。

佐々木さん演じるアンディはほぼ生の感情を表に出さず、基本ニュートラルな状態でその場に存在。地獄のような生活の中で自分の武器を見つけ、その武器を利用して少しづつ自らの居場所を変えていく……。知的で冷静でありながら、ボグスらの暴力とは真っ向から戦い、所長と交渉するしたたかさも併せ持ち……と、ただの「正しい人」で収まらない人物造形がとても魅力的だと思いました。主演として完璧に受けの芝居を成立させながら、場を引っ張っていく姿には俳優としての胆力を感じます。

アンディがショーシャンクにいた19年間の年月を、身のこなしや表情で明確に見せていく技術も流石。佐々木さんの佇まいから観客は”19年の重さ”を実感するのです。

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『ロンドン版 ショーシャンクの空に』

映画ではモーガン・フリーマンが演じた「調達屋」レッド役の國村隼さんは語り手としての役割も担いながら、時に観客と同じ目線でアンディを見つめ、彼について語っていきます。

次のページではトミー役の三浦涼介さんが登場!