映画版とは一味違う舞台ならではの”視点”

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『ロンドン版 ショーシャンクの空に』

1994年に公開された映画版と、今回のロンドン版にはいくつかの相違点があります。中でもガイドが強く感じたのはアンディとレッドの関係性についてでした。

映画では「相棒」と呼ばれるほど名実ともに親しかった2人ですが、ロンドン版の舞台ではお互いを認め合い信頼しつつも、一定の距離を保って付き合っているように思いました。これは主にレッドのキャラクター造形の違いによるところが大きいのかな、と。

映画版のレッドはどちらかというと「陽」の人で、自分から周囲を巻き込んで場を盛り上げていきます。一方、國村さん演じるロンドン版のレッドはいつも自分の犯した”罪”の意識がどこかにあるのが見て取れる「影」のある役作り。これはアンディからの小さなプレゼントを喜んで受け取る映画版と、”俺はいつでも誰とでもイーブンでいたいんだ”と、頑として受け取らないロンドン版との違いにも表れています。個人的には舞台版(=ロンドン版)の方が、ラストのカタルシスがより大きく胸に迫るように感じました。

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『ロンドン版 ショーシャンクの空に』

”色彩のない”ショーシャンクに大きなエネルギーを抱えて飛び込んでくる新人受刑者・トミー。演じる三浦涼介さんの何とも言えないアホっぽさと(褒めてます)憎めなさが相まって、彼のシーンは心なしか照明も明るくなった気がするほど。

これまで繊細な役柄が多かった三浦さん。初日の前日に行われた記者会見では、演出の白井晃さんに「暗い!もっと明るく! 上を向け、上を!」と何度も注意されたと告白していましたが、そんな裏話が全く想像できないほど明るく鮮やかな空気を舞台上にもたらし、物語後半のキーマンとして”場”を動かす姿はとても魅力的。三浦さん演じるトミーのある種の真っ直ぐさ、素直さがきっちり伝わった事で、アンディの最後の行動に説得力が増したのではないでしょうか。

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『ロンドン版 ショーシャンクの空に』

”変わった”男と”変わらなかった”男
二人の男が見る「希望」

出演者は男性ばかり18人という『ロンドン版 ショーシャンクの空に』。スタマス刑務所長を演じる板尾創路さんのねっとりした嫌らしさや、アンディを暴力的に追い込んでいくボグス役の谷田歩さんの威圧感、枯れた哀愁が刺さるブルックシー役の小林勝也さん等、芸達者な俳優陣によって回される台詞と感情のパスは全く隙がなく、心地良い緊張感が伝わります。

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『ロンドン版 ショーシャンクの空に』


本作のクライマックスと言えるのが「19年間変わらず希望を持ち続けた」アンディの生き様が「希望を持つ事は絶望に繋がる」と、諦めの日々を送っているレッドの人生に”光”を与えた終盤の一場面。「ああ、これがワクワクするってことなのか!」と、忘れていた……忘れようとしていた感情を思い出し、アンディのある計画に乗るレッドの表情はまるで少年の様。そして彼が心の中に広がる風景を見つめながら「これが俺の、希望」と、その”光”を体中で実感するシーンは強く心の芯に刺さります。もう若くはない1人の人間の人生がもう1人の男の揺るぎない信念によって”再生”へと動き出す瞬間……震えます。

名作と言われ、多くの人に愛されている映画版も勿論素晴らしいのですが、舞台ならではの濃密な世界観が観る者の心をギュっと掴み、確実に大きなギフトをもたらしてくれる『ロンドン版 ショーシャンクの空に』。演劇の持つエネルギーとパワーをこれ以上ないほど体感できる傑作です。

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『ロンドン版 ショーシャンクの空に』

『ロンドン版 ショーシャンクの空に』
日比谷・シアタークリエで12月29日(月)まで上演中
(東京公演終了後は仙台、名古屋、広島、大阪、福岡公演あり)

公式HP



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