ほんのひと言で流れが変わってしまった中畑DeNA
連敗から抜け出せない中畑DeNA。その裏には、「ひと言」の影響力があった?
通常のシーズンなら、この時期に12連敗しようものなら、最下位転落は免れない。しかし、今年のセ・リーグは稀にみる低レベルでの大混戦で、3位に踏みとどまった。ついているのかどうかはわからないが、中畑DeNAに昨年までにない運があるのは間違いない。
ほんのひと言で流れが変わることは、スポーツ界ではよくあること。しかも、信じられないくらいに“逆流”することも珍しくない。
思えば、つい1カ月前の中畑DeNAもそうだった。5月13日の中日戦を6対3でものにし、中畑監督が指揮を執って通算200勝を達成。貯金を1999年以来16年ぶりとなる「8」に伸ばし、2位・巨人とのゲーム差も2。中畑監督は「めっちゃ嬉しいぜ!」というセリフを3連発し、喜びを爆発させた。
しかし、この際にナインに対して、「あとは5割でいい」旨の言葉を発したらしい。勝って喜び、負けて悔しがるのは当たり前だが、勝っている時こそ、気持ちを引き締めて、モチベーションを高めることが重要だろう。消極的ととられる発言が、ナインに影響したことが、その後の交流戦でのチーム不振という形で証明されてしまった。
不用意なひと言が、歴史的逆転を生んだ89年の日本シリーズ
ひと言で流れが変わった代表例は、1989年の巨人対近鉄の日本シリーズだろう。近鉄の連勝で迎えた第3戦、先発の加藤哲郎が7回途中まで3安打散発の快投を演じ、村田、吉井とつないで巨人を完封。3連勝で王手をかけた。この試合後、“伝説”のヒーローインタビューが行われた。
「シーズン中より楽ですよ。この程度のところに負けたら、西武とオリックスに申し訳ない」と加藤が言ったのだ。この言葉に尾ヒレが付いて、「巨人は(2年連続最下位の)ロッテより弱い」(加藤本人は否定)と巨人側に伝わった。
プライドを傷つけられた巨人ナインの闘志に火が付かない方がおかしかった。「絶対、加藤を潰す」。私はこの当時、巨人担当をしていたが、第3戦が終わった30分後に東京ドームで異例の特打が行われ、全員から鬼気迫るオーラを感じたのを覚えている。
巨人がそこから3連勝し、迎えた第7戦(藤井寺球場)、先発・加藤に駒田が右翼へ本塁打を放ち、ダイヤモンドモンドを一周する際、駒田が加藤に「××!」と叫んだのが口元の動きでわかった。球史に残る藤田巨人の3連敗4連勝での日本一、猛牛軍団の3連勝4連敗という屈辱。加藤が発したたったひと言が分岐点となった。
まだまだ長いシーズン。これからが夏本番である。中畑DeNAが「絶好調!」を取り戻す時間はたくさんある。