絵本

奇跡の瞬間を捉えた虫の絵本『巣をつくるあなをほる』

この絵本に登場する虫は、カブトムシのような花形の昆虫ではありません。けれど、そんな虫たちが奇跡のような方法で巣を作り産卵します。その様子に、虫好きな子もそうでない子も、目が釘付けになること間違いなしの絵本です。

執筆者:大橋 悦子

虫の巣作りは奇跡の連続です『巣をつくる あなをほる』

みなさんは、チョッキリやトックリバチという昆虫をご存知ですか? マイマイツツハナバチという舌をかみそうな名前の虫はいかがでしょう? これらはみな、今回ご紹介する絵本に登場する虫の名前です。いずれも、普段はあまり人目につかない昆虫なのだそうです。ところが、そんな目立たない虫たちも子育てとなれば話は別です。奇跡としか思えない方法で子どものために巣を作る様子は、虫が好きな子もちょっぴり苦手な子も、目が釘付けになること間違いなしです。

きっとあなたも外に出て、自分の目で確かめたくなる!

絵本『巣をつくる あなをほる』の表紙画像

虫たちが子孫を残すための知恵や仕組みを美しいイラストで紹介します

卵からかえった昆虫が成虫になる確率はとても低く、例えばチョウが成虫になるまでの生存率は2パーセント弱だということです。(『謎解き昆虫ノート』より) 昆虫の親たちにとって産卵は、卵を産むことだけが大切なのではなく、孵化(ふか)した後に長生きできるようなお膳立てまでもが求められているようです。そのことを頭の片隅に入れて、早速絵本を開いてみましょう。

葉っぱを巻いて巣をつくるチョッキリは、葉柄(葉を茎につけている柄の部分)に穴をあけて葉をしおれさせると、しんなりしたその葉をクルクル巻きながら卵を産みつけていきます。2枚以上の葉を巻きつけて作り上げる卵のベッドは、まるで巻き寿司が枝にぶら下がっているようでとてもユーモラス。同時に、葉を巻いていく過程はまさに職人技です。

カタツムリのイメージ画像

マイマイと呼ばれることもあるカタツムリ。まさか自分の殻がハチの巣になるとは想像もしないでしょう

表紙に描かれたマイマイツツハナバチだって負けてはいません。このハチは、巣作りにカタツムリの殻を使います。殻の一番奥に花の蜜と花粉を貯めて、その上に卵を産むのです。そして、噛んで細かくした葉っぱで壁を作り、空洞を埋めながら最後にもう1度葉っぱの壁を作って殻を閉じます。そして、殻の口を地面につけると、地面に殻を少し埋め葉っぱで隠すのだそうです。なんという知恵でしょう! そしてその用心深さ!

昆虫たちは、いったいどこでこんな知恵を身につけたのでしょうか? 自然界の不思議とひと言で片づけてしまうには、あまりに驚きの巣作り法が次々に登場します。読者はきっと、自分の目でその様子を確かめたくなるに違いありません。

とりあげられた虫たちの中には、稀少種や日本には生息しない昆虫もいますが、日本全国に分布するものもありますので、注意深く探せば実際の巣作りを見ることができるかもしれません。奇跡の瞬間を探す楽しみを内包した素晴らしい昆虫絵本です。


【書籍データ】

書籍名:巣をつくる あなをほる 虫の子育て
作:アンネ・メッラー
価格:1728円
出版社:岩波書店
推奨年齢:小学生くらいから
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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