ルールを破ると、ついつい叱ってしまいたくなるもの。
今回は、行動分析学の視点から、叱る前にできることとして、「待ってみること」を紹介したいと思います。
叱ることがいけない理由
「部屋を片付けなさい」と声をかけても子どもが片付けをしない場合、ついつい叱ってしまいたくなります。しかし、その日は強く叱って片付けができたとしても、次からはもっと強く叱らなければ動いてくれなくなるかもしれません。この状態が長く続けば、自発的に片付けをすることはなくなっていきます。このように、叱るという方法には、長期的にみるとやる気をなくすという問題点があるのです。どういう対応になりがちか?
「叱ることが必要」と思っている方も多いと思います。叱らないと、片付けをしてくれない、言ったことをやってくれないという意見が聞こえてきそうです。まずは、「待ってみる」対応をしなかった場合、どのようなことが起こっているかを考えてみましょう。「部屋を片付けなさい」と言っても動く気配がみられない場合、「早くしなさい」や「なんで、言うことをきかないの」などと叱りたい気持ちになります。しかし、この時、最初の言葉から次の言葉までは2,3秒ほどの短い時間であることが多いのです。これが、「待っていない」対応になります。
この対応の問題点は、待っていれば子どもが自発的にやる気を出して動く場合でも、その芽を摘んでしまうことにあります。子どもにとってみれば、今の活動をやめて片付けを始めないといけないため、2-3秒では時間が短すぎる場合があるのです。このような対応をしがちな人は過干渉タイプであることが多いです。
待ってみるとはどういうことなのか?
行動分析では、「部屋を片付けなさい」と声をかけてから、しばらく子どもの様子を観察するようにすすめます。この観察しながら待つというのが、非常に大切なのです。そして、実際はとても難しいことだと思います。待ってみる対応とは、子どもが自発的に行動するまで、待ってみるということです。自発的に動き出すまでは、叱ったりせずに様子を静かに見守り続けます。この時子どもが、観察されていることが分かる程度の距離が適切です。
待ってみるとどうなるのか?
子どもの様子を観察しながら待ってみるとどうでしょうか。おそらく、しばらくは部屋の中で遊んでいたり、ごろごろしていたりするはずです。どのくらい待てばいいでしょうか?とよく聞かれますが、5分は待ってみてください。とても長く感じると思いますが、待ってみる価値はあります。しばらく待っていると、子どもがあるとき片付けを始めることがあるでしょう。ときには、「片付けでもしようかな」とつぶやくかもしれません。部屋のゴミをひとつ拾ってゴミ箱に捨てるだけかもしれません。これらの最初の一言や行動がとても大切なのです。子どもが片付け始めると、すぐに「えらいね」とほめて下さい。そうすると、その次の行動も起こすかもしれません。そうしたら、「すごいじゃない」等と声をかけてあげましょう。そうしていけば、叱る必要はなく、ほめるだけで部屋を片付けるようにすることができます。
実は、子どもの様子をしっかりと観察していないと、片付け始める瞬間を見逃してしまいます。そうすると子どもは、片付けても何もいいことがないじゃないかと思ってしまいます。親に認めてもらえないと片付けを途中でやめてしまう可能性もあります。そのため、この片付け始める瞬間を見逃さないようにすることが大切なのです。
このように、待ってみると、子どもが本来持っているやる気を引き出すことができます。子どもをほめながら育てると、やる気と自発性が育まれます。そして、叱る労力が減るために、子育てが楽になるはずです。ぜひ一度、実践してみてください。