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花粉、黄砂、PM2.5のトリプルパンチ対策:住宅編

毎年春先に飛来してくるPM2.5と従来からある花粉、黄砂はシーズンが重なりその脅威から「トリプルパンチ」と呼ばれ、健康被害が懸念されています。住まいにそれらを持ち込まないための対策を考えてみましょう(2018年3月改訂版、初出:2010年5月)。

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

住まいの性能・安全ガイド

PM2.5、黄砂、花粉のトリプルパンチ

毎年春先には中国で問題化している大気汚染の原因であるPM2.5が日本にもやってきます。花粉と黄砂のシーズンと重なり、合わせて「トリプルパンチ」と呼ばれ健康被害の懸念が広がっています。住まいにそれらを持ち込まないための対策を考えてみましょう。

 

PM2.5とは

直径が2.5μm以下の超微粒子で、代表的なものにディーゼル排気微粒子があります。粒径0.1~0.3μmと超小粒なため、吸い込むと気管支や肺まで達する可能性があり、気管支ぜんそくや発がん性への影響が懸念されています。
【図1】花粉、黄砂、PM2.5の大きさ比べ

【図1】花粉、黄砂、PM2.5の大きさ比べ


μm(マイクロメートル)は長さの単位で、1マイクロメートルは1ミリメートルの千分の1の長さ、0.001ミリメートルとなります。

花粉、黄砂、PM2.5の大きさを比較してみると、スギ花粉は直径30~40μm、黄砂は約4μm、PM2.5は2.5μm以下となっています。PM2.5はスギ花粉に比べ大変小さく、その分体内の奥深くまで入りやすく危険ということになります。

 

黄砂(こうさ)とは

黄砂とは、主に中国を中心とした内陸部の砂漠(ゴビ砂漠やタクマラカン砂漠など)の砂塵が砂嵐などで上空に巻き上げられ、春を中心に遠く日本まで運ばれて降ってくる現象を言います。

黄砂解説図(画像提供:気象庁ホームページ)。クリックすると拡大します。

黄砂解説図(画像提供:気象庁ホームページ)。クリックすると拡大します。


黄砂はひどい時は周囲の見通しを悪くし、日照時間を減らし、洗濯物や車を汚すだけでなく、人間や動物のアレルギーなどの症状を悪化させる可能性があります。花粉よりも粒が細かいため、気道を刺激して咳が出やすくなります。普段の花粉症の症状に似ていますが、それより重い、長引く、春先に外に出て、目・鼻・のどの不快感を感じた時はひとつの原因として黄砂を考えた方が良いようです。

 

花粉症とは

花粉症とは、スギやヒノキ、カモガヤ、ブタクサなど植物の花粉が原因で鼻水、目のかゆみや倦怠感など、風邪の症状に似たアレルギー症状が出ることです。スギやヒノキは春先に、ブタクサは秋に花粉が飛び、花粉の時期だけ症状が出ます。

平成29年12月に東京都福祉保健局が公表した「花粉症患者実態調査報告書(平成28年度)」によると、都内のスギ花粉症推定有病率は48.8%とのことで、都民のほぼ半数がスギ花粉症にかかっていることになります。

普段の生活での対策法


マスクは風邪のウィルス対策用のものを。

マスクは風邪のウィルス対策用のものを。


普段の生活での主な対策としては、以下のようなものが挙げられます。

・外出時はマスクを着用
・洗濯物を外に干さない

マスクは、PM2.5対策として使うのであれば「N95規格」という0.1~0.3μmの微粒子を95%以上カットできる高性能マスクが市販されています。

住まいに花粉・黄砂・PM2.5を持ちこまない

高気密化した現代の家では、隙間から入るとは考えにくいのですが、窓の開け閉め時や、外出から帰ってきた時に衣類についていたものなどが家の中に入ってきます。基本的には花粉対策同様、窓を開けない、帰宅時には洋服をよくはたいてから家に入るということが基本です。

 

第三種換気法は給気口に要注意

住まいの給気を壁につけられた給気用のスリーブ(穴)から行う給気法(第三種換気法)のご家庭では、このスリーブから花粉、黄砂、PM2.5などが直接入る可能性があります。

第三種換気方法概念図。スリーブと呼ばれる穴から外気を取り込む。

第三種換気方法概念図。スリーブと呼ばれる穴から外気を取り込む。


対策としては、それぞれの給気口に給気口用フィルターを取り付けることで、花粉や粉じん対策の多少の効果は見込めます。給気口フィルターは市販されているのでご自身でも取り付け可能です。

 

第一種換気法のほうが対応しやすい

第三種換気法のほかに近年の高気密住宅で多用されているのが第一種換気法です。

第一種換気方法概念図。給気も排気も機械によって行う方法。

第一種換気方法概念図。給気も排気も機械によって行う方法。


第一種換気法では給気口は一か所なので、その部分に高機能エアフィルターを付けることでシャットアウトしやすくなります。花粉や黄砂をなるべく排除したい場合はこの換気方法で家を建てたり、この換気方法を導入している住まいを買うと良いでしょう。

2003年7月に施行されたシックハウス法により、それ以降に建てられた住宅(戸建・マンション含む)では24時間換気が義務付けられており、第一種換気法か第三種換気法のいずれかを採用しています。見分け方は、壁の目に見える部分にスリーブ(穴)があれば、第三種換気法と考えられます。

24時間換気はずっと稼働させるべきなの?

この24時間換気設備については「ずっと稼働しなければならないの?」という疑問を持っている人が多いようです。消したくなる理由として「電気代がもったいない」「音がうるさい」「寒い」「24時間換気設備をつけておく意味がわからない」などがあります。

24時間換気設備は、2時間かけて部屋の空気を丸っと入れ替え、室内にたまったシックハウス症候群の元になる化学物質や呼吸から出るCO2 、料理の際に出る湿気などを外に排出する役目を果たしています。現代の高気密・高断熱住宅には必要な設備とされ、その名の通り24時間ずっと稼働させておくことが大切です。

こちらの記事に住まいの換気方法を詳しく解説しています。


 

 

給気口(ダクト)の花粉・黄砂・PM2.5対策

室内に花粉・黄砂・PM2.5などを持ち込まないための対策として、給気口にエアフィルターを設けましょう。給気口用のエアフィルターはインターネット通販や家具販売店、ホームセンターなどで購入することができます。フィルターの汚れが目立ってきたら定期的に交換するようにしましょう。
住宅用給気口エアフィルターの例

住宅用給気口エアフィルターの例


空気清浄機は「高性能エアフィルター」のものを

室内の花粉やほこり、ダニなどを取り除いてくれる力強い味方に空気清浄機があります。空気清浄機は各メーカーから様々な機種が発売されています。購入の際は高性能エアフィルター(HEPAフィルタ)を使用していることもひとつの目安にして選びましょう。 

HEPAフィルターとは

High Efficiency Particulate Air Filterの略称。空気中からゴミや粉じんを取り除くエアフィルターの一種で、JIS規格によって、「定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタ」と規定されています。

「±0/空気清浄機Air Purifier」。HEPAフィルター付き超高性能空気清浄機の例。画像出典:プラマイゼロ株式会社

「±0/空気清浄機Air Purifier」。HEPAフィルター付き超高性能空気清浄機の例。画像出典:プラマイゼロ株式会社


つまり目に見えないような非常に微細なホコリなどもキャッチできる高性能なフィルターのことです。空気清浄機、掃除機、エアコンなどに使用されることが多くなっています。

このように、花粉、黄砂、PM2.5をなるべく室内に持ち込まないようにするには、気密性の高い家に住むこと、空気の入り口にエアフィルターを用いること、高性能エアフィルター付きの空気清浄機を使うことなど、複合的に対応していくことが必要です。

【関連サイト】
PM2.5による気管支喘息・気管支炎
黄砂が飛ぶとアレルギーが悪化、対策は?
黄砂アレルギー対策で、咳・鼻水・湿疹予防
(以上「アレルギー・子供の病気」より)
黄砂に関する基礎知識(気象庁)
黄砂情報提供ホームページ(環境省・気象庁)

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