ゲームが子どもに与える影響とは
ゲームが子どもに良い影響があるとの研究結果がある一方、暴力的ゲームや学業への悪影響も知った上で、ゲームばかりする子や中毒な子どもへの対処法を押さえておきましょう
現代の生活では、スケジュール的にも場所的にも、また治安面からも、学校から帰るとランドセルを放り投げて、夕暮れまで外で遊ぶ、とはなかなかいきません。
ゲームならば屋内で手軽に安全にできますし、子供達も大喜び。スクリーンや携帯型端末に向かう子供達の意欲といい表情といい……楽しそうですよね。
一方、昨今の文部科学省による調査では「外遊び時間の減少による子供達の体力低下」や、「ビデオゲームに費やす時間と学力低下の相関関係」なども報告されています。子供達を夢中にさせ、現代の家庭生活にフィットするゲーム。今回は良い影響と悪い影響を見つつ、では親として何ができるのかを考えていきたいと思います。
<目次>
ゲームの子どもへの良い影響
■創造力が増すミシガン州立大学教授リンダ・ジャクソン博士が、12歳児を対象に行った研究では、普段テレビゲームをしている子の方がそうでない子より、創造力が高かったと言います。「現代のゲームにある複雑なキャラクターやストーリー設定は、子供の問題解決能力を高め、ゲーム以外の場に応用する力を促進する」とジャクソン博士は言います。
■視覚空間推論力が増す
アリゾナ州立大学のクリストファー・サンチェス博士は、ゲームにより、数学やサイエンスに必要な視覚空間的な認知力や推論力が高まると報告しています。大学生に25分間ゲームをさせ、その前後をテストしたところ、スコアがアップしていたというのです。
■反射的に注意を切り換える力が増す
素早く視点を移して何かを見つけたり、瞬間的に切り換えることのできる注意力が高まるといいます。本を読んだり、地図を見たり、数学の問題を解くのに役立つ力です。イタリアのサンドロフランセチーニ大学の研究では、読むことに困難を抱える読字障害の子にアクションビデオゲームをさせたところ、読む力が改善されたと言います。
とここまで見ると、「テレビゲームを子供にさせない手はない!」とも思えますが、同時にいくつもの研究が、その「マイナス面」について報告しています。
ゲームの子どもへの悪い影響
ゲームのもたらす影響とは?
自ら何かに集中し、じっくりと取り組む力が低下すると示す研究もあります。ゲームに費やす時間が多いほど、教室内で集中しづらくなるという比例関係が指摘されるのも、このためではないかとされています。
■学業不振
デニソン大学のロバート・ワイズ博士とブリタニー・セランコスキー博士の研究では、6歳から9歳までの男の子をテレビゲームを「購入した/ しなかった」グループに分け比較したところ、購入した生徒の方が成績が下がったと言います。
そして全員の毎晩の時間配分を調査すると、ゲームを購入した子供の方が、宿題や読書など他の活動にかける時間が減っていたとのこと。
つまり学業不振は、テレビゲーム自体の問題というよりは、限られた時間の中でゲーム以外のことにかける時間が減るためと結論づけられています。
■暴力的なゲームが引き起こす問題行動
ゲーム内での暴力的なシーンが、子供の行動に悪影響を与えるとする研究は多くあります。
また、より暴力的な内容のゲームを長時間プレイしている子供のほうが、学力が低下し、より攻撃的であったりと問題行動が増えるとも報告されています。
子どもがゲームとうまく付き合う4つのヒント
ゲームのマイナス面の影響を少なくするには、他の活動とのバランスをとること、そして内容を選ぶことが重要です。そのために役立つヒントを見ていきましょう。ヒント1 子どもと一緒にスケジュールを可視化する
1日そして1週間のスケジュール表を一緒に作ってみましょう。「こうしなさい」と親が作ったものを示すよりも、子供自身がアイデアを出し一緒に作ったものは、本人もより積極的に進めていこうとします。宿題はいつしようか?外で遊ぶ時間はどこに入れたらいいかな?と話し合いながら、全体のバランスを可視化してみましょう。スケジュールごとに色別にしてみるのもいいですね。
少し大きな子供には、先にあげたようなゲームがもたらす研究結果を示してみるのもいいでしょう。「ゲーム機を買うことで他の活動が随分削られちゃうんだね」と。目指したいのは、電子機器に溢れたこれからの社会を生きていく上で、自分自身でバランスよく日常を組み立てられる力を培うこと、そう思い出していきたいもの。
ヒント2 ゲーム以外の、他の楽しみへと導く
「ゲームをしてはだめ!」と頭ごなしに禁止するよりも、「他の楽しみ」を体験させることで、よりスムーズに導いていくことができます。公園でお友達とキャッチボールをする、創作玩具や折り紙から飛行機や動物が生まれる、そうした身体を使い、創作する「楽しさ」を体験する機会を、できる範囲で多く作ってやりましょう。子供自身が「ゲームと同じくらい楽しいことっていっぱいあるんだな」と感じるならば、ゲーム機を置いて他の活動へと移り易くなります。また身体を動かし他にも多くの楽しみを持つならば、ゲームからの過激な刺激を欲することも少なくなっていきます。
ヒント3 なるべく目や手の届かないところに収納する
小さな子ほど、目に付きやすいところにゲームがあれば、プレイしたくなってしまうもの。スケジュールで決めた時間以外は、ゲーム機やタブレットなども、なるべく子供の視野に入らないところにしまうのも一案です。また年齢に合わない過激な内容のものは、なるべく近くに置かないようにしましょう。ヒント4 親子で一緒にゲームをしてみる
時には子供と一緒にゲームを楽しんでみるのもおすすめです。子供が夢中になっているものを共に体験しゲームの時間を交流の時としてみることで、子供との距離も近くなり、ゲームと生活のバランスをどう取るかの話し合いもよりスムーズに進みます。親自身普段使っていない脳の箇所が、活性化されるという利点もあるかもしれませんね。最近はテレビゲームだけでなく、スマホを使って簡単にゲームができてしまう環境になっています。ゲームは中毒性が高いものですが、無理やりに禁止してしまうでも、好き放題やらせてしまうでもなく、子供と一緒にゲームとの上手な付き合い方を見つけていきましょう。
子供時代は、将来電子機器をバランスよく使いこなすための土台を築く期間。子供時代にしかできない多様な体験をさせつつ、子供自身が選択できる力を培う環境を整えるサポートをしてあげましょう。
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