疲労回復法/お風呂・温泉を使った疲労回復法

お風呂で治る頭痛・悪化する頭痛の違い

【温泉療法専門医が解説】お風呂はさまざまな症状の緩和に役立つことがありますが、頭痛の場合はお風呂で治るものも悪化するものもあります。お風呂に入ると危険な頭痛の見分け方も含め、解説します。

早坂 信哉

執筆者:早坂 信哉

医師 / お風呂・温泉の医学ガイド

「頭痛」は原因や症状がまちまち……お風呂に入ってもいいの?

お風呂で治る頭痛・悪化する頭痛の違い

頭痛といっても原因はさまざま。お風呂に入ってはいけない頭痛もある


「頭痛」はよくある症状です。日本では4000万人もの人が頭痛に悩まされているという推定もあります。

しかし、頭痛と一口にいっても、その原因や症状はまちまちです。お風呂が症状改善に効果的な頭痛もあれば、お風呂に入ることによって症状が悪化する頭痛もあります。
 

お風呂に入ると治りやすい頭痛・症状改善が見込める頭痛は「緊張型頭痛」

よく見かける頭痛として、頭痛持ちの方の3~7割がかかえているといわれる「緊張型頭痛」が挙げられます。症状は主に後頭部を中心にした重苦しさ、締め付けられるような鈍痛が特徴です。程度も軽いことが多く、歩いたり、階段の上り下りで悪化するようなこともありません。また、悪心や嘔吐もありません。

原因は主に僧帽筋という首から肩、背中にある大きな筋肉の凝りによるもので、肩こりにも似ています。この場合、お風呂で温めて血流を良くすることで疲労物質が流され、また筋肉の緊張も和らいで症状が改善します。お風呂の中で首を回したり、肩の上げ下げの運動を行うなどをすると、より効果的です。症状緩和のために、積極的にお風呂を使いたい状態といえるでしょう。
 

お風呂に入ってはいけない頭痛、2つの特徴

緊張型頭痛にお風呂が効果的な一方、入ってはいけない頭痛がふたつあります。
 
  1. 突然始まったとても強い頭痛
  2. 片頭痛

それぞれ、詳しく説明いたしましょう。
 
  1. 突然始まったとても強い頭痛
    一般的に、突然に起こった頭痛、生涯感じたことのないほどのハンマーで頭を叩かれたような頭痛、意識が遠くなったり、ろれつが回らなくなったり、手足などの運動麻痺などが同時に起こった頭痛は命にかかわる可能性が高いと考えられます。

    このような頭痛の場合、「くも膜下出血」が起こっている可能性があり、即病院への受診が必要になります。我慢せずすぐ脳神経外科や神経内科、救急外来を受診してください。もちろんお風呂に入ってはいけませんし、入っている場合ではありません。
     
  2. 片頭痛
    片頭痛は緊張性頭痛に次いで多い頭痛で、女性でその割合が高く、日本には840万人以上の患者さんがいると推定されています。これは「ズキン、ズキン」という脈拍にあわせた強い痛みが発作的に起こり、頭の片側、または両側のこめかみや目元のあたりの部分が主に痛みます。発作は月に1~2回程度繰り返して起こり、痛みは4、5時間、長い時は3日間程度も持続します。

    頭痛の他に特徴として、悪心・嘔吐、音や光に対して過敏になることも症状として見られます。また、階段の上り下りや首を振ることなど、日常生活の動作で頭痛が悪化します。この片頭痛の発作の時は、お風呂に入ると頭痛が悪化します。
 

片頭痛発作の時、お風呂に入ってはいけない理由

お風呂は温熱効果で血管を拡張させます。このことが片頭痛を悪化させると考えられています。

片頭痛の原因はまだ完全には確定できていません。以前は脳の血管の病気と考えられていましたが、最近は脳の奥深くにある脳幹が痛みの原因であるともいわれています。その他、最近では新しい痛み原因物質も発見されている他、脳を取り囲んでいる硬膜と呼ばれる膜に分布する動脈が拡張し、この動脈の周囲にある三叉神経が興奮状態になることが片頭痛の痛みの原因であるとも推定されています。

そのため、現在使われている片頭痛の治療薬は血管を収縮させて神経の興奮を鎮静化させる作用があり、このことによって片頭痛が改善します。このように血管を収縮させることによって改善する必要がある場合にお風呂に入ると、逆に血管を拡張させてしまい、症状を悪化させるのです。
 

片頭痛発作がない時はお風呂へ積極的に入ろう

片頭痛発作のない時はむしろ、お風呂はお勧めです。以前から睡眠不足やストレスがあると、片頭痛の発作を起こしやすいことが分かっています。これらの解消にはお風呂が効果的です。また肩こりが片頭痛の引き金となることもあります。肩こりにもお風呂が大変効果的です。片頭痛発作のない時は積極的にお風呂に入って片頭痛を予防したいものです。


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