住まいのプロが提案「イエコト」/住まいなでしこ ~女性目線のすまいのヒント~

原状回復費用はどこまで負担すべきなのか(2ページ目)

賃貸住宅を引き払う際には、家主さんから借主に「原状回復費用」が請求され、入居時に預けていた敷金から差し引かれる。膨大な請求を受けたという人の話も聞くと、一体どれだけ請求がくるのか気になるものだ。今春引っ越しをしたガイドの場合を一例として検証してみよう。

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

住まいの性能・安全ガイド

大家さんから届いた請求書

その後家主さんから正式な原状回復見積書が届く。それによると、壁ビニールクロスの張替について、こちらが過失と認めた廊下の壁の張替えは借主負担100%になっており、その他の経年劣化と考えられる洋室、リビング、和室などのクロス張替えについては家主負担 50%、借主負担 50%で算出してあった。この部分については後ほど大家さんと協議することになる。

その他の請求項目

壁クロスの張替の他に請求されていたのは、和室の畳表替え、ハウスクリーニング、ドレープカーテン、レースカーテンのクリーニング代だ。

国土交通省のガイドラインによると、和室の畳の表替えやハウスクリーニングは本来大家さんが負担することになっているが、入居時の契約の特約で「借主が負担する」と書かれている場合は特約が優先される。我が家でも契約書に特約の記載があった。また住居の附属品であるカーテンのクリーニングは特約にはないが、洗濯を怠っていたのでこれは請求されてもいたしかたないと納得した。

ここで注意したい点をいくつか挙げておく。一つ目は、今回のように畳の表替えが特約で盛り込まれている場合、気兼ねせず使ってよいということ。例えば畳の変色や擦り切れを恐れて上にじゅうたんを敷き詰めて生活する必要はないということ。二つ目に、ハウスクリーニングが入っていたので、退去時にはそれほど掃除にナーバスにならなくて済んだということ。三つ目は附属品のカーテンはこまめに洗濯をしておけばよかったということだ。もし自分で洗濯をしていれば約4万5千円のクリーニング代がかからなかったことになる。この部分は大きく反省したい。

大家さんと交渉

家具をどけて初めてわかる結露による壁のシミ

家具をどけて初めてわかる結露による壁のシミ

原状回復見積書が届いてから大家さんの代理人と交渉をした。こちらの主張は壁ビニールクロスの張替えにかかる費用分担に関してだ。

国土交通省のガイドラインによると、普通に住んでいて生じた汚れ(=経年劣化)は大家さんの負担になることになっている。

今回、家具をどかして出現した結露によると考えられる水ジミや汚れは建物本体の断熱性が問題で生じたと考えられるもので、テレビの裏の電気ヤケは通常の生活をしていてついたものであり、タバコを吸ったわけでもなく(見えない部分だったので)掃除をさぼったわけでもない。この部分の費用については借主側の負担にはならないのではないか、と伝えた。その結果、大家さんに認めてもらうことができた。

請求額に大きな影響を与える項目

これで壁のクロスの張替え費用として請求された金額は、最初は約4万6千円だったが最終的に約5千円に減額された。その分は大家さんの負担増になるので大変申し訳ないとも思う。

しかし国土交通省のガイドラインで大家さんが負担すべきとされるハウスクリーニングや畳の表替え(ここが大きい)を、特約によって借主が負担することになっているため、もともとそれほど金額の高くない壁のビニールクロスの負担割合が変動しても、全体への影響はそれほど大きくなかったと考えられる。

家主さんの代理人に聞いたところ、我が家のように大家さんが出した見積りに対して交渉を求める家庭もあるが、請求どうりに認める家庭もあるようだ。これは予測だが、勤め先から家賃の他に敷金も出ている場合、敷金内で収まるようであれば見積りに異議を唱えないご家庭もあるのだろうと思う。

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