自然と都市機能の調和した街をめざし、
開発が持続されてきたユーカリが丘
千葉県佐倉市西部。森と畑、田んぼが広がる約245haという広大な土地に新しい街を開発する計画が持ち上がったのは1971年(昭和46年)のこと。当時は大気汚染、水質汚濁や騒音など高度経済成長で悪化した環境が社会問題となっており、この地の開発計画は自然と都市機能が調和した街であることを目指すものとされた。街の名称、ユーカリが丘は空気を清浄に保ち、殺菌作用のあるオーストラリアユーカリの木にちなんだもので、街のあちこちにユーカリの木、そしてコアラがあしらわれているのはそのためである。
開発を計画したのは元々は大阪で繊維業を営む会社としてスタート、その後、東京に移転、1965年(昭和40年)から宅地開発を始めた山万。最初に開発したのは横須賀にある日本で初めての住居表示にカタカナ地名が採用された湘南ハイランドである。ちょうど、住宅需要が急激に伸びた高度経済成長期でもあり、同社は大きく発展。続いて手掛けたのがユーカリが丘だった。
だが、ユーカリが丘では開発者である山万が住宅の供給数をコントロール。1980年(昭和55年)の入居開始以来35年にわたり、年間約200戸だけを市場に供給してきた。総計画戸数は約8400戸としており、2015年度(平成27年度)4月末時点の人口は約18000人、7200戸。一気に開発されていないから、幅広い年代が居住しており、現在の住民の中心は30~40代。まだまだ、これからも住宅は供給される予定で、当然、今後もエリアの年齢構成は極端に偏ることはないはずだ。
時代に先駆けて子育て支援施設、
高齢者向き施設を整備
また、一気に開発をしていないため、そこここに常に未分譲の土地がある。山万ではそこを上手に利用、時代によって必要とされる施設を順次作り続けてきてもいる。たとえば、ユーカリが丘では街に人を呼び込む大きな要素として教育、子育てを大事にしている。子どものいる家庭にとっては最大の関心事だからで、そのため、1999年(平成11年)には他の街に先駆けて駅前に保育園が作られた。駅前ながら園庭もあり、その双方が揃っていることが話題になった。同保育園は当初認可外としてスタート、2004年には千葉県内で初めて民間会社が運営する認可保育園として認定を受けてもいる。
その後、全天候型の子どもたちの遊び、学びの場として総合子育て支援センターを作ったり、認可保育園を作るなど、年々、施設を拡充。将来的には学童保育のような既存の仕組みのほか、域内に住むシニア世代、大学生、留学生などをスタッフとした学びの場も作っていく予定とか。一度に全部を分譲してしまった場所ではできないやり方である。
ちなみに、こうした子育てに良い環境が評価され、ユーカリが丘では子育て世帯が多く居住、子どもの数が増えているとして、最近もNHKの番組で取り上げられたほどである。
近年では高齢者向けの施設を充実させてきている。2002年(平成14年)にはエリア北側にある約15haを「福祉の街」にすることを発表、着々と施設を増やし続けている。しかも単に医療・福祉施設のある高齢者だけのエリアというのではなく、多世代の交流があり、在宅介護の基地としての機能、教育機関なども備えたものになる予定とか。
最新の、時代に合わせた施設としては2013年(平成25年)に設立された農業生産法人によるトマト畑がある。ここでは複数の、ミニトマトが栽培されており、糖度が高く、新鮮でおいしいと地元ではスーパー店頭などに並ぶと売り切れ必至の人気とか。エリア内のホテルでも供されており、地域のミニトマト需要(?)を一手に引き受けているとも言えるほど。