土地購入/土地価格・地価・路線価

地価LOOKレポートでみる住宅地地価動向 28

国内の景気回復を示す指標がいくつも表れるなかで、大都市圏を中心に地価の上昇傾向も続いているようです。国土交通省から「地価LOOKレポート」(第30回)が発表されました。住宅地の動きが今後どうなるのか、最新の傾向をみておくことにしましょう。

執筆者:平野 雅之


地価LOOKレポートの最新版についてはこちら
住宅地の地価動向/2017年7-9月期 地価LOOKレポート



東京株式市場の日経平均株価は6月1日まで12日連続で上昇(27年ぶり、歴代3位タイ)し、東証1部の時価総額はバブル期を超えて過去最高を記録。円安は13年ぶりの水準となり、上場企業の経常利益は7年ぶりに最高額を更新するなど、国内の経済は新たな局面に入っているといえるでしょう。

個人が景気回復を実感できるまでにはまだしばらくかかるかもしれませんが、投資環境の改善とともに大都市を中心とした国内の地価も上昇傾向が続いています。

国土交通省から「地価LOOKレポート」の第30回分(平成27年第1四半期)が発表されましたので、住宅地を中心にその動きを確認しておくことにしましょう。



調査対象地区数が縮減された

マンションが建つ川辺

大都市圏の地価は上昇傾向が続いている

地価LOOKレポートとは、「先行的な地価動向を明らかにすること」を目的として国土交通省が3か月ごとに発表をしているもので、平成19年第4四半期分(平成19年10月1日~平成20年1月1日)から始まり、今回が30回目です。

ただし、調査の対象は前回までの150地区から50地区が廃止され、100地区に縮減されています。

このうち上昇が84地区となり、継続する地区で比べれば過去最多を更新した前回と同じ結果でした。横ばいは16地区で、こちらも前回と同じです。名古屋圏は8回連続ですべての地区が上昇、大阪圏は9回連続で下落地区がゼロ、東京圏および地方圏は3回連続で下落地区がゼロとなりました。

地価の急騰はみられないものの、緩やかな上昇が続くことでジワジワと影響が出てくるケースもあるでしょう。とくに名古屋圏は丸2年間、すべての地区で上昇が続いていることになります。調査対象地区だけの話とはいえ、今後の動きが気になります。

なお、地価LOOKレポートでの全国の主要都市における調査対象は前述のとおり今回から100地区となり、そのうち住宅系地区は32(東京圏14地区、大阪圏10地区、名古屋圏3地区、地方圏5地区)です。


 【地価LOOKレポート】 (国土交通省サイト内へのリンク)

第27回 平成26年第2四半期
(平成26年4月1日~平成26年7月1日)

第28回 平成26年第3四半期
(平成26年7月1日~平成26年10月1日)

第29回 平成26年第4四半期
(平成26年10月1日~平成27年1月1日)

第30回 平成27年第1四半期
(平成27年1月1日~平成27年4月1日)

地価LOOKレポートには地価動向(総合評価)のほか、取引価格、取引利回り、取引件数、投資用不動産の供給、オフィス賃料、店舗賃料、マンション分譲価格、マンション賃料の動向(それぞれ3区分)が記載されています。


地価LOOKレポートでは地価やその変動率について具体的な数値を示すのではなく、6%以上の上昇、3%以上6%未満の上昇、0%超~3%未満の上昇、横ばい(0%)、0%超~3%未満の下落、3%以上6%未満の下落、6%以上9%未満の下落、9%以上12%未満の下落、12%以上の下落の9段階に分類されています。


住宅系地区は引き続き上昇傾向

住宅系地区では上昇が26地区、横ばいが6地区で、継続する地区の中ではいずれも前回と同じです。ただし、今回は3%を超える上昇地区がなくなりました。

住宅系地区の変動 (地区数の全国計)

区 分
第26回
第27回
第28回
第29回
第30回

上昇 (6%~)
0
0
0
0
0

上昇 (3%~6%)
0
0
0
1
0

上昇 (0%~3%)
33
33
35
34
26

横ばい (0%)
10
11
9
9
6

下落 (0%~-3%)
1
0
0
0
0

下落 (-3%~-6%)
0
0
0
0
0

下落 (-6%~-9%)
0
0
0
0
0

下落 (-9%~-12%)
0
0
0
0
0

下落 (-12%~)
0
0
0
0
0

合  計
44
44
44
44
32

住宅系地区では前回、福岡市中央区(大濠)が3%を超える上昇となりましたが、今回は3%未満の上昇に落ち着きました。それ以外の地区はすべて前回と同じ区分となっています。

横ばいだった6地区のうち、2地区が千葉県、4地区が滋賀県、京都市です。これらの地区では横ばい傾向が続いており、上昇が続く他の地区とは対照的な動きをみせています。

札幌市中央区(宮の森)および東京都江東区(豊洲)が14回連続の上昇、兵庫県芦屋市(JR芦屋駅周辺)が18回連続の上昇でした。これらの地区はいずれも3~4年以上にわたり上昇が続いているため、今後の住宅価格への影響も少なくないでしょう。

なお、前回まで14回連続の上昇だった川崎市中原区(元住吉)、17回連続の上昇だった神戸市東灘区(岡本)が今回の廃止対象となりました。


商業系地区も安定した上昇傾向に

商業系地区では、上昇が58地区、横ばいが10地区で、こちらも継続する地区の中ではいずれも前回と同じでした。下落は3回続けてゼロとなっています。

東京都中央区(銀座中央)が2回ぶり、名古屋市中村区(太閤口)が5回ぶりにそれぞれ「3%以上6%未満」の上昇になった一方で、前回に初めて「3%以上6%未満」の上昇となった東京都港区(虎ノ門)は今回、「3%未満」の上昇にペースダウンしました。

大都市圏では散発的に大きな上昇を示す地区が表れるものの、それが長期間続くケースは少ないようです。景気回復による地価への影響が出てくるのは、まだこれからなのかもしれません。

商業系地区の変動 (地区数の全国計)

区 分
第26回
第27回
第28回
第29回
第30回

上昇 (6%~)
0
0
0
0
0

上昇 (3%~6%)
1
2
2
1
2

上昇 (0%~3%)
85
85
87
89
56

横ばい (0%)
17
17
17
16
10

下落 (0%~-3%)
3
2
0
0
0

下落 (-3%~-6%)
0
0
0
0
0

下落 (-6%~-9%)
0
0
0
0
0

下落 (-9%~-12%)
0
0
0
0
0

下落 (-12%~)
0
0
0
0
0

合  計
106
106
106
106
68



住宅系地区における過去1年間の地価動向を一覧にして、次ページにまとめてありますので、これまでの変化を知るための参考にしてください。


住宅系地区の地価動向推移…次ページへ

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