今回は、その有効活用の方法をご紹介します。大きな選択は、「売る」「売らない」「相続放棄」の3つ。この中から良い方法を選ぶだけ、です。
有効活用方法を知る
誰も住まなくなった親の家を次世代のために有効活用する、といってもそもそも、有効活用の方法にどんなものがあるのか、そのなかで自分の親の家に最も適した方法はどれか、それを実行するうえでの問題点とは何か、といったことが分からない、という方々が多数いらっしゃるのではないでしょうか。分からないと人は立ち止まってしまいます。そこで、有効活用方法の全体像を俯瞰してみてはいかがでしょうか。できることはこれだけ、このなかからより良い方法を選ぶだけ、ということが分かれば、前へ進むことができます。
図1をご覧ください。これが、有効活用方法の全容です。どうです?いたってシンプルでしょう。分かってしまえば、漠然とした不安は消えていくものです。
大きな選択は「売る」「売らない」「相続放棄」
まず、「売る」か「売らない」か「相続放棄」かが最初の分かれ道です。住宅や不動産の専門家ではない方にとって一番シンプルでスムーズな有効活用方法は、親の家に住んでくれる別の家族に向けて「売却する」ことです。「売る」と決めたら、なるべく早く、高く売ることを考えます。これは住宅の売却に関する問題となります。
「売却する」にも複数のやりかたがあります。まだ十分住める家であれば「中古住宅」、古いけれどまったく住めないわけではない家なら、住めるかどうかは買い手に判断してもらう「古家付き土地」、誰が見てもこれは住めないというなら更地にして「土地」として売る、というやりかたなどです。
売りたくても「売れない」ときは、保全しつつ持っているしかない
また、「売る」と決めたにもかかわらず「売れない」という現実に直面することもあります。その場合の選択肢は2つです。ひとつは、不本意ながら「保有する」という消極的選択です。周囲に迷惑をかけないように家・土地の保全策が問題となります。ほっておけば、やがて迷惑な空き家として、撤去命令が下ります。そうならないように、家・土地の保全をしようとすれば、ばかにならない費用と労力がかかります。必要な保全作業は次のとおりです。
- 家や庭に異変がないかのチェックが最低月に1回
- 雨漏り、通水、室内点検、庭木の確認。近隣に挨拶し異常がないかを尋ねることも
- 必要な作業は通気・換気、草むしり、樹木の剪定、ポストの掃除・郵便物の整理、庭のゴミ処理
誰も住まない空き家は金くい虫
では、保全のための費用はいいくらかかるのでしょうか。大きな出費は固定資産税です。地方の一戸建てを例にあげると、年間213,000円と、負担感の大きい金額です。親の家は築年数がもっと古い場合が多いので、建物にかかる税額はこれより下回るでしょうが、土地の税額は変わりません。住んでいない家にこれだけ高い税金がかかるとは。
また、時々親の家の様子を見に行くので必要だからと、電気や水道が使えるよう契約を解除していなければ、毎月水道基本料金 約2,000円 、電気基本料金(契約アンペア数にもよるが)1,000円、計約3,000円かかります。光熱費もそれなりの額になります。また、外壁の補修や庭木の剪定などにも費用は発生します。
●地方の一戸建てにかかる保全費用(年間)
固定資産税・・・168,000円
都市計画税・・・45,000円
光熱費(電気・水道・・・3,000円×12か月=36,000円
管理費(家屋の補修・樹木の剪定)・・・300,000円
合計・・・549,000円
(※設定条件:建物の延床面積150平米、土地面積150平米 建物評価額900万円、土地評価額1800万円、取得してから4年度以降の税額)
親の家にしばしば通える範囲のところに住んでいれば、それでも何とか対応のしようもありますが、飛行機や新幹線を利用するほどの遠距離に住んでいる場合は、管理代行サービスを利用することも考えなくてはなりません。
代行して保全してもらうという方法も
埼玉県と東京都の一部地域で活動しているNPO法人空き家・空き地管理センターでは、毎月100円で1回、玄関周辺の目視調査、近隣苦情一時電話対応、巡回報告書作成、管理会社を明記した看板設置(別途初期費用3,800円)といったサービスを代行しています。また、費用はかかりますが、よりきちんとした管理代行サービスとして、前述した必要な保全作業のうち庭木の剪定を除く作業を月4回+お掃除1回+看板設置(別途初期費用3,800円)を14,000円で代行してくれます。こうした事業者は各地で立ち上がっているようです。こうしたサービスは不動産会社が手掛けることもあるようです。インターネットで検索すれば、地元の状況が分かるはずです。
保全しやすいようにと、古家を解体し更地にして「保有する」にしても、解体費用が200万円前後、土地に対する固定資産税が6倍になってしまいます。誰も住んでいないのに、親の家は金くい虫です。実に悩ましいことです。