昆虫の生態をきっちり描いた絵本『カマキリくん』
昆虫に興味のある子どもたちは、虫を捕まえ手元において飼いたいと願う。それは、子どもたちにとってとても自然なことなのだと思います。色々と失敗することもあるでしょうが、子どもたちは生き物を飼うことで多くのことを学んでいきますね。でも、時には予想外の出来事に遭遇してショックを受けることも……。今回ご紹介する絵本は、そんな虫好きな少年の姿とともに、昆虫の生態までをしっかり描いた作品です。
簡単に残酷だなんて言えない「生きるとはこういうことだ!」
こんちゃんは虫が大好きな男の子です。今日も虫取り網とカゴを持って、草むらへ出かけました。でも、オニヤンマにもトノサマバッタにも逃げられてしまいます。「虫たちと友だちになりたいだけなんだけどな。」そんなこんちゃんの気持ちがわかるように、こんちゃんの手のひらに乗ってきた虫がいました。カマキリです! 「なんと都合のいい展開だ!?」などと、斜に構えた見方をしていたら、カマキリは本当に人を恐れず手に乗ってくることがあるのだそうですね。知らなかった! この一件で、この絵本が昆虫の生態をしっかり描いた作品であることが実感できました。
さて、カマキリと友だちになったこんちゃんは、カマキリを家に連れ帰り一緒に遊びます。やがて、疲れたのか元気がなくなっていくカマキリくん。こんちゃんは「また明日遊ぼうね!」と、バッタと一緒のケースに入れてやりました。ところが、その真夜中にとんでもないことが起こります……。
いつ食べられる側になるかわからないカマキリ。それも自然界の掟だ!
でも、だからといってこれを単純に残酷だと決めつけることはできませんね。私たち人間もまた、生きるために命をいただいているのですから。翌朝目を覚ましたこんちゃんは、バッタの姿が消えた虫かごを見て全てを理解します。そして、涙を流しながらも、その後こんちゃんがとった行動が、本当にいいんだなあ!
弱肉強食という厳しい自然界の掟や一見残酷に見える出来事を、小さな読者はどのように受け止めるのでしょうか? 出来事の見かけの残酷さからその影響を心配する向きもありますが、絵本の中の出来事や主人公の目を通して、子どもたちは、生き物の命のことや自然界のことなど実体験だけでは得難いことも学んでいくことができるのだと思います。
【書籍DATA】
書籍名:カマキリくん
作:タダサトシ
価格:1404円
出版社:こぐま社
推奨年齢:4歳くらいから
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