国内で鉄道が建設され始めた明治時代、住民の反対運動も盛んで人家の少ないところを選びながら線路が敷かれたという話も聞きます。そのため、わざわざ市街地から離れた場所に駅が造られることもあったようです。
しかし、その便利さが認識されるにつれて鉄道を忌み嫌う感情は薄れ、鉄道駅を中心に街が発展してきたのはご存知のとおりです。現代では、鉄道新線や新駅の開業とともに地価が上昇することも少なくありません。
鉄道駅を中心に街が造られていくため、線路沿いに家が立ち並ぶことも多く、少し郊外へ行くと駅のホームの向かい側に民家が建てられているのもよく見かける光景です。
当然ながらこのような住宅が売買の対象になることもありますが、そのときどのような点に注意するべきなのか考えてみましょう。
すぐ頭に浮かぶのは音と振動です。風向きや湿度、気温などにより若干の違いが生じるかもしれませんが、いずれにしても日常的にかなりの音が発生しますから、部屋の中で感じる音をしっかりと確認しなければなりません。
また、線路沿いの家を見学するときには、夏場を想定して窓を開けた状態での音を確認しておくべきです。
毎日繰り返される音は、慣れてしまえばあまり気にならないという人もいるでしょうが、とくに大都市では、深夜1時頃まで電車が走行することも考えておかなければなりません。
音と同時に振動の問題も厄介です。地盤が良好な場合には線路のすぐ脇でもほとんど揺れないこともありますが、逆に軟弱な地盤では線路から少し離れていても、電車が通過するたびに細かな振動を生じる場合があるでしょう。
断続的に震動を感じるような家では、建物の状態にも十分な注意が必要です。
道路や川を跨ぐ鉄橋などがすぐ近くにあると音や振動が大きくなることがあるほか、駅に近い場合も一定の注意が欠かせません。各駅停車の電車しか停まらない駅に近いとき、停車する電車と通過する電車で、音や振動の様子がまったく異なることもあります。
物件見学の際に各駅停車の様子しか確認せずに「想像したよりも静か」だと判断してしまうと、後で困ったことにもなりかねません。
また、線路のカーブが比較的きつい場所では通過に伴う音が大きくなったり、警笛(ホーン)が鳴らされやすかったりすることも考えられるでしょう。
線路のカーブ区間や駅手前の減速区間などでは、電車通過の際に発生する「鉄粉が気になる」というケースもあるようです。
さらに、線路沿いの家で注意しておきたいのは「乗客の視線」です。通常どおりに走行している電車の窓からジロジロ見られるようなことはないでしょう。しかし、ダイヤの乱れで途中停車してしまったとき、ドア付近に立つ乗客が視界に入る家の様子を見ることは多いはずです。
「窓を開けて寝そべっていたら電車の乗客と目が合った」ということも起きかねないため、結果的に線路に面した窓は年中閉め切ったままというケースも多くなりがちです。同様に、線路側のバルコニーなどには洗濯物を干しづらいという場合もあるでしょう。
人によって感じ方や考え方はさまざまですが、いずれにしても線路沿いの家は通常と異なる環境下にあるわけですから、物件見学の際には防音対策や振動対策を含め、いろいろな場面を想定しながらしっかりと確認をすることが欠かせません。
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