星野佳路社長に聞く
井門:ここにきて、一層施設の新規開業やリノベーションが進んでいます星野:星野リゾート・リート投資法人を設立し、星野リゾートの不動産をREIT(不動産投資信託)の下に入れられたことが大きいと思います。REITの物件に関しては、売上に対する設備投資額が明確に設定されます。設備をメンテナンスすることによって顧客満足が高まるとともに、従業員も仕事がしやすくなるため従業員満足度も高まる仕組みが構築できました。
井門:星野リゾートで働く社員は、事務職でも調理師免許を取得するなど、一人何役もこなすマルチタスクの一方で、モチベーションがすごく高い。これは、バリでも同じでしょうか。
星野:給与が最大のモチベーションであることには、国によって変わりはないと思います。自由貿易となれば、一つの職業は国を問わず同額になるのが市場の原理。そのため、サービス業で勝ち抜いていくために「マルチタスク」が必要となります。バリの支配人もゆくゆくは現地の人材を採用していきたいと考えています。
井門:都市勤務がよいと思う日本の学生にどうしたら地方の宿泊業に対する免疫をつけられるでしょうか。
星野:一案ですが、まずは国公立大学から、地方の大学と都市部の大学の単位互換制度を導入すればよいと思います。そして、在学中に地方への免疫力をつけ、ゆくゆく地方へ就職する学生を増やせればと思いますが、いかがでしょう。
井門:それはよい案ですね。インターンシップだけではとても経験不足と思っていますので、文部科学省も検討してくれるとよいですね。
星野:「旅をしない」と言われる若者たちに向け、旅館や地域の魅力を体感してもらう「若者旅プロジェクト」も2015年6月に実施します。
井門:旅行会社の売っている卒業旅行ばかりではない、と。
星野:はい。それより、井門さんのご出身のJTBをはじめ、大手旅行会社が変わらなければ、日本の観光は変わりません。それだけ重要な役割を担っています。アウトバウンドを増やすことこそJTBや大手旅行会社の役目です。
井門:訪日外国人客を増やすためには、日本からの海外旅行客を増やせと。
星野:そうです。インバウンドで来たらアウトバウンドで戻す。外国人客を乗せてくる就航便数を増やしたいのであれば、まずは日本発のアウトバウンドを増やさなければなりません。それこそ旅行会社の役割です。ネット販売が主流になったいま、旅行会社は店頭販売で差別化するしかない。店頭に足を運ぶ楽しさや、旅を選ぶ楽しさ、旅に対する興味をわかせる役割を果たして欲しいと思います。
井門:日本に来た訪日外国人もそろそろ、東京・富士山・京都というゴールデンルートをはずれ、全国を旅してもらわないと、政府の目標とする2,000万人は達成できないと思います。日本の地方に外国人観光客を送るにはどうすればよいでしょう。
星野:地方自治体は、海外空港との直行便の就航数を増やそうと考えるのではなく、ハブ空港からのアクセス改善を考えることです。例えば、仁川から青森空港に入ってくる便を増やそうとするのではなく、羽田からの陸空路の高額運賃をカバーする対策を取ったほうが現実的です。
井門:地方自治体、旅行会社、宿泊業と、まだまだイノベーションすべき点が山積ですね。「ホスピタリティ・イノベーター」に期待しています。
星野:ぜひ、新規開業する「星のや富士」や「界鬼怒川」「界加賀」にもお越しください!
■【データ】
星のや富士 2015年10月30日開業
http://hoshinoresort.com/resortsandhotels/hoshinoya/fuji.html
界鬼怒川 2015年11月10日開業
http://hoshinoresort.com/resortsandhotels/kai/kinugawa.html
界加賀 2015年12月10日開業
http://kai-kaga.jp/