鬼怒川、加賀。そしてバリ、東京。
星野リゾートでは、「星のや富士」の開業(10月)に続き、「界 鬼怒川」を新規開業(11月10日)、「界 加賀」を改装オープン(12月10日)する。鬼怒川は、界シリーズで初めてゼロからの建設となる。加賀は、白銀屋の伝統建築部分を引き継ぐとともに客室棟を全面改築。いずれも界ブランドに共通する「ご当地部屋」を備える。そのほか、加賀では北大路魯山人の料理哲学にならい、九谷焼の若手作家の器を使い、料理を提供するという点も注目だ。
そして、2016年。
バリ島(インドネシア)のウブドゥに「星のやバリ」が、東京・大手町に温泉付きの「星のや東京」がオープン。いずれも、アマンダリ、アマン東京と、アマンリゾートのそば。日本発の国際リゾートがいよいよ誕生する。
個人的には、星野リゾートの運営手法と人材活用に注目している。日本式のやり方が世界で使えるとなれば、世界中のリゾートスタッフの報酬もレベルもさらに上がる気がするからだ。そして、日本の宿の様々な仕組みもイノベートされるはずだ。
日本では、宿泊業はいわゆる3K職場の割に報酬が低いと言われ、3年以内離職率も高い。その理由は、日本の宿泊業(特に旅館)は、一軒単位の独立した企業が運営しており運営効率が悪いためだ。とりわけ、日本は連泊客が少なく、週末に需要が集中する。これでは、確実に土・日に休みは取れず、雇用も安定しない。コストがかかるために社員の報酬も上げられない。
それを一気に解決するのが、外国人旅行客だ。彼らは平日に泊まってくれ、さらに連泊する。日本のリゾートや温泉の稼働率を上げるためにはうってつけの顧客なのだ。しかし、日本の地方宿泊業のアキレス腱は語学力。おそれることはないのだが、どうしても英語ができないといい、引いてしまう。
そこに助っ人として、アジアの人材を採用すればよい。アジアのリゾートは、主に欧米外資によって運営され、マネジメント層とスタッフ層の報酬格差はとても大きい。そのなかで、日本語を学んだ真面目なスタッフがいれば、日本に来て働いてもらうのだ。ビザの障壁が立ちはだかるが、これは業界を挙げて実績を積むしかない。
そして、日本のマルチタスク(一人が何役もこなす)を習得したスタッフが、母国に戻り、日本並みの報酬をもらえばよい。アジアの経済成長が進めば、おのずと報酬も上げていかなくてはならない。その時、日本式の運営手法が身についていれば、少数精鋭の運営も夢ではない。
私は、日本の宿泊業のステイタスと報酬を上げるためにも、星野リゾートの国際リゾート化がその先鞭をつけてくれるのではないかと想像・期待し、とても注目している。
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