ビタミン注射の効果は?

点滴

「色がついた点滴にして!」と言われることも少なくありません

「色のついた点滴にしてください」と患者さんから奇妙なリクエストをもらうことがあります。色がついた点滴、つまりビタミン剤の色がついているほうが効果があると思っている人が多いのですね。

「ビタミンが風邪や疲労などに効果がありますか?」と聞かれたら、「ないですよ」と答えます。かぜや疲労に対してのビタミンの効果は医学的には否定されていますし、ビタミン注射は医療保険で認められていないので、自由診療になります。よっぽどの偏食でない限り通常の生活でビタミン不足になることはありません。

「にんにく注射」として自由診療で行われている注射も、独特のにおいがするだけでにんにくが入っているわけではなく、中身はビタミンB1です。自由診療の点滴はほとんど医療的なエビデンスがないといっても過言ではありません。注射することでよくなると思い込むプラセボ効果は期待できるかもしれません。

水を点滴するとどうなるの?

点滴に水だけを入れるとどうなるでしょう?  浸透圧の原理により、水が半透膜を介して低い濃度の溶液から高い濃度の溶液へ向かうので、血液中の赤血球などの細胞に水が入って破裂してしまいます。

血液などの細胞外液には海の水の1/4程度の塩分(ナトリウム)やミネラルが含まれています。点滴には「ただの水」ではダメで、ナトリウムなどの電解質を入れるか、ブドウ糖を加えて浸透圧を適度に保つ必要があります。

「細胞外液」は原始の海?

では、なぜ細胞外液には塩分が含まれているのでしょう? 現在の海水の塩分濃度は約3.5%ですが、原始の時代の海水は0.9%ぐらいの濃度であったといわれています。現在の海水は、地上の岩塩などが溶け込み、原始より塩分濃度がだいぶ高くなっています。

生命が水から陸上に上がるときには、原始の海の環境を体の中に取り込むことで、陸上の生活にも適応していったと考えられています。細胞を覆っている小さな海である細胞外液は、ナトリウムや塩素など海水にとても似た構成比で塩分濃度も0.9%です。60兆個あるといわれる人間の細胞は、細胞外液という海に浮かんでいるのです。細胞外液は、「血液」、「リンパ液」、「組織液」で構成されています。

代表的な点滴の種類とは

点滴している患者さん

病態に応じて微妙に点滴も変えたりします

浸透圧の関係から、細胞の周りの液体が薄すすぎると細胞が破裂し、逆に濃すぎると細胞がしぼんでしまいます。細胞がしぼみすぎると、中の核まで壊れてしまい大変危険です。脳細胞が崩壊すると致命的な脳症をきたします。細胞を覆っている細胞外液は、薄すすぎても濃すぎても細胞には危険なのです。

以上の理由により、細胞にはほど良い濃度の点滴を行うことが必要になります。点滴には、細胞外液と同じ濃度(等張)の「細胞外液補充液」、細胞外液よりやや薄い「低張性電解質輸液(1号液~4号液)」、ナトリウムは含まずにブドウ糖で浸透圧を調整した「水分輸液剤」があります。小児や高齢者、腎不全、心不全の患者さんなどでは、体内環境を一定に保とうとする「恒常性(ホメオスタシス)」が低下していることが多いので、オーダーメイドの点滴が必要になります。

■1号液
「開始液」と呼ばれるものです。ナトリウムが生理食塩液の2/3程度含まれています。カリウムが入っていないのが特徴です。カリウムを入れていない理由は、腎臓が悪い人などにカリウムを急速に補充すると高カリウム血症となり致命的な状態になる可能性があるためです。病態がはっきりしない症例、小児の初期輸液、腎機能障害に使用されます。点滴500mlで約50Kcal補充できます。

■2号液
ナトリウムの量は1号とさほど変わりませんが、カリウムが入っているので脱水に効果があり、「脱水補給液」とも呼ばれます。点滴500mlで約50Kcal補充できます。

■3号液
生命を維持させるのに必要な電解質をバランスよく含んでおり「維持液」と呼ばれます。医療現場で最も用いられる点滴です。ナトリウム濃度は生理食塩水の1/3~1/4程度と1号液に比べるとナトリウムの量が少なくなっています。点滴3号500mlを4本点滴すると1日に必要なナトリウムとカリウムの量が確保できます。カリウムを含んでいるので腎機能障害の人に投与する場合は注意が必要です。点滴500mlで約100~200Kcal補充できます。

■4号液
ナトリウムの量が生理食塩水の1/4~1/5程度と少なめになっています。カリウムは含んでいません。腎不全や術後の点滴などで用いられ、「術後回復液」とも呼ばれます。点滴500mlで約80Kcal補充できます。

■水分輸液剤(5%ブドウ糖液)
浸透圧を保つためブドウ糖を加えています。電解質は含みません。ナトリウム負荷をかけたくない心臓の病気などで使用されます。点滴500mlで100Kcal補充できます。

点滴の名前では、ソリタT3やリプラス3号、フィジオゾール3号など、多くは商品名の後に何号液か記してあります。医療現場でよく用いられるのは、1号液と3号液です。微妙な配合の2号液と4号液はあまり使用されません。

救急の現場で用いられる細胞外液

出血などで細胞外液が不足している場合では、「リンゲル液」などの細胞外液補充液を用います。細胞外液はナトリウム含有量が多いので、漠然と投与すると塩分過剰になることもあるので心不全の患者さんなどには注意が必要です。

細胞外液である「生理食塩液」の大量投与は代謝性アシドーシスを引き起こす可能性があります。アシドーシスとは血液の酸性度が高くなりすぎた状態です。代謝性アシドーシスでは、吐き気、嘔吐、疲労が起こるほか、呼吸が通常より速く深くなり、重度のアシドーシスでは昏睡に陥ることがあります。細胞外液を急速・大量に補充したい場合などには、生理食塩液ではなく、ナトリウム濃度が低く血漿電解質に近い組成を持った各種リンゲル液を使用します。

リンゲル液には乳酸と酢酸がありますが、乳酸が肝臓のみで代謝されるのに対して、酢酸は全身の筋肉でも代謝されるため、肝機能障害がある場合は理論上酢酸の方が好ましいとされています。ただし、臨床の場において酢酸リンゲル液が乳酸リンゲル液より明らかに有利というエビデンスはありません。

ブドウ糖だけでなく、タンパク質や脂質の点滴も

牛乳

脂肪乳剤は牛乳のような色なので患者さんからの評判は今ひとつ

炭水化物(ブドウ糖)だけでなく、3大栄養素のタンパク質(アミノ酸)や脂質(脂肪乳剤)の点滴もあります。アミノ酸の点滴は術後のストレス時や肝不全の際の脳症などに用いられます。アミノ酸の点滴は高価なので、状況に合わせて使用されます。脂肪乳剤の点滴はブドウ糖よりカロリーが高いのですが、色が牛乳のように真っ白なので患者さんから気味が悪いといわれて評判は今ひとつです。

長期間の点滴には中心静脈栄養

末梢血管からの点滴のブドウ糖濃度は10%程度までです。それ以上の濃度になると血管炎となり血管痛などが生じます。末梢血管からのカロリー量には限度があり、ブドウ糖10%の点滴を2リットル行っても、800Kcalしか補充できません。長期間食事ができない場合には、大きな血管から高カロリーの点滴が必要になります。

長期間食事ができない場合の点滴は、足の付け根や首の大きな静脈を通して中心静脈への点滴を行います。中心静脈栄養では、ビタミンや亜鉛や銅などの微量元素、アミノ酸がほどよく混入されてあります。

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