ファールボールに対する意識は、日本とアメリカで大きく異なる。
リスクを理解したうえでグラブ持参で来場するアメリカ
日本ハムは4月7日、札幌ドームでの主催試合でファウルボールが右目に当たり失明した市内の30代女性が、北海道日本ハムファイターズと札幌市などに損害賠償を求めた訴訟で、損害賠償(約4190万円)を命じた3月26日の札幌地裁第一審判決を不服とし、札幌高等裁判所に控訴した。日本ハムが控訴したことより、地裁で損害賠償を命じたことにインパクトを感じる。訴訟大国・アメリカでも同じようなケースで毎年のように損害賠償訴訟が行われているが、全て門前払い扱いで棄却されている。これは、球団がチケットに、打撃練習や野球観戦中にファウルボールが飛んでくるので、注意するよう警告文を刷り込んで責任の回避をしていることはもちろん、「野球観戦ではファウルボールが飛んでくるのは当たり前で、ケガのリスクは自己責任である」という暗黙のルールが根付いているからに他ならない。
アメリカの球場には、バックストップと呼ばれるバックネットしかなく、ボールから目を離したら危ないことは来場者全員がわかっている。だから、グラブ持参で球場に来る。
グラブ持参の利点は、ボールを獲りにいくことによってケガが少ないことと、もうひとつ、ボールをキャッチした瞬間に“ヒーロー”になれるからだ(そのボールはその家の家宝となる)。逆にキャッチできなかったらブーイングを浴びるはめになるが。ちなみにボールから目を離さないために、野球のルールはもちろん、作戦面も詳しくなるといわれている。
安全だがケガのリスクが増してしまう日本の球場の悪循環
日本の球場はそうはいかない。内野も基本的にネットで守られているため、ボールから目を離し、下を向いて弁当を食べても安全である。しかも、最近までファウルボールを獲ってももらえなかったため、グラブも持参しない。ボールを獲りにいかずに避けるので、余計に当たってしまうという悪循環も生まれてしまう。
アメリカの球場は比較的ファウルゾーンが狭く、選手との距離が近く、臨場感を高めている。日本の球場も最近では防御ネットを外したり、よりグラウンドに近い席を設けたりとアメリカに負けずに臨場感を高めているが、ファウルボール1つ取っても考え方や文化が違うので、訴訟の内容や結果も違ってくるのは当然だろう。したがって、ファンの間でも賛否両論が出るのはうなずける。
しばらくは、動向を見守るしかない。