ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

25年の役者人生は悟り直しの積み重ね。石川禅が語る(4ページ目)

舞台デビュー25周年を迎えた石川禅さん。満を持して臨む1stコンサートには、有名ミュージカルの素晴らしい曲が続々登場予定。あの曲もこの曲も禅さんの美声で聴けるなんて、なんたる贅沢!ということで、ご本人にインタビュー。曲目について、また25年の紆余曲折などなど、話に花が咲きました。

三浦 真紀

執筆者:三浦 真紀

ミュージカルガイド

あまりにも大きい歌ばかりで、ちょっとは後悔しています(笑)

−−禅さんの声で女々しい女性の歌も聞いてみたいですけどね。そして『ウエスト・サイド・ストーリー』の「何かがやってくる」や、『マイ・フェア・レディ』の「君住む街角」も。
今を去ること10数年前、テレビ東京で放映された映画版でトニーの吹き替えをさせていただきました。歌は原音で歌わなかったので、今回、「何かがやってくる」を歌えるのは楽しみです。変わった歌だなと思って聞いていたんですけど。そして「君住む街角」はジャジーで軽快なアレンジになっていますのでお楽しみに。

−−『オペラ座の怪人』『ラブ・ネバー・ダイ』『ジキル&ハイド』からも大曲がずらり!
ね。あまりにも大きい歌ばかりで、ちょっとは後悔しています(笑)。

−−個人的には『ウーマン・イン・ホワイト』のバーシヴァル卿が好きなので、歌って欲しかったですね。最近では『アリス・イン・ワンダーランド』の白のナイトの「君のヒーロー」。
ええ?バーシヴァル卿は可哀想な役でしたよ。カーテンコールの時、あまりにも可哀想で、いつも自分で自分を抱きしめていました(笑)。
白のナイトは大好きです。『アリス・イン・ワンダーランド』ではアリスが歌うラストの曲「今日やりたいこと」が好き。クリーニング屋さんに借りたままの50セントを返してお礼を言おう~って、涙がこぼれちゃう。なんていい曲なんだ。
そうそう。年末にファンイベントで、初めて帽子屋の「イカれた帽子屋(The Mad Hatter)」を歌ったら、その楽しいことといったら!めぐちゃん(濱田めぐみ)はこんな楽しい歌を歌っていたんですね。僕はナイト役で汗ダラダラだったのに(笑)。

正確な演技は人を惹きつける。そこを突き詰め、光りつつ
無鉄砲で勢いのある若い世代をどう支えるか

−−長い役者人生において、最近変化を感じることはありますか。
世代交代。自分が背中を追いかけてきた先輩たちの役をやるようになったことです。それを一番感じたのは、『レ・ミゼラブル』のジャベール役でした。
若い役者さんが舞台に光を撒き散らし、大人の役者が若い役者が撒き散らした光を掃き集めて、舞台をまっさらにして次のシーンにつなぐ。今はそんな大人の役者でありたいな、と。
今年出演した『十二夜』では、年齢層の幅広いキャストが揃っていたので、そんな光景を目の当たりにしました。若い役者が撒き散らした光をベテランがすーっと掃き集めるのを見て、すごいなと。しかもお客さんがその瞬間、固唾を呑むんです。鳥肌が立ちました。
自分はまだ役によっては光を巻き散らしているわけですが(笑)、ポジション的には支える立場にもなっているわけで。世代が変わってきている中、自分の立ち位置を考えつつ、光を放ち続けたい。
僕の中には、正確な演技は魅力があるという信念があります。リアルな演技というより、正確な演技は人を惹きつける。そこをもっと突き詰めて光りながら、無鉄砲で勢いのある若い世代をどう支えるか。今はそれが楽しくなりつつあります。

−−『十二夜』はサー・アンドルーという難しい役どころでしたね。

ありがたいことに、演出家のジョン・ケアードさんが自ら、「禅にやってもらいたい」とリクエストしてくださった役です。本当に難しくて、台本を読んだ時、できるわけないと思ったほど。疑問を持ったところすべてにマーキングをして、ジョンに質問しまくりました。でもジョンの演出の元、深く深く芝居を掘り下げてやらせていただける。そんな年齢になったという感慨があります。

若い時に感じた、「歌は喋る」という衝撃を胸に、
雪だるまみたいに大きくなった積み重ねを表したい

−−では最後に25年を振り返って、メッセージをどうぞ。
「台詞は歌え、歌は語れ」という言葉があります。先ほどお話しした通り、僕にとって歌は3分間の芝居。こういう声で表現するではなく、思いをメロディに乗せてただ喋る、というのが自分の中の原点です。
『レ・ミゼラブル』や『ミス・サイゴン』で初めて触れたその感覚は、若い頃の自分のポリシーやセオリーにはなれど、まだまだ未熟でした。
雪だるまは、転がしていくとどんどん大きくなって、それでも雪は雪。同じように、自分の身の丈に合ったサイズで、より大きなことを悟ると、雪だるまが大きくなるように身につくものが大きくなる。
役者人生はその繰り返しです。同じことを何回も悟り直す。同じことですが、若い頃とは違う悟り直しになる。やっていることも内容も全く同じでも、スケールが変わっていくんです。
今回も多くの大曲を歌うミュージカルコンサートとして受け止めると大変なことですが、3分間のオムニバス芝居を十数曲と考えると面白いかな。自分が若い時に感じた、「歌は喋る」という衝撃を胸に、大きくなってきた雪だるまみたいな経験、積み重ねをこのコンサートで表現できたら嬉しいです。
25年間役者人生を歩んできた雪だるまがどんなことになっているのか、ご覧いただけたら幸いです。

【公演情報】
25周年石川禅ソロコンサート
2015年5月20日 よみうり大手町ホール


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