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賃貸業界における家賃情報データベースの是非

家賃滞納は大家さんや管理会社にとってシビアな問題。そこで、滞納者の個人情報をデータベースで管理するシステムの運用が始まっています。

加藤 哲哉

執筆者:加藤 哲哉

賃貸・部屋探しガイド

これまで賃貸契約の締結に必要であった連帯保証人の代わりを務める、賃貸保証制度によって多くの入居者が安心して部屋を借りられる時代になってきました。それに伴い、賃貸保証業の重要性や業務適正化などを図り、賃貸住宅への入居手続きをスムーズにすることなどを目的として、平成21年9月に一般社団法人「全国賃貸保証業協会」(以下、LICC)が設立されています。

さらに、入居者の信用情報を一括管理できるデータベースをこの協会に加盟する13社で運用スタートしています。(加盟している会社はこちら

家賃情報データベースとは?

今年の2月1日より、LICCに参加している賃貸保証会社の新規保証申込者に対し、家賃情報データベースへ個人情報を登録することへの同意を得始めています。ここで登録される個人情報とは、

・氏名、生年月日、旧住所、電話番号、免許証番号などの個人特定番号、保証対象物件の住所・物件名、保証開始日、月額賃料、保証終了日、入金額、代位弁済残高

など。

情報の登録機関は賃貸住宅の退去・明け渡しから5年間とされており、万が一延滞があった場合には、債務が消滅してから5年間とされています。現在は同意取得のみを行っており、実際にシステム稼働時期についてはまだ決定していませんが、同意取得の実務は保証契約の取り次ぎを行う賃貸管理会社や仲介会社となるため、順次告知を勧めている段階です。

家賃情報データベースが稼働すれば、滞納をしたことのない良識な入居者は、転居の際に有利な条件で借りられる等のメリットがでてくることが考えられます。逆に滞納情報を事前に大家さんや管理会社が把握することができるため、社会的弱者の立場にある、失業者や日雇い労働者にとっては住宅探しが困難になると、懸念の声があるのも事実です。

データベース運用のメリット・デメリットは?

こういった家賃情報データベースが構築された背景には、昨年から頻繁に問題にされている家賃滞納者に対する厳しい取り立てが大きな社会問題となっており、特に2008年には「初期費用ゼロゼロ物件!」と謳った物件を借りた入居者が、滞納した家賃を強引な取り立てを要求された、いわゆる「追い出し屋」トラブルが話題となったことなどがあります。
(詳しくはこちら→「初期費用『ゼロゼロ』にご用心!」)

これらの被害を食い止めようと、2009年2月には弁護士や司法書士らで「全国追い出し屋対策会議」も結成され、こういった低所得者層の居住権を確保するために、住宅政策を充実させたり保証制度を整備することを提唱し、被害者の権利擁護に努めています。この法整備が整えば、深夜や早朝の家賃の取り立てや無断で家具を運び出したり鍵を交換するなどの行為が規制されることとなるでしょう。

この法案が施行されれば、滞納入居者に対しての督促がさらに難しくなるのでは?と大家さんや管理会社が不安に思うかもしれません。そこで、家賃情報データベースがあれば、事前に悪質滞納者の情報を知ることができ、賃貸業を営む上でもトラブルを避けることができるとし、家賃情報データベースの運用に踏み切ったという背景もあるのかもしれません。

現在は個人情報の登録をしているのみですが、実際に運用されるようになると、これまで審査に通っていた人も滞納が解消されていなければ、審査を落とされてしまう、または通常よりも高い保証料を請求される可能性が出てきます。どのような審査基準を設けるのかは参加している賃貸保証会社によるため、今のところ明確ではありません。

マスコミ各社は、家賃情報データベースのデメリットばかりを強調していると、私からは見えています。

現在、保証人代行システムの保証料相場は、当初2年間が月額賃料の50%に設定されています。家賃10万であれば5万円と高額です。一律50%というのは、合理的なようですが、きちんと家賃を払う人と確定できれば、例えば家賃の5%とか料率を大きく下げることが可能です。一部の悪質滞納者がいるために、50%という率になっていると考えられます。いわゆるブラックな人がいるので、ホワイトな人も保証料が高くなってしまうのです。
家賃情報データベースが動きだせば、家賃をきちんと払っている多くの人は、保証料が下がることは十分に考えられます。

家主さんは国や公共団体ではなく、一般人。ビジネスとして賃貸経営をしています。
例えば、レストランであれば、お客さんが無銭飲食をしたら警察につきだされ、逮捕されます。一般のレストランで無銭飲食すれば違法です。無銭飲食者が許されれば、レストラン経営はできなくなります。
賃貸住宅で、入居者が賃料を払わなければ、当然、賃貸経営はできなくなります。賃料を払わない入居者を入居させないのは、経営でやっていれば当然でしょう。賃料を払えない社会的弱者といわれる人の賃料を、一般人である大家さんが負担するのは筋が違うのではないでしょうか。それは、国や公共団体がサポートする役割を担うべきです。

マスコミでは、家賃情報データベースの構築は、マイナスとの報道が多いですが、メリット、デメリット、またそれぞれが追うべき役割まで、しっかり考えて、制度をまとめていけば、マーケットの健全化につながると私は考えています。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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