「柚希礼音率いる星組がいたから観られた」と思えた、これも初めてのミュージカル化となった『オーシャンズ11』。ラフにスーツを着こなす余裕と色気。幕開きの群舞に始まり、終始、個性的な男役を従えての場面の中、真ん中で光るダニエル・オーシャンは、いつどの角度から見てもかっこよく、柚希礼音そのもの。
ダンスの名手、柚希礼音の魅力満載だったのが、『ダンサ セレナータ』のイサアク。それまでに演じた躍動的な役とは違い、肩の力が抜け、寛いで出した本物の男の魅力。ラストのモニカとの再会シーンも素敵でした。
宝塚歌劇団100周年の幕開けに上演された『眠らない男・ナポレオン-愛と栄光の涯に-』のナポレオン・ボナパルト。二角帽子と軍服もよく似合い、鋭利な刃物のように躍動感あふれる皇帝は、圧倒的な存在感とオーラに満ち溢れていました。
初舞台の時のトップスターだった専科の轟 悠さんを相手に挑んだ『The Lost Glory-美しき幻影-』のイヴァーノ・リッチ。欲しいものは必ず手に入れる、復讐のため罠をしかけるワルは魅力的。渋みがある悪役も似合います。
そして最後の役、『黒豹の如く』のアントニオ・デ・オダリス伯爵。ワイルドな海賊ソルのプロローグに始まり、黒豹のようにしなやかなアントニオ。その目に宿る光に万感の思いを感じた、全精神を傾注したラストステージでした。
柚希礼音さんといえば卓越したダンス! 弾けるように流れるように、そして力強く、クラシック・バレエで鍛えたテクニックから作り出す踊りは最上級の名品です。
最後のショー『Dear DIAMOND!!』のフィナーレの黒燕尾の群舞。トップスターは飾りがたくさん付いている燕尾服を着るものですが、柚希さんの黒燕尾は皆と同じシンプルなものでした。男役全員が同じ黒燕尾を着た中で煌めく様に、あらためて柚希礼音の大きさを感じたものです。