アイルランド/リムリック

文学ファン必見!フランク・マコート・ミュージアム

アイルランドで少年時代を過ごし、その自伝的小説で世界的に有名な作家になったフランク・マコート氏のふるさとリムリックには、マコート氏とその著作「アンジェラの灰」を紹介するフランク・マコート・ミュージアムがあります。

執筆者:原 貴子

ファンなら必ず訪れたいフランク・マコート・ミュージアム

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マコート氏の通った小学校。今はミュージアムとして公開されている

アイルランドのリムリックは、アイルランドで少年時代を過ごし、その自伝的小説で世界的に有名な作家になったフランク・マコート氏のふるさとです。マコート氏にゆかりのスポットの数々もこの街に点在しているのですが、それに加えて必ずチェックしたいのは、マコート氏の代表作「アンジェラの灰」に登場する空間を再現した部屋やマコート氏ゆかりの品々が展示されているフランク・マコート・ミュージアムです。それではその見どころをご紹介します。

「アンジェラの灰」の世界がそこに

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貧しいマコート一家のある年のクリスマスの食卓を再現したテーブル

2009年のマコート氏の死後、ほどなくし弟のマラキ・マコートさんによってオープンされたフランク・マコート・ミュージアムは、リムリックの街の中心地からもほど近い、マコート氏が実際に通っていた小学校内にあります。ミュージアムは大別すると、作中に登場するマコート一家が暮らした家の一部を再現しているコーナーと、マコート氏も学んだ教室部分を当時の雰囲気のままに再現し、氏にゆかりのある品々の展示をしているコーナーに分かれています。

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よく浸水し湿った一階の部屋と比べて暖かかった2階部分を家族はリトルイタリアと呼んだ

「アンジェラの灰」は、貧しかったマコート氏の少年時代を描いた小説なので、作中に登場するキッチンやベッドルームは、今のアイルランドの暮らしの風景からはかけ離れています。そのため、部屋の再現に関わったデザイナーは、その雰囲気を細部まで表現するのにかなり骨を折ったといいます。それでも、小説の中の各エピソードに関する小道具が要所要所に配置されていたりと、小説のファンなら思わずほほえんでしまう仕掛けが数多くあり、見ていて楽しめるコーナーになっています。

マコート氏ゆかりのユニークなコレクション

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学校の規律に背いた際に受けた罰の内容は名文化されたものが残っている

校内の元教室部分は、マコート氏がこの学校に通っていた1930年代の雰囲気を再現。机や掛け時計、教科書をはじめ、当時の授業の名残りを感じる品々や、映画化にあたっての小道具や資料、世界各国の言葉に訳された著作「アンジェラの灰」などが並んでいます。

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マコート氏のロザリオコレクションの一部

中でも興味深かったのは、フランク・マコート氏本人から寄贈されたというロザリオコレクション。幼い頃からその日の暮らしもままならない貧しさを経験していたマコート氏は、10歳にして「こんなにも湿った土地に神はいるのか」という作文を書いたとも。厳しいカトリックの教えの中で育ちながらも、少年の目に映ったその矛盾点は著書にも描かれているのですが、それでも成人してからロザリオをコレクションしていたというのは何とも面白いと思いました。

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自身もここで学んだ弟のマラキ氏が運営に関わっているので、教室部分は特に作中の雰囲気がたっぷり

さらにこのコーナーでは、「アンジェラの灰」の作中で登場する場所で、リムリックに現存するスポットの数々も紹介しています。当ミュージアムを訪れた後は、そんな作品ゆかりのスポットを散策してみるのもいいかもしれません。リムリックのツーリストインフォでは「アンジェラの灰」の舞台をガイドとめぐるアンジェラの灰ウォーキングツアーにも申し込めますので、こちらもぜひ。

リムリックを嫌い、リムリックを愛した作家

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教室を見下ろすようにマコート氏の遺灰の入った木箱が安置されている

この教室部分には、「死後は遺灰の一部をリムリックに」というマコート氏の生前の希望により、その遺灰が安置されています。貧しい少年時代にこの街から出て行くことを夢見ながら電報配達に精を出し、やがて生まれ故郷のニューヨークに渡り作家として成功したマコート氏ですが、移住後もリムリックには度々足を運んでいたといいます。単なる好きや嫌いという感情だけでは表現しきれない、特別な思いがこの街にはあったのかもしれません。

<DATA>
Frank McCourt Museum
住所:Leamy House, Hartstonge St., Limerick
電話:353 (61)319710
料金:大人4ユーロ、学生3ユーロ
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
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