「法律上、損害賠償責任あり」と「個人賠償責任補償でカバー可能」はイコールではない

法律上の損害賠償責任を負い、かつ被害者の身体や財物に損害が出ている時が対象になる

法律上の損害賠償責任を負い、かつ被害者の身体や財物に損害が出ている時が対象になる

清水 最近、損害賠償についてのニュースをしばしば目にします。自転車で歩行者にケガを負わせ、1億円近い損害賠償命令が出された事例は衝撃的でした。また兵庫県ではこうした深刻な事故への対応として、県民の自転車保険加入の義務化を条例で定めています。こうした流れもあり、契約者の関心も集まっているようです。そこで今回は、損害賠償に対応する「個人賠償責任補償」についてお聞きしたくお伺いしました。どうぞよろしくお願いいたします。

Hさん こちらこそよろしくおねがいします。

清水 はい。セミナーではいろいろな保険の話を取り上げますが、最近は個人賠償責任補償への関心の高さを感じます。何処で入ったらよいか、どうやったら入れるのかなど、いろいろな質問をいただきます。一方で、個人賠償責任補償に入っている場合でも、勘違いが多いように感じます。わかっているようで意外にわかっていないのが個人賠償責任補償です。

Hさん そうかもしれません。ではまず基本から。個人賠償責任補償は、過失によって第三者の身体または財物に損害を与え、法律上の損害賠償責任を負う場合に、被保険者が負担する損害賠償金を補償する保険です。設定した保険金額の範囲内で、裁判費用なども補償されます。そこはだいたいどの商品でも共通ですね。そして、個人賠償責任補償で対応する法律上の損害賠償責任とは、おもに民法709条の不法行為責任を指します。

清水 民法709条の不法行為責任は、他人に損害を与えたら賠償しなくてはならないという定めですね。ただ、一定年齢以下の子どもとか認知症などを患っている場合には、本人の責任能力を問えないこともあるから、その場合は親や配偶者などの監督義務者が代わって賠償義務を負うとの規定もありますよね。

Hさん はい、民法714条の監督義務責任ですね。こちらも709条と並んで、個人賠償責任補償の対象になります。ただし、法律上の責任を負っていることに加えて、被害者の身体やモノに、実際に損害が発生していることが保険金支払いの要件になります。

清水 なるほど、この2段階をクリアすることによってようやく保険金の支払い対象となるわけですね。

Hさん まさにポイントはそこです。法律上の損害賠償責任を負う場合でも、被害者がケガを負っていなかったり、モノも壊れていない場合には、個人賠償責任補償からの保険金支払いはありません。ですから不法行為と言っても、人格権の侵害とか、プライバシーの侵害などは対象になりません。つまり、法律上の損害賠償責任を負うすべての場合について、保険金が支払われるのではないわけです。

清水 とても大切なポイントですね。法律上の責任を負うと同時に、身体・財物の損害の有無が、保険が使えるかどうかの最初の分かれ道になる点はしっかり認識しておかなくてはなりません。


契約者の家計を守るだけでなく、被害者救済が目的でもあるから重過失による事故も対象になる

清水 ところで、個人賠償責任補償は、加害者の過失の程度を問わず補償されますよね。

Hさん 故意はダメですが、重過失によるものは補償対象です。

清水 故意と重過失、過失の違いは?

Hさん 火災のケースで考えてみましょう。故意は、家に火をつけようという明確な意志を持って火をつけたことを言います。では過失はというと、これは不注意ですね。「ついうっかり、やってしまった」といったレベル。では重過失ですが、これは非難を浴びる不注意のことを言います。「そんなことをしたら、結果がどうなるかはわかるはず」「それは非常にまずい」というレベルです。家に火をつける明確な意志はないものの、未必の故意のように、「火を着けたら燃えるかなあ」との認識はあるというところでしょうか。

清水 なるほど。故意と重過失はもっと近いイメージでしたが、「意志」があるかどうかはそれなりに高いハードルですね。重過失と言えば、過去に火にかけた天ぷら油を放置して事故になった案件で、裁判所から重過失に認定された事例がありましたが。

Hさん てんぷら油を熱している間に起きた事故の案件はいろいろあります。ただし、必ずしもそれらが重過失として認定されているわけではなく、ケースバイケースです。1つ1つの事故はすべて条件が異なりますから、それぞれの条件を勘案して判断されるのです。火災保険では、てんぷら油火災イコール重過失認定、ではないです。

清水 なるほど。個人賠償責任補償では過失の程度を問わず補償されますが、一方で火災保険は、故意または重過失は補償の対象外ですよね。

Hさん そうですね。まず個人賠償責任補償は、巨額の損害賠償責任を負う契約者の生活を守るのがその目的ですが、実はその先でもっと困っているのは被害者です。個人賠償責任補償はそこを救済する目的の意味合いもあるため、被保険者の重過失でもカバーされるわけです。ただし、本人がわざとやったものまでは保険会社では面倒を見られません。ですから故意は対象外ですし、あるいは”火が出ても構わない”という、重過失に値する管理状態でも保険金を受け取れるとなると、意図的に火災事故が発生しかねないので、それを排除する考え方かと思われます。

清水 なるほど。それはもっともですね。

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