1頭のサラブレッドには、数々の人が関わっている
まだ少年にあたる馬たちが戦う、日本ダービー。しかし、そこまでの道のりは非常に長く、1頭の馬がダービーの舞台へと立つまでには、多くの人たちが携わっています。そしてそれこそが、ダービーがドラマチックである最大の理由だと思います。たとえば、2015年のダービーを目指す馬たちは、2012年に生まれた3歳馬。彼らはその一年前、2011年の春に、牧場の母馬が「種牡馬(しゅぼば)」という種付け専用のオス馬と交配して、宿った生命です。このとき、多くの牧場スタッフは、「ダービーの舞台に立つような、健康で立派な子が生まれてくれれば……」と願います。
そして一年後の春、各牧場で次々とサラブレッドが産声をあげます。日本で生まれるサラブレッドの頭数は、年間7000頭前後。もしそこで、素晴らしい体つきをした子馬が誕生すれば、牧場の人たちは「この馬ならダービーに出られるかも」と夢を抱きます。
牧場で成長した子馬は、やがて馬主たちに引き取られます。馬主たちが欲しいのは、もちろん将来のダービー馬。そうして引き取られた馬たちは、デビューへ向けて、「育成」というステップに移ります。
育成とは、馬がきちんと人間の指示を聞いて走れるように訓練したり(馴致)、基礎体力をつけたりする期間。育成を専門に行う施設はいくつもあり、そのスタッフによって行われていきます。
育成を終えた馬は、次に調教師のもとへと移ります。調教師は、出るレースを決めたり、レースに向けて馬をトレーニングしたりする人。調教師のもとにはスタッフがおり、馬の世話をする厩務員(きゅうむいん)や、トレーニングを補助する調教助手など、いろいろな人がその馬を管理します。
こうして、2歳の春以降から、サラブレッドたちは続々とデビュー。コンビを組む騎手を背に、コースを駆け抜けます。色々な人が関わってデビューした馬たちは、ここからダービーを目指してしのぎを削るのです。
人の思いを馬に託す、その究極が日本ダービー
1頭の競走馬には、生まれた牧場の人たち、育成のスタッフ、所有する馬主、調教師や管理スタッフ、ともにレースを戦う騎手など、たくさんの人たちが携わっています。そしてその人たちは、「ダービーに出られるような馬になってくれ」という思いを託します。もちろん、馬自身はそんなことを知る由もありません。しかし、こういった数々の人の思いを乗せて走るレースが、日本ダービーなのです。だからこそ、関わった馬がダービーを勝つことがあれば、関係者にも大きな栄誉が待っています。騎手は「ダービージョッキー」とよばれ、調教師は「ダービートレーナー」といわれ、生まれ故郷の牧場は「ダービー馬のふるさと」として注目を集めます。競馬はすべて、ダービーを中心に回っているのです。
多くの人たちの強い思いを、何も知らない馬たちに託すのが日本ダービー。まさにこれこそが、競馬のだいご味かもしれません。だからこそ、ダービーのゴール前では、感動の瞬間が訪れます。
ちなみに、日本ダービー当日の東京競馬場は、10万人以上の観客が訪れ、独特の雰囲気に包まれます。競馬好きでなくとも、ぜひ一度はあの雰囲気を味わっていただきたい。当日の競馬場の模様については、こちらの記事にも書いてありますので、ご覧いただければと思います。
年に一度行われる、高校生サラブレッドたちの頂上決戦「日本ダービー」。4月24日のダービー記念日をきっかけに、観戦の準備を始めてみてはいかがでしょうか。
【関連リンク】
4月24日|wikipedia(ウィキペディア)
東京優駿(日本ダービー)|JRA-データファイル
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