そこで、現時点では受験者や養成校しか目にしていない第50回出題問題の一部を特別に公開します!特に新規問題や近年多くなった問題をピックアップしていきますので、解説も含めて一緒に見ていきましょう。
第50回理学療法士国家試験 午前問題と解説
<午前問題.49>吸引操作の合併症として誤っているのはどれか。
- 不整脈
- 肺胞虚脱
- 肺うっ血
- 低酸素血症
- 気管支攣縮
正解⇒3
<解説>
平成22年4月よりリハビリテーション関連職種にも認められた喀痰吸引行為。これにより、国家試験問題にも関連問題が出題されるようになりました。吸引操作時の合併症は、「気管吸引ガイドライン2013」で、以下のように示されています。 鼻腔、気管支粘膜等の損傷、低酸素症・低酸素血症、不整脈・心停止、徐脈、血圧変動、呼吸停止、咳嗽の誘発が多くなり疲労、嘔吐、上気道のスパスム、不快感・疼痛、院内感染、無気肺、頭部疾患(頭蓋内圧の上昇、脳内出血、脳浮腫増悪)、気胸。よって、答えは3の肺うっ血になります。
<午前問題.54>
中脳レベルの横断面の模式図を示す。錐体路はどれか。
正解⇒5
<解説>
1は上丘。2は赤核。3は黒質。4は動眼神経核になります。なお、選択肢にはないですが、動眼神経核の上の小さな二対の丸は動眼神経副核。その上の逆三角形状のものは中脳水道です。
<午前問題.78>
ボツリヌス菌毒素製剤の作用機序について正しいのはどれか。
- 末梢神経の破壊
- ミトコンドリアのATP産生停止
- アクチンとミオシン頭部の統合抑制
- 抗アセチルコリン受容体の産生
- 神経終末部でのアセチルコリン分泌抑制
正解⇒5
<解説>
ボツリヌス菌毒素製剤による治療は、ボトックス療法と呼ばれています。ボトックス療法では、自然界において7種類あるといわれるボツリヌス毒素のうちA型を使用します。初めての臨床応用は1977年。米国のScott氏により、斜視に対して行われました。その後は研究を深めるのと並行し、眼瞼痙攣や片側顔面痙攣、痙性斜頸、上・下肢痙縮、小児脳性麻痺による尖足治療など、筋肉の過剰収縮に関連する疾患に多用されています。このボトックス療法では、ボツリヌス毒素が神経筋接合部で神経終末に作用し、アセチルコリン放出の抑制をします。これにより、筋収縮が阻害され、筋の異常緊張の改善を図ります。その他詳しい作用機序は下記を参照してください。
次のページでは、午後の問題について解説します。目崎高広,梶龍兒,ジストニアとボツリヌス治療,改訂第2版,診断と治療社,2005
- A型ボツリヌス毒素がコリン作動性神経終末に結合します。筋肉や皮内に注射されたA型ボツリヌス毒素は重鎖によって神経終末のレセプターに結合します。
- 神経細胞内にA型ボツリヌス毒素が取り込まれます。A型ボツリヌス毒素はエンドサイトーシスによって神経細胞内に取り込まれ、エンドソームが形成されます。
- 神経終末でアセチルコリンの放出を阻害します。(神経毒作用) エンドソームからA型ボツリヌス毒素の軽鎖が細胞質に放出されます。アセチルコリンのエキソサイトーシスに関与するSNAP-25 を軽鎖が切断して、アセチルコリンの放出を阻害します。