マネジメント/マネジメント事例

任天堂&DeNAはまだ序章。提携、統合が増えるわけ(2ページ目)

任天堂とDeNAが資本提携、ファミリーマートとユニーが経営統合へ、ソフトバンク通信4社が合併…。このところ、いわゆるM&A(企業の統合、買収)案件と言われる、起業同士の資本にからむ大きな動きが目立って増えています。資本提携、経営統合、合併、買収、一見似たようにも思えるこれらの企業戦略にはいかなる違いがあり、どのような狙いが隠されているのか。事例をもとに、その背景を含めて解説します。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド

統合と合併の好事例

解説

業界3位ファミリーマートはユニーとの経営統合で上位追撃を急ぐ

それでは、最近の事例を見てみましょう。ファミリーマートとユニーのケースは、コンビニ業界3位と4位と言う大手同士の統合であり、これまでお互いライバルとして戦ってきた者同士という関係を考えれば、組織の融合には多大なる労力および時間とコストがかかることは想像に難くありません。ならばむしろ、同じ傘下にそれぞれの企業体をぶら下げ、業務重複等の解消を通じて削減をはかりつつ引き続きグループ内でライバル関係を保つことで切磋琢磨させ、早期に業界トップ企業追撃態勢を整えるというのが、経営統合という方向を選択した理由であると考えられます。

一方、この4月にグループ内の通信子会社4社を合併させたソフトバンクの狙いは何か。今回合併したのはソフトバンクモバイル、ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコム、ワイモバイルの4社。最大の狙いは、携帯通信サービスと固定通信サービスの統合による総合通信企業誕生によるシナジー効果です。加えて重複事業分野の圧縮も見込まれます。

同社が経営統合ではなく合併を選んだのは、元々が同じグループ企業として事業を展開していたことで、組織融合が比較的様であったことが最大の要因でしょう。一般的には、経営統合よりも合併の方がより大きな統合効果が見込まれるので、ソフトバンクが合併の道を選んだのは至極当然であったと言えます。

M&Aの本音は「時間をカネで買う」戦略

さて気になるのは、最近なぜこのような有名企業同士の資本提携、経営統合、合併、いわゆるM&A関連案件が相次いでいるのかです。視野を広げてみると、製造業における富士フィルムの米ipsベンチャーやブラザーの英産業印刷大手企業の買収、流通においてはイオンのウェルシアやローソンの成城石井買収など、広い意味で統合に含まれる買収もかなりの数が報道されているのです。

このように製造、サービスなどの業種を問わず、M&A案件が急激に増加している裏には、IT化の進展などの影響を受けた情報や産業の高速度化、高度化、複雑化といった、一般にパラダイムシフトと呼ばれる時代の急変貌化があります。そして各企業は、これに乗り遅れることなくなんとか業界のリード役を務めよう、あるいはなんとか遅れずに着いて行こうという努力や焦りから、M&A手法を駆使した戦略に打って出ていると言えるのです。

なぜならば、M&Aは言いかえれば「時間をカネで買う」戦略であるからです。要するに、自社で一から新規事業や周辺事業を育てていたのでは、到底今の時代の流れには着いていけない。そこで景気浮揚の後押しもあり、既に出来上がった他社を会社ごと買う、あるいはおカネを払って業務提携を結ぶという選択肢を選び企業が増えているのです。「時間をカネで買う」、まさに言い得て妙な表現です。

新聞で華やかに報道されるM&A案件の裏には、主役企業の苦しい胸の内が潜んでいるということも多いのです。報道を聞いてM&Aの本当の狙いや当該企業の本音を推察してみることは、企業マネジメント的考察の醍醐味でもあるのです。
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