演歌・歌謡曲/和製ロック・ポップス

タケカワユキヒデ 40周年記念インタビュー前編

2015年でデビュー40周年を迎えるタケカワユキヒデ。ソロ期、ゴダイゴ期、作家期、そして現在……音楽家として、芸能人として稀有な才能と実績を持ち輝き続ける彼の素顔に中将タカノリが迫った。

中将 タカノリ

執筆者:中将 タカノリ

演歌・歌謡曲ガイド

アーティストとしての目覚め

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ガイド:デビュー40周年おめでとうございます。ソロ時代、ゴダイゴ時代、作家時代とさまざまな活動をされてきたタケカワさんですが、アーティストとして目覚めた時期やきっかけはどんなものだったんでしょうか?

タケカワ:子供の頃、アメリカのヒットチャートに夢中だったんです。日本にはオリジナルでそういう音楽がなかったから。11歳くらいの頃にビートルズも出てきて……当時のアメリカのチャートに上がる曲には本当にワクワクしたんですよ。僕もその頃に作曲をはじめたんだけど「自分もチャートに上がるような曲を書きたい。誰かがやる前に早くやりたい。」と思ってましたね。

ガイド:今“オールディーズ”と呼ばれている時代のロック、ポップスにあこがれたんですね。

タケカワ:あこがれとは少し違う感情かな。アメリカで流行る曲と同じグレードと、ワクワク感と、楽しさと、簡単さとをあわせ持った曲を自分でも作りたくなったんです。

ガイド:受け身に終わらず、そこに挑んでいく気持ちが少年時代のタケカワさんをアーティストたらしめたんでしょうか。それからソロデビュー(※1975年 アルバム『走り去るロマン』)に至るまではスタンスの変化はありましたか?

タケカワ:いろんな楽器を演奏するようになって、音楽もいろいろ聴きましたが中でもビートルズには本当に影響を受けました。変拍子だとか、突然転調するとか、メロディーが重なるとか……複雑な音楽が好きになりましたね。複雑なんだけど小難しく聴こえずポップな音楽があるんだってことを発見しながらファーストアルバムに至る感じですね。

思いもしなかったスターに

ガイド:プロとして商業的に展開していく中で難しさは感じませんでしたか?

タケカワ:もちろん感じました。たとえば僕のデビューアルバムは全曲英語だったせいか、全然売れなかったんですよ(笑)でもその時にCM業界、映画業界だけは僕に注目してくれました。特にCM業界ではほんとにたくさん仕事をさせてもらったのでプロとして活動を継続できたんですね。

ゴダイゴにしても学生じゃなくてプロが集まったバンドで妻帯者もいたし、商業的に成立しなければ続けられないんですよ。評価してくれる人はいたんだけどなかなか思うようなヒット曲が出なかったから……他のアーティストのプロデュースやCM、企画ものの仕事をたくさんこなしました。

ガイド:「売れた!」っていう最初の手ごたえはやはり『ガンダーラ』(1978年)ですか?

タケカワ:そうですね。でも、あくまで企画もの扱いだったからレコード会社は最初あんまり売る気がありませんでした。今よりはるかにレコードが売れる時代だったのにイニシャル(初回流通枚数)9000枚ですからね。初めから売れない前提ですよ(笑)

ガイド:それが思いがけず大ヒットしたわけですね。

タケカワ:考えてもみなかったほどの人気が出てしまって生活が一変しました。

ガイド:「またヒットを作らなければいけない」というようなプレッシャーは生まれませんでしたか?

タケカワ:曲を作ることよりもテレビに出続けることのプレッシャーの方が大きかった気がしますね。とにかく忙しくて毎日の生活が大変でした。


歌詞へのこだわり 「メッセージはない」

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ガイド:当時のタケカワさんはメッセージや主義主張を伝えたいタイプというよりは、純粋にいい音楽を作りたいタイプのアーティストだったのかなと思っているのですがいかがでしょうか?

タケカワ:まさにその通りです。メッセージゼロみたいなやつで(笑)言葉で伝えるんじゃなくて、ただただ音楽による感動やワクワクを伝えたかったんですね。

ガイド:それで歌詞は奈良橋陽子さんなどの作詞家の方にまかされていたんですね。

タケカワ:もともとは自分で英語の歌詞を書くつもりで、文法のあやしいところだけを奈良橋さんに手直ししてもらってたんですよ。でもいったん出来たものを直すのは大変だし、僕にとっても直されたものが気に入らなかったりしてはかどらなかったんです。

そんな時に奈良橋さんが新しい歌詞を作ってきて「どうかな?」って言うんですよね。それに曲をつけたら周りのみんながすごく気に入ってくれたんです。それが僕の最初のアルバムのタイトルソング『走り去るロマン』ですね。良いものができて作業としてもスムーズだからこのスタイルでいこうということになりました。

ガイド:自分で日本語の歌詞を書こうとはされなかったんですか?

タケカワ:当時は日本語で歌詞を書くと非常に皮肉屋な感じになってしまってたんです。自分が目指してるポップソングには向かないし……だからやっぱり英語を重視していましたね。外国語でわかりにくくて申し訳ないんだけど「音楽でこんなに心が動いちゃうんだ」ってことを伝えたかったんでしょうね。

ガイド:近年のタケカワさんは環境や子育てについての講演活動もされていますね。講演というとなにかメッセージを伝える作業のように思ってしまうのですが、どのようなスタンスで取り組んでおられるのでしょうか?

タケカワ:音楽もそうだけど僕の場合、メッセージというのじゃないんですね。今も昔も僕が言葉で伝えたいことっていうのは格別ないんですよ(笑)。強いて言えば、自然体で、無理しないで楽しく生きようという姿勢みたいなものではないかと思います。

講演は、主催側から求められたテーマについて自分で台本を書きます。でもえらそうな話はしていません。生きることに楽しさを見出してもらえれば、と思って、いつも話しています。

ガイド:聴く人が自由に受け取ってほしいということですね。

タケカワ:そうですね。


ゴダイゴ解散後 作曲家生活を振り返って

ガイド:英語重視の曲作りはタケカワさんにとって現在まで一貫したスタイルなんでしょうか?

タケカワ:それはゴダイゴを解散するまででした。どんどん変わっていきましたね。気持ちだけを伝えようとすることに限界があるんだなと思わざるを得なくなってきて。やっぱり日本人にとって英語の歌詞ってよくわからないから(笑)。

ガイド:たしかにゴダイゴの歌詞は日本語バージョンでも抽象的なものが多いですね。

タケカワ:そろそろ自分の中で日本語と音楽の関係性を作りたくなってきたんですね。ゴダイゴが解散したのを一区切りに作曲家としての可能性を試してみたい気持ちもあったし……作曲家として純粋に日本語に接してみようと思ったんです。

ガイド:その方向転換が1980年代後半のタケカワさんの活動に反映されたわけですね。たしかに作曲家としての活動に重点を置かれていた印象があります。

タケカワ:自分がソロでやるってことにピンとこない時期でしたからね。まったくソロ活動をしなかったわけではなかったけど4年間は作曲家がメインでした。どんどん仕事が来てね。毎日1曲は書いてました。

ガイド:松田聖子さん、中森明菜さん、浅香唯さん、光GENJI……当時のトップアイドルをほとんど手掛けられてますよね。

タケカワ:ヒットになったもの以外にも山ほど書きましたよ。新人さんの曲やアルバム曲もやりましたから。4年で1000曲は書いたんじゃないかな。でも4年間やってすっぱり辞めました。

ガイド:せっかくうまくいってるのに辞められたんですか?

タケカワ:はい、いったん注文を全部断りました。

ガイド:なにかきっかけがあったんでしょうか?


タケカワ:ある時、知り合いのアーティストから「お前白色レグホンだな」って言われてね。たしかに鶏が卵を産むみたいにひたすら曲を書き続ける日々なんですよね。そう思うとずっと部屋の中にこもって仕事することに気が滅入ってきたんです。

それに全部同じくらいのクオリティーで書いてるつもりなのに後々まで残る曲ってほんのわずかなんですよね。捨てられる……っていうのもおかしい言い方かもしれないけど、ほとんどの曲が一度録音されたっきり二度と振り返られない曲になってしまうことにも抵抗感が生まれてきて、家の中ではなく、外に出て仕事がしたいなと思うようになったんです。


タレント活動でみつけたもの

ガイド:作曲家を辞めて今度は何を活動の軸にしたいと思われたんですか?

タケカワ:タレントですね。「俺はテレビに出る!」って言って(笑)

ガイド:『午後は○○おもいッきりテレビ』(日本テレビ)とか出ておられたのはリアルタイムで観ていました。

タケカワ:そうですね。ほかにも司会をやったり旅番組に出たりして。こちらからお願いしていろいろ出してもらいました。

ガイド:タケカワさんにとってはタレント活動と音楽活動との関連性はあったのでしょうか?

タケカワ:初めは、気に入ってもらえたら、一生タレントだけでやっていく覚悟だったんですけど、テレビに出始めたらだんだんと地方のイベントで歌ってくれっていうオファーが増えてきたんですよ。いわゆる営業ですね。

ガイド:それまでにも営業的なイベント出演はされる方だったんですか?

タケカワ:ゴダイゴの時にありましたけど、少し苦い思い出だったんです。

ガイド:なにがあったんでしょうか?

タケカワ:自分たちのコンサートと違って家族連れとかいろんなお客さんが来るじゃないですか。そういう時ってウケるのは『銀河鉄道999』とか有名な曲だけ。あとは英語の歌で意味わからないから子供とか寝ちゃってる(笑)。無力を感じましたね。濃厚なファンの人にだけウケるんじゃなくて、みんなが楽しめることをしなくてはいけないんだと痛感しました。それができないとせっかく来てくれたお客さんに失礼だとも思ったし。

でもそういう記憶があったから今度はこれを極めたいと思うようになったんですよ。テレビで僕を知ってイベントに来たお客さんを「すごくよかった!」って言って帰らせるためのテクニックを磨きたいなと。以後、二十数年それをやってるわけですけど今は相当自信がありますよ(笑)


今アレンジが一番楽しい

ガイド:タレント活動開始と同時期に本格的なソロ活動も再開されて、講演活動もされて……結果的に非常にマルチな展開をされているタケカワさんですが、いま一番楽しく取り組めるものってなんでしょうか?

タケカワ:アレンジ(編曲)ですね。Pro Toolsという音楽ソフトがあって、家でスタジオと同じクオリティの音作りや録音ができるんですよ。それでアルバムを作ったりするようになってもう、10年になるんですけど、何が面白いかって言うとアレンジのやり直しがいくらでもできるところなんです。

僕はデビューアルバムを自分でアレンジしてるしアレンジャーでもあったんですけど、ゴダイゴ時代は、ミッキー吉野のアレンジ能力の凄さに感動して、全然手を出しませんでした。でも、最近、僕のアレンジ能力は、実際にミュージシャンにいい演奏をさせるのには向いていなかったけれど、能力がなかったわけではないんだ、ということに気がついたんですよ。

ガイド:と言いますと?

タケカワ:ミッキーはミュージシャンの魅力や個性を引き出すのがすごくうまいアレンジャーです。反面、僕はただ譜面を書く人だった。考えた通りの音を鳴らしたいタイプなんですよね。でも頭で鳴ってる理想の音をミュージシャンにどう伝えていいかわからなかったし、演奏してもらっても「どうしてこうなるんだ」っていつも不満だった。

ガイド:全部音楽ソフトで作るとその辺のストレスは解消されますよね。

タケカワ:人間だと4回やり直させたら怒るじゃん(笑)。でも、機械を使えば自分が工夫すれば工夫するだけ怒られないで理想の音に近づけるからね。特に最近はどんどんいい機材が出て来てるから……新しいサンプラー買ったりするのも楽しいし。根がオタクなんでしょうね。だからアレンジが今やっていて一番楽しいですよ。


ライフワーク『僕のソングブック』

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ガイド:タケカワさんは2011年から『僕のソングブック』というシリーズのコンサートを年に4回、東京と大阪で開催されていますね。けっこうな頻度です。

タケカワ:ライフワークにしていきたいと思っているんです。今は、すべてのライブシリーズをライブアルバムにしてリリースもしています。

ガイド:『僕のソングブック』はどんなテーマのコンサートなんですか?

タケカワ:洋楽と邦楽のカヴァー曲を5曲ずつと、今までに出したゴダイゴか、僕のソロアルバムを丸一枚歌う、というコンサートです。これはファンの方や僕に興味を持ってくれた方に向けてやってるコンサートですね。

ガイド:過去のセットリストを見ると『伊勢佐木町ブルース』とか『また逢う日まで』、『いつまでもいつまでも』のような歌謡曲、グループサウンズナンバー、『青い影』、『監獄ロック』のようなオールディーズナンバーにかなり重点を置いておられますね。
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タケカワ:お客さんにリクエストしてもらっているんです。『僕のソングブック』に来てくれたお客さんに、アンケートを書いてもらっています。僕はそれを見て「こう来たか」とか思いながら、次に歌う歌を選んでいく(笑)

インタビュー後編はこちら

40周年記念コンサート リリース

タケカワユキヒデ デビュー40周年記念公演第2弾
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『浦和ビートルズ研究会』 ~「HELP !」「RUBBER SOUL」 50周年~ Sing many BEATLES songs & some GODIEGO hits
6月7日(日)浦和FORUM(さいたま)

『大阪ビートルズ研究会』 ~「HELP !」「RUBBER SOUL」 50周年~ Sing many BEATLES songs & some GODIEGO hits
6月14日(日)南堀江ビレボア(大阪)

詳細はこちら

タケカワユキヒデ デビュー40周年記念公演第3弾
『僕のソングブック ~カヴァーズPART10&SINGLE COLLECTION vol.2~』


7月11日(土)大丸心斎橋劇場(大阪)
7月18日(土)・19日(日)南青山MANDALA(東京)

詳細はこちら

『僕のソングブック カヴァーズ part8 & 泥棒日記 -Winter 2014-』リリース
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