全国初の分譲マンション一体型区庁舎「としまエコミューゼタウン」が完成
太陽光発電パネル 緑化パネルを配置 上階は「BrilliaTower池袋」
平成27年3月に豊島区の新庁舎となる「としまエコミューゼタウン」が完成しました。区の財政状況が厳しい中、老朽化が進む区庁舎の建て替えが喫緊の課題でした。区有財産を活かし日の出小学校跡地を含む市街地再開発事業と現庁舎地の活用によるマンション一体型の新庁舎を企画。中間免震構造を採用し1階から9階までが区庁舎、11階から49階が住宅部分。地権者住戸を除く322戸が「Brillia Tower 池袋」(売主:東京建物、一般財団法人首都圏不燃公社 施工:大成建設)として販売されました。2013年に販売された分譲マンションは人気を博し、総来場件数約3,000組で早期完売しました。設計を日本設計が担当し、外観デザイン監修を隈研吾建築都市設計事務所、ランドスケープデザインをランドスケープ・プラスが担当した建物は、環境対策を先導する斬新なつくりです。東京メトロ有楽町線「東池袋」駅と地下通路で結ばれた新庁舎を訪ねて驚くのが、建物外周を覆った多くのパネル。太陽光発電パネルや植物を纏った緑化パネルなどです。
隈研吾氏によれば樹木のような庁舎をイメージ。グリーン大通りの並木と呼応する外観デザインにすることで都市と連続する景観をつくっています。屋上緑化の豊島の森には、豊島区の自然を再現。ビオトープや小川も設けられています。区の教育委員会では、環境教育プログラムも計画しています。
4階、6階、8階の庁舎フロア南側には、グリーンテラスを設置。外階段を使って豊島の森とも結ばれています。1階~9階の中央は吹抜け空間「エコヴォイド」となっており空気の流れをつくります。庁舎を覆う「エコヴェール」、自然の連続する「エコミューゼ」などによって、庁舎部分の二酸化炭素排出量を30%以上抑えます。
庁舎内に入ると、1階から9階まで吹き抜けになっているアトリウムがあります。1階には多目的スペース「としまセンタースクエア」、3階は窓口サービスゾーンで、4階の福祉総合フロアと合わせ年末年始を除く土日を含む通年開庁します。5階は、防災対策ゾーンで災害対策センターとしての機能を設置します。
庁舎をまわって感じたのが、美術館のように展示スペースが多いこと。豊島区の歴史・文化資産を紹介、区ゆかりの美術・工芸品なども展示されています。東京芸術劇場もあり文化イベントの多い豊島区。国際アート・カルチャー都市を目指しているだけあって文化の発信力も新庁舎で高めていくようです。
竣工した建物は、未来志向のまさに唯一無二のものです。防災機能も備えた「Brillia Tower 池袋」が多くの人に支持され最高倍率18倍で早期に完売したのは、当然の帰結だと思います。今後、都市インフラの老朽化が進み更新時期が全国で迫っています。多くの行政都市の財政状況が厳しい中、豊島区新庁舎の事例は一つの成功例といえるでしょう。しかし、高層化によって付加価値創出が可能なのは、住宅価格の高い都市部に限られます。行政と住民がWin-Winになるような街づくりへの取り組みは今後さらに求められるでしょう。
次のページでは、池袋に竣工したもう一つのタワー「グランドミレーニア」を紹介します。