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子供の遊び時間が不足⁉ 遊びの天才を取り戻す方法

「遊び」というものが、子供の成長にとってどれほど大切であるかは、様々な研究が証明しています。しかし昨今遊び時間の減少と共に、「どう遊ばせたらいいのか分からない」という親子が多いのです。今回は、子供を「遊び上手」に導くためのヒントを紹介します。

長岡 真意子

執筆者:長岡 真意子

子育てガイド

子供は「遊び」を通して多くのことを学んでいます

子供の遊び時間が不足⁉ 遊びの天才を取り戻す方法

子供は元々「遊びの天才」

「遊び」は子供の成長にとって大切、とはよく聞かれる言葉ですね。では、なぜ遊びが大切なのかをざっと整理してみましょう。子供達は遊びによって、以下のようなスキルや能力を学んでいます。

・運動スキル
走り回ったり、遊具を上ったり下りたりといった総合的な運動スキルから、積み木を積んだり、ブロックをつなげたり、コップの水を他の器に移したりといった局所的な運動スキルが身につきます。
・思考力
「~だったらどうなるだろう?」といった推測力や論理的思考力がつきます。また問題を解決するために、様々な面からアイデアを思いつく水平思考も身につきます。
・言語力
自分のアイデアや思いを相手に伝えるために工夫することで、表現力や言語力が身につきます。
・自制心
ふざけて取っ組み合いなどする中で、これ以上強く叩いたら、相手を傷つけてしまうかなと自らの衝動を制御する感覚を学びます。
・想像力
砂からお城ができたり、ばらばらのブロックから飛行機ができたり、想像力が豊かに羽ばたきます。
・社会性
ルールを覚え、相手を思いやり、協力し合いと、社会で必要とされる姿勢を身につけます。またごっこ遊びでは、様々な役割を体験することで、自分とは異なる立場にある相手を理解する助けとなります。
・人が最大限の力を発揮できる「フロー状態」
遊びを通し自発的に深く興味に没頭することで、リラックスした集中状態、努力を努力と感じない「フロー状態」を身につけます。

「遊び」のすごいところとは、こうしたスキルや能力を、習い事のように大人の指導によって学ぶのではなく、自発的に楽しみながら身につけてしまえることです。またやるべき課題の間にも遊びを挟むことで、課題へ取り組む意欲や効率がより高まることも分かっています。
 

子供の遊び時間の減少がもたらす弊害

ところが昨今、世界中の多くの国で、子供の遊び時間が減っていると報告されています。日本でも、外遊び時間の減少による子供の体力の低下や、情緒面や社会性への影響が懸念されています(日 本 学 術 会 議2013)。遊び時間が減るにつれ、子供達はより情緒面や行動面に問題を抱えるようになったとするボストン大学教授 ピーター・グレイ博士の説もあります。

そうした中、日々子供に接する保育士や教育関係者が気がつくのが、「遊び方」のよく分からない子供が増えているのではないかということです。次から次へと玩具に触るだけだったり、同じことの繰り返しだったり、お友達と物の取り合いをするだけだったりと、遊びがなかなか「発展」していかないのです。

それでも子供とは、元々は「遊びの天才」。周りの環境や働きかけを少し工夫することで、その本来の姿を取り戻し、生き生きと遊び始めます。
 

子供を「遊び上手」へと導くヒント

1. 場と時間の確保
「片付けなさい!」「もう行くわよ!」と常に遮られていたら、遊びを豊かに発展させる前に終わってしまいます。遊びは、単調な繰り返しから始まり、次第に想像力が羽ばたくにつれ、様々な方向へと枝分かれし豊かになっていきます

遊びとは、ピアノができるようになった!計算が速くなった!というように、何かが目に見えて上達した!と分かり易い結果を手にするものではないかもしれません。それでも一見「無駄」にも感じるこうした遊びによって、子供達は実に多くのことを学んでいるのだと思い出してみましょう。また子供時代に自主的に遊ぶ自由時間をより持っていた人の方が、大人になってから心理面思考面に柔軟性を持ち、社会的にも認められ、心身共により健やかであるという研究報告もあります(*)。忙しいスケジュールの中にも、少しでもゆったりとできる場や時間を確保するよう心がけてみて下さい。

2. 「仕事モード」を横に置く
「仕事」の目的が、ゴールへいかに効率よくたどり着くかであるならば、「遊び」とは、寄り道を楽しむことです。まずはお父さんお母さんが、「仕事モード」から「遊びモード」へと頭を切り換えてみます。子供達がせっかく「遊びモード」になっているところ、砂山をいかに効率よく作るかとか、そんな積み木の積み方では高くならないなど口を出されるならば、子供達の想像力も遮られてしまいます。砂山を作る、積み木を積む「過程」を楽しんでみます。すると、砂山にトンネルができ運河が流れ、積み木が道路や街並みになったりと、遊びが発展していきます。

3. 五感を活用する
この石の形面白いね(視覚)、積み木を摺りあわせるとこんな音がするのね(聴覚)、このお人形さん髪の毛柔らかいね(触覚)、葉っぱからどんな匂いがする(嗅覚)? そんな五感を用いる言葉をかけながら、周り身近な物事を捉えてみましょう。五感をフルに使うことで、「この石、うさぎさんみたい!こうやってぴょんぴょん跳ねるの」、「丸い積み木を転がすとこんな音がする!」そう子供の発想力も刺激され、豊かな遊びへと発展していきます。

4. 応用の利く玩具を与える 
このボタン押したらこの部分が動くといった、特定の決められた働きをする玩具ばかりではなく、自らの想像力や創造力を用い展開していくことのできる玩具を与えるようにします。積み木や、組み立て式のセットや人形などもいいですし、布や空き箱や石や小枝などでも立派な玩具になります。

5. 想像力を刺激する言葉がけをする
子供がミニカーを前後に動かしていたら、「その車はどこにいくのかな?」「中に誰が乗っているんだろう?」と声をかけてみます。人形を抱っこしていたら、「何が食べたいのかな?」「どんなところに住みたいんだろう?」などと、想像力が広がるような言葉がけをしてみましょう。

6.普段から想像力を豊かにする働きかけをする
遊びを発展させる想像力を豊かにするため、普段から読み聞かせやストーリーテリング、また絵を描いたり工作などの創作活動を取り入れてみましょう。


スケジュールの詰まった現代の子育て生活。ついついゴールへまっしぐら!と「仕事モード」全開で1日を終えてしまいがちです。それでも「仕事モード」を少し横に置き、寄り道を楽しむ「遊びモード」に切り換える時を持ってみましょう。そんな童心に返る「遊び」時間とは、実は子供にとってだけでなく、大人にとっても、リフレッシュなひと時となるでしょう。

(*) 出典:'Does playing pay? The fitness-effect of free play during childhood' by Werner Greve  Evolutionary Psychology 12(2): 434-447より

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