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適切に対応すれば少しずつ変化していきます。

皆さんはアスペルガーという言葉を聞いたことがありますか?最近では関連する書籍などが出版されたり、大人のコミュニケーション障害についてテレビでも取り上げられたりしていますので、一度は耳にされた方も多いと思います。今回はこのアスペルガーにスポットを当て、アスペルガーやその特性を持ったお子さんの学力をどう伸ばしていけばよいのかについてお話ししたいと思います。


教育者としてのアスペルガーのとらえ方

医学的には「アスペルガー」は「アスペルガー症候群」と呼ばれます。「アスペルガー症候群」は学習面などの知能発達の遅滞が見られない自閉症と定義され、加療が必要とされています。しかし私は長年塾講師として多くの子ども達と接する中で、程度の差はあるとは思いますが、それを病気であるととらえることに抵抗を感じています。そこで本稿ではあえて「症候群」という呼称をはずして「アスペルガー」と呼びたいと思います。専門家の皆様にはご容赦いただきたく存じます。

なぜ私が「症候群」という呼称をつけたくないのか。それには理由があります。私の経営する中学受験専門塾は、中学受験専門でありながら、そのタイプの塾としては一般的である「入塾試験」というものを一切設けておりません。そのため実にいろいろなタイプのお子さんが入塾してきます。完全に先着順であるため、中には「アスペルガー症候群」ではないかと思われるようなお子さんもいます。彼らは授業中に突発的な不規則発言をしたりすることもありますが、頭ごなしに叱ったりせずにきちんとルールを説明してあげると、みな社会性を身につけ授業に集中できるようになっていきます。専門家の先生に「断言しすぎだ」と叱られるかもしれませんが、私や私の生徒の保護者の方々は、お子さんの変化を実感しています。

最初の入塾の段階で「うちの子はじつはアスペルガー症候群だと診断されたのですが、それでも大丈夫でしょうか?」とお伺いを立てられるケースもあります。ある生徒さんの場合、小学校低学年のうちは支援学級に通っていましたが、高学年になって通常クラスに移って、その後だんだんと成績が上がっていきました。この生徒さんのケースでは、友人関係も全く問題なく、明るく活発な日常生活を送っていました。もちろん少し個性的ではありましたが、いじめの対象になったり、友達がいなかったりということはなく、むしろみんなから愛される存在でした。別の生徒の例では、学校は不登校だったのですが塾には休まず楽しく通い、最終的には難関私立中学に合格して、現在楽しく通っています。こうした例は1つ・2つではありません。

私は彼らにまず問題が解けない時にイライラしたりするのは当然であり、そんな自分を認めてあげようと言います。そして「できないことは決してつらいことではない」ということを、粘り強く話して聞かせます。宿題や復習などのやるべきことの指示は、ざっくり「やってこい」と言うのではなく、細かく具体的に指示を出してあげます。するとすぐにコツをつかんで、自ら学習するようになっていきます。

こうした実体験こそが、私が「アスペルガー」を「特性のひとつ」としてとらえ、「症候群」という呼称をあえて外して論じたい、と考えるゆえんです。その上で、保護者の皆様にも「それは決して病気ではないんだ。だからそれを認めることについて抵抗を感じるのではなく、むしろ積極的に受け入れ、特性に合わせた対応をすればいいんだ」と考えていただきたいのです。


「アスペルガー」の子どもの特徴

アスペルガーに関する文献やウェブサイトによると、多くのアスペルガーの人たちにみられる特徴として、他者とのコミュニケーションがあまり上手ではないという点が挙げられるようです。それはアスペルガーの人たちが、相手の表情などから喜怒哀楽といった感情を読み取ることが苦手である、ということに起因しているそうです。そのため、相手にとって不快であることを言ってしまって相手を傷つけてしまっても、それに気付かずにコミュニケーション上のトラブルとなってしまうケースがあるようです。

一方でアスペルガーの子は、「特定のものにこだわりが強い」という特徴を持つそうです。ひとつのことに集中して、飽きずに長時間続けられるという能力は、学術研究や芸術の世界ではとても大きな力になります。実際アインシュタインはアスペルガーだったと考えられていますし、スティーヴン・スピルバーグも自らアスペルガーであることを公表しています。アスペルガーの特性は、決してマイナス面ばかりではないことを理解してください。

逆に「うちの子はアスペルガーだからお勉強ができないのね」と保護者の皆様が勝手に思い込んで子どもに接することでお子さまが劣等感を抱き、せっかくの学習伸長の機会を奪ってしまうことだってあるのです。アスペルガーに対する無認知が招く悲劇とも言えますが、日本においては社会におけるアスペルガーへの理解がまだまだ不足しているため、アスペルガーに対する偏見も多く、わが子がアスペルガーであると診断されたとたん、保護者の方が悲嘆にくれるということが少なくありません。私が出会った保護者の方々の中には「うちの子に限ってそんなはずはない」と頭から否定なさろうとする方さえいらっしゃいます。

でも決してそんな風にとらえないでいただきたいのです。次のページでは、アスペルガーのお子さんをお持ちの方や、うちの子アスペルガーかも、と悩んでらっしゃる保護者の方にとって、少しでも明るくなっていただけるお話をしたいと思います。