メトロノームの使い方!ピアノ練習に活用しよう
メトロノームの使い方とは
実際に曲を演奏する際には、メトロノームのようにテンポを一律に保って弾くわけではありませんが、どんなに柔軟にテンポを揺らして弾くスタイルの曲でも、最初にしっかりと拍の感覚をもって練習しておかなければ、ただ感情に任せて好き勝手にテンポを揺らして弾いているような説得力のない演奏になってしまいます。拍を感じて弾くことは音楽の大切な基本です!
メトロノームを上手に活用すると、拍の感覚が身につき演奏の流れが安定したり、リズムを正確に刻めるようになるなどのメリットがあります。そこで今回は、メトロノームの活用法についてご紹介します。
<目次>
メトロノームの発明
メトロノームは、1812年にオランダのヴィンケルによって発明され、その4年後にドイツ人メルツェルが改良を加え特許をとった音楽の練習ツール。オリジナルは、振り子の原理を応用したスタイルでしたが、より精度の高いデジタル式や、最近ではアプリでも手軽に手に入れることができるようになりました。メトロノーム記号
メトロノームの発明によって、作曲家は速度指示を楽譜に書き込み、自分の意図しているテンポを具体的に演奏者に伝えることができるようになりました。これを初めて作品に取り入れた作曲家はベートーヴェンとツェルニーです。
メトロノームの使い方……譜読みの段階
メトロノームは、ある程度流れを止めずに弾けるようになった練習段階で使うイメージが強いですが、まだすらすらと弾くことができない譜読みの段階でも効果的な使い方があります。メトロノームの拍に合わせて楽譜を読む
メトロノームをゆっくり目に鳴らし、ピアノは弾かずにメトロノームの拍に合わせて楽譜を指で追ってみましょう。この時、できれば拍を聞きながらリズム叩きをしたり、声を出して音符を読んでみます。リズムがわからないところはこの段階でしっかりクリアしておきましょう。たくさん音のある箇所は、片手ずつ読んでいきます。
譜読みをしている時は、次は何の音なのか、指使いはどうすればいいのか、リズムはどうなっているのかなど課題がたくさんあり、ピアノの練習時間がいつもより長くなりがちです。そこで、ピアノに向かう前に予め音の動きやリズムを確認しておくことによって、実際にピアノで練習するときの譜読みの時間を節約することができます。
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メトロノームの使い方……リズム確認
初級~中級レベルでは、音の長さの変化や付点のリズムが曖昧になりがちです。曲の中に出てくるさまざまなリズムを弾き分ける力を身に着けるために、メトロノームを使った練習が役に立ちます。下の例に使われているのは、ブルグミュラーの練習曲「アラベスク」の一部。左手の十六分音符がすべったり、右手の八分音符のタイミングが不安定になりがちです。この場合、メトロノームを四分音符を1拍として2拍子で鳴らすのではなく、八分音符を1拍として一小節に4回鳴らすほうが、十六分音符が滑りにくくなり、また付点音符の入りもはっきり確認することができます。
このように、臨機応変にメトロノームの拍の単位を調整して、リズムがしっかり刻めるように練習します。
メトロノームの使い方……ほぼ止まらずに弾けるようになった段階
ある程度練習が進み、ほぼ止まらずに弾けるようになったら、無理のない速度でメトロノームと合わせて弾いてみましょう。自分では流れを止めずに弾いているつもりでも、弾きやすいところと弾きにくいところでテンポが変わっていたり、必要以上に間をあけていたりと、自分に都合のいい弾き方をしているものです。片手ずつメトロノームと合わせる
弾くことに精一杯になってしまい、メトロノームの拍が耳に入って来なかったり、拍は聞こえてくるけれど合わせることが出来ないという場合は、はじめから両手とメトロノームを合わせるのではなく、まずは片手だけメトロノームと合わせるようにしてみましょう。
楽譜の表記を守りながらメトロノームと合わせる
メトロノームと合わせて弾き通すことができるようになったら、次の段階は、強弱やアクセント、スラーなど楽譜に書かれた指示を守って弾けるようにします。そして、それが出来るようになったら、徐々にテンポを上げて、仕上がりのイメージに近づけていきます。
テンポアップは少しずつ確実に
テンポを上げていく場合は、一気に速くしないで、少しずつ上げていきます。速く弾くことで間違いが多くなったり、リズムが曖昧になったりしたら、ひとつ前のテンポに戻ってもう少し安定感をもって弾けるようになってから次のテンポにチャレンジします。
メトロノームに合わせて弾けるということは、それだけ指運びが安定しているということ!基礎力の確認にもなる
メトロノームを使って音楽の流れを止めない習慣をつける
メトロノームは、ちょっと迷って打鍵が遅れたり止まってしまっても、待ってくれずに正確に拍を打ち続ける意地悪もの! メトロノームと合わなくなると、たいていガッカリして弾くのを止めてしまいますが、そこであきらめずに、できるだけすぐに弾けるところからピックアップしてメトロノームについて行くようにしましょう。音楽は流れが大切! たとえ遅くなったり止まったりしても、すぐに立て直して弾き続ける習慣をつけたいものです。
メトロノームを使った練習で注意すべきこと
正確に拍を刻む演奏が良い演奏ではないメトロノームの活用法をご紹介してきましたが、それはあくまでも練習段階のこと。実際の演奏では、メトロノームのように正確な拍を保つのではなく、メロディーをのびのびと歌ったり息継ぎをしたり、譜面上の表記に従いテンポを変化させたりと、感情のこもった生きた音楽にしなければいけません。
メトロノームと合わせて弾く練習をやり過ぎてしまうと、逆に拍にとらわれて自由に歌えなくなることもあるので気をつけましょう。
メトロノーム記号にとらわれすぎない
曲の冒頭に表記されているメトロノーム記号は、必ずしも作曲者本人が書き込んだものではありません。校訂者や出版社によってつけられたものもあり、同じ曲でも版によってかなり違いがある場合も。
メトロノーム記号はもちろん参考にするべきですが、その数字にとらわれ過ぎてしまうと、自分が一番上手に弾けるテンポを見失ってしまうこともあります。演奏は、個々それぞれの技術力や表現力、解釈によって、同じ曲でも上手に弾きこなせるテンポは違います。作曲者が意図したテンポを踏まえたうえで、自分に最適なテンポを設定しましょう。
ちょっと面白いメトロノーム雑学
メトロノームは単なる音楽の練習ツールにあらず! ハンガリーの作曲家リゲティ・ジェルジュ(1923-2006)は、100台のメトロノームのための「ポエム・サンフォニック」という曲を作りました。メトロノーム100台をM.M.50からM.M.140の間でセットし、同時に動かし始めます。メトロノームが一斉にそれぞれのテンポで鳴り出すので、最初はすべての拍が混ざり合い「ザー」という激しい嵐のような響きになりますが、一台一台止まり始め、徐々に各メトロノームの拍がはっきり聞こえてくるようになります。そして最後の一台が止まったところで演奏は終了という構成です。「どんな音楽?」と興味をもったら、是非聴いてみてください。
【関連サイト】
リゲティ・ジェルジュ: 「ポエム・サンフォニック」(YouTube)
メトロノームは、練習の効率アップをサポートする便利なツール! ご紹介した練習方法を参考に、ぜひ活用してみてください。
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