アドバイス1 貯蓄ペースを上げるなら思い切った保険の見直し
貯蓄が一向に増えないというご相談ですが、世帯の年間所得が776万円。そのうち、貯蓄・投資に回っているのは40万円。家族構成や住宅ローンを考慮しても、貯蓄率は低いと言わざるを得ません。しかも、毎月の収支は赤字ですし、貯蓄はまったくのボーナス依存という点も問題です。貯蓄の足を引っ張っている要因は何でしょうか。それは明らかに保険です。自動車保険や火災保険も加えると、年間に支払っている保険料は約83万円。ここを見直すことが、貯蓄を増やすもっとも確実な方法と考えてください。
具体的な見直しですが、まず、ご主人は死亡保障1000万円の定期保険と2本加入しているガン保険のどちらかを残して、あとはすべて解約します。ただし、低解約返戻金型終身保険は、中途解約すると支払った保険料の6~7割しか戻ってきません。加入しても間もないなら解約をおススメしますが、ある程度、保険料を支払っているなら、貯蓄と割り切って継続してもいいと思います。
奥様は、医療保険か共済のどちらかを残し(死亡保障が必要なら共済)、あとは解約しましょう。2人のお子様にいたってはすべて解約でいいと思います。
結果、浮いた保険料は2万4000円ほど(低解約返戻金型終身保険を継続した場合)。これだけで、年間30万円貯蓄が増えることになります。
死亡保障は、基本的に養う家族のために確保するものです。ご主人の場合、子育てもほぼ終盤。1000万円は妥当でしょう。奥様はあっても200万~300万円。お子様は不要です。
医療保障についても、必要最小限にとどめ、若い人はほとんど不要と考えていいと思います。奥様は、ご主人がガン家系であることを心配されていますが、たとえば胃ガンの平均入院日数は25日、かかる総医療費の平均は45万円程度です。これならば貯蓄で十分カバーできます。
アドバイス2 ボーナスの貯蓄率を高めよう
保険料以外の家計支出についても、見直しが可能であればしてみてください。食費や教育費は仕方がないと思いますが、通信費や雑費は改善の余地があるかもしれません。加えて、家計で気になるのが、ボーナスからの貯蓄。年間の手取額が256万円と大きな額なのに、貯蓄はそのうち12万円とかなり少ない。
住宅ローンのボーナス払い分が年間47万円、息子さんの教育費が80万円とのことですが、それに車検費用や自動車税を加えても、100万円程度は残るはず。したがって、たとえば「50万円貯蓄する」と決めたら、その分は先取り貯蓄をしてしまうといった方策が有効。もし「余った分を貯蓄する」といった形になっているのなら、そこはいち早く改善すべきでしょう。
アドバイス3 親の介護は早めの備えを
石井さんのご相談でもうひとつ気になったのが、介護の問題です。ご主人と奥様、それぞれのお母様の介護に直面しているのですから、早めの対策が必要になってきます。介護で認識してほしいのは、認知症にしても寝たきりにしても、健康面に関しては多くの場合、改善が望めないということです。現状維持か、徐々に進行すると理解しておくべきでしょう。
それを踏まえて現状を考えれば、どちらのお母様も独居である点が心配です。いろいろなリスクが想定でき、それは日を追うごとに高くなるからです。
私は個人的には、施設に入ることが本人にとっても家族にとっても、プラスになると考えます。施設=見放す、といったイメージがあるかもしれませんが、それは違います。施設内であれば一人暮らしよりはるかに安全で、クスリの飲み忘れもなく、食事やリハビリなど健康面のケアも行き届いています。ただし、しっかり任せられる施設であれば、少なくとも月に20万円程度は自己負担が発生します。そこをクリアできるかどうかです。
ともあれ、奥様のお母様については、進行したらどうするか、兄妹で話し合いをしてください。お金が絡んできますから、話もすぐにはまとまらないはず。できるだけ早い時期にしておくことがポイントです。ご主人のお母様についても同様です。
加えて、介護を兼ねての帰省で交通費がかかるということですが、航空各社やJRなどは、遠距離介護に関しては飛行機代や新幹線代などが介護割引を実施しています。もしまだでしたら、ぜひ利用してみましょう。
教えてくれたのは……
井戸美枝さん
取材・文/清水京武
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