安養院~咲き誇る紅色のツツジ
さらに進んで、安養院へ。5月初めごろには、深紅のオオムラサキツツジが一面に咲き、境内は目の覚めるような紅色に染まります。北条政子は亡き夫・頼朝の冥福を祈って長谷に長楽寺を建てましたが、政子亡き後、兵火に焼かれてしまったため、この地に移され、再建されました。長谷にあった時代から、安養院と呼ばれていたと思われる資料もあるそうです。
ご本尊の阿弥陀如来像の後ろには、千手観音がまつられています。北条政子はこの千手観音を信仰し、この観音に祈ったおかげで頼朝と結ばれたり、頼朝が天下をとったりしたことから、良縁観音、昇竜観音などと呼ばれています。すてきなご縁や出世を願って、お参りなさってくださいね。
ご本堂の手前に悠々とそびえるのは、樹齢700年とされる、天然記念物のマキの巨木。開山の尊観上人お手植えといわれています。
境内奥には、北条政子の墓と伝わる石塔もあります。北条政子は、頼朝と結婚した後、「尼将軍」として実権を握り、北条政権の基礎を築いた女性です。信念を貫き生き抜いた、鮮烈な人生。安養院の燃え立つようなツツジの花は、懸命に生きた政子の想いを描き出しているかのようです。
<DATA>
■安養院
拝観料:100円
住所:鎌倉市大町3-1-22
電話番号:0467-22-0806
アクセス:鎌倉駅東口から徒歩約15分
YAHOO!地図
安国論寺~日蓮上人が「立正安国論」を書いたお寺
安養院を出たら、先ほどまでと同じ方向へ歩いていきましょう。名越信号のY字路に出たら、左手の少し細い道に入っていきます。突き当りにあるのが、安国論寺。春なら、みずみずしい若芽をまとったイチョウの大樹が迎えてくれます。境内に入ると、4月中旬ごろなら、明るい黄色のヤマブキの花々が。
本堂には、「立正安国」の額が掲げられています。日蓮上人は、法華経の教えを広めようと鎌倉に入りましたが、幕府や他宗徒から迫害を受けました。雨露をしのぐため見つけた岩窟を道場とし、ここで法華経を信じることの大切さを説く「立正安国論」を書いたといわれます。
本堂向かいの御小庵の裏には、御法窟という岩穴が今も残されています。そばには日蓮上人の杖が根付いたといわれる妙法桜があり、4月、八重咲きの白い花をふっくらと咲かせます。
妙法桜の傍から急な階段を登ると、富士見台から海や鎌倉のまちを見晴らすことができます。日蓮は、毎日ここから富士山に向かって法華経を唱えたそう。
さらに山道を行くと、鐘楼や、日蓮が松葉ヶ谷の法難のとき、白猿の導きで難を逃れたという南面窟があります。洞窟の中には、その伝説にちなみお猿さんの像がまつられています。
そのまま山道を一周して、本堂脇へ戻りましょう。春なら、藤棚にフジが咲いているかも。フジの花を愛でながら、ベンチに座ってほっと一息つくのもいいですね。
<DATA>
■安国論寺
拝観料:100円
住所:鎌倉市大町4-4-18
電話番号:0467-22-4825
アクセス:名越バス停から徒歩約3分
YAHOO!地図
妙法寺~みずみずしい緑のこけ石段
安国論寺を出たら、北側に少し進みます。いよいよ、こけ寺・妙法寺へ。入口で拝観料を収めたら、お線香をいただいて境内に進み、本堂にお参りしましょう。心落ち着く、お香の香り。妙法寺は、日蓮上人が鎌倉に来て布教を行うために建てた、松葉ヶ谷草庵跡(まつばがやつそうあんあと)に開かれたとされるお寺です。
本堂前あたりのお庭には、4月終わり~5月初めくらいなら、白いチョウのようなかわいらしい形のヤブデマリの花が咲いているかもしれません。鎌倉の野山にも、自生している木なんですよ。
道を進んでいくと、朱塗りの二王門の奥に、緑に包まれたこけ石段が。木漏れ日をまとう、やわらかなこけの緑。4月ごろならシャガの白い花々が咲き、緑の石段に舞う粉雪のよう。石段の右傍らには、星野立子の句碑があります。
「美しき 苔石段に 春惜しむ」
こけ石段は柵で保護されているので、脇の歩行者用の石段を登っていきましょう。水戸徳川家から寄進されたという法華堂の向かいには、中興開山・日叡上人お手植えとされるソテツの古木も。
健脚の方なら、ここからさらに急坂を登れば、日蓮上人が布教の拠点としたという庵(いおり)の跡「松葉ヶ谷御小庵(ごしょうあん)跡」や日叡上人の父・護良親王のお墓にお参りすることもできます。木立の間から海が見え、空気の澄んだ日には富士山が見えることもあるんですよ。
<DATA>
■妙法寺
拝観料:300円
住所:鎌倉市大町4-7-4
アクセス:名越バス停から徒歩約5分
YAHOO!地図
妙法寺を後にし、安養院方面に引き返して、名越バス停からバスで鎌倉駅に戻りましょう。しっとりとしたこけ石段や、鮮やかに咲く深紅のツツジに出会う散策は、きっと心を明るく元気にしてくれますよ。