サーカスのゾウはなぜおとなしいのか?

あきらめる子、あきらめない子、その違いは学習性無力感にある!

あきらめる子、あきらめない子、その違いは学習性無力感にある!

「学習性無力感」という言葉を聞いたことはありますか? これは今から50年ほど前に、アメリカの心理学者であるセリグマン博士らが見出した現象です。ここで学習性無力感の説明としてよく引き合いに出される、サーカスにいる象の話をまずご紹介しましょう。

サーカスで活躍するゾウ。巨大な体で、玉乗りをしたり、逆立ちをしたり……。それにしても何であんなにおとなしいのでしょう? それは小さい頃から、足に鉄の重いおもりをつけられて育ったため、思うようには動けないということをインプットされているからです。確かに小ゾウにとって鉄のおもりは不自由そのものでしょう。しかし、大人になったゾウにとっては、鉄のおもりなどたいした障害にはなりません。振り払おうと思えばできるはずなのです。しかし、子供の頃の「抵抗しても無駄だ」という学習のせいで、大人になっても自由に動こうとは思わないのです。

これはゾウだけではなく、人間にも起こりうることです。


「学習性無力感」って何?

先述のセリグマン博士らは次のような実験で学習性無力感を証明しました。まず、実験参加者を、逃避可能群、逃避不可能群、対象群の3グループに分けました。そしてそれぞれのグループを別々の環境に置きました。

■実験1
  • グループ1(逃避可能群):一室で騒音にさらされる。が、近くにあるボタンを押すと騒音が鳴り止む。自分が起こした行動によって、不快なものを排除できることを学ぶ。
  • グループ2(逃避不可能群):グループ1と同様の騒音にさらされる。音を止めようと様々な行動を取るが、状況は変わらず、そのうち自然に騒音が鳴り止む。
  • グループ3(対象群):騒音もなにもない無刺激な状態。
実験は次の段階へと進みます。

■実験2

実験2では、すべてのグループが騒音にさらされました。実際は手をある方向へ動かすと騒音が鳴り止む仕掛けになっていました。各グループ、動きに違いはあったのでしょうか?
  • 実験1で不快な騒音を自分で排除できることを学んだグループ1の人は、上手く手を動かしてその騒音をストップさせた
  • 全く刺激を受けなかったグループ3の人も、同様に手を動かして音を止めることに成功した
  • しかし、グループ2のほとんどの人はそれに気づかず、じっと騒音が止むまで何もせずに待っている傾向が強かった
なぜこのような違いが出たのでしょうか? それは実験1の段階で、「自分は何をしても無駄だ」「自分には状況を変える力がない」という”無力感”を”学習”してしまったから。これを「学習性無力感」と言います。

しかし、グループ2の全員が学習性無力感に陥ったわけではありませんでした。この中に「決してあきらめない人」がいたのです! セリグマン博士によると、一連の実験を通し、一貫して約3分の1の人が、学習性無力感に陥らなかったそう。

それでは、その決してあきらめない3分の1の人は、他のメンバーと何が違ったのでしょうか?


学習性無力感に陥らない人は何が違う?

それは、発想の仕方でした。あきらめない人たちは、不快な状況に置かれたとき,
「これはどうせ長くは続かない」
「どうせ今だけだ」
「すぐに消える」
「自分だったら何かできるだろう」
と考える傾向が強かったのです。俗に言う、プラス思考です。

マイナス思考の人の傾向はこれとは真逆で、
「ずっと続くに違いない」
「自分ではどうすることもできない」
「これでは何もかも台無しだ」
のように捉えることをいいます。

プラス思考は良いと言われますが、今回の実験のように、粘り強さや逆境に負けない精神力にも良い影響を及ぼすのですね。

誰だって、先が見えていれば前向きになれます。誰だって、不快な状況が永遠に続いたら無力感に陥ります。これは明らかです。それなら前者を選ばない手はありません。そう、前者か後者かを決めるのは自分なんです! まだ先の未来を暗くネガティブに決めつけてしまうのは、その人の可能性を狭めてしまうことになる、もったいないですよね。


子供の学習性無力感を避けるために

私が今回、「学習性無力感」について取り上げたのは、子育てに大いに活用することができるからです。

お子さんに
「ママにはもうできないわ」
「いつもいつもこんなことばかりでイヤになっちゃう」
「これじゃもうどうにもならないわ」
のように、長~~く不幸が続くような発言、うっかりしていませんか?

子供は素直にそれを飲み込んでしまうので注意してくださいね。そんなときは、
「ママなら何とかなるわ」
「今日はたまたま運が悪かったね」
「でもすぐに良くなるわよ」
と不幸は短く捉え、口にしていくようにしていきましょう。

子供のプラス思考、マイナス思考の発達についてもっと知りたい方は、 をぜひご参照ださい。


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※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。