ショーン・ペンとアンジー主演で描いたサスペンス
『ミスティック・リバー』(2003年度作品)
デニス・ルヘイン著の小説『ミスティック・リバー』(早川書房刊)をイーストウッドが手掛けて、アカデミー賞の主演男優賞(ショーン・ペン)助演男優賞(ティム・ロビンス)を受賞したサスペンス。
幼なじみの少年3人のうち、ひとりは連れ去り事件に巻き込まれ、それをきっかけに疎遠に。25年後、3人は再会しますが、ジミー(ショーン・ペン)は娘を殺害され、ショーン(ケヴィン・ベーコン)は、その事件の担当刑事。そしてかつての連れ去り事件の被害者デイブ(ティム・ロビンス)は、殺害事件の容疑者になってしまいます。犯人はデイブなのか?という本格的ミステリーの雰囲気を漂わせながらも、描いているのは人間の脆さです。
ジミーは娘を殺された怒りのやり場がなく復讐することで落とし前をつけようとし、ショーンは真実を追求しながらも本当に明らかにしなくてはいけない真実を封印し、デイブは自らの嘘で最悪の事態を招くのです。
公開時、ラストシーンが賛否両論分かれた問題作。正直、後味はかなり悪いですが、人間は自分より愛せる人はいないのか……と。これはアメリカの病なのか、日本も変わらないのかは、見る人によって感じ方が違うかもしれませんね。
監督:クリント・イーストウッド 出演:ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケヴィン・ベーコン、ローレンス・フィッシュバーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ローラ・リニーほか
『チェンジリング』(2008年度作品)
1920年代に実際に起きた事件をイーストウッド監督がアンジェリーナ・ジョリー主演で映画化。シングルマザーのクリスティン(アンジェリーナ・ジョリー)の息子のウォルターが行方不明に。5か月後、警察が連れてきたウォルターは別人だったという、実話サスペンスです。
このミステリーはただの少年探しだけではなく、様々な形に変わっていきます。行方不明から人違いを経て、被害者であるヒロインが非情な扱いを受けるのです。クリスティンは警察に対し、本当の息子を探してほしいと真っ当なことを言っているのですが、この発言によって心を病んでいると思われてしまう。誰も信じてくれない恐怖は『ローズマリーの赤ちゃん』級です!
無実の者が犯罪に巻き込まれるサスペンスは、1920年代に起こった出来事でも、見る者に他人事じゃないと思わせる怖さがあり、そう感じさせるのは、イーストウッドの上手さかもしれませんね。
監督:クリント・イーストウッド 出演:アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・マルコヴィッチ、ジェフリー・ドノヴァン、コルム・フィオールほか
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