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ダウンロードスターターと大きく始めるモバイルゲーム(2ページ目)

ファイナルファンタジーの生みの親、坂口博信氏が手掛けるモバイル端末向けゲーム「テラバトル」の攻略本が2015年2月27日に発売されました。どうしてこの攻略本が発売されたか、みなさんご存知でしょうか。それは、たくさんゲームがダウンロードされたからです。正確に言うと、80万以上のダウンロードがあったから、発売されました。これは、「ダウンロードスターター」という独自企画によるものなんです。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

ゲーム業界ニュースガイド

ダウンロードスターターという発明

ひそ星人の図

190万ダウンロード達成で、テラバトルのマスコット的キャラクター、ひそ星人グッズ化開始!

ダウンロードスターターは簡単に言うと、ダウンロードされた数に応じてゲームの開発を進めていくという手法です。10万ダウンロードごとに様々な追加要素が加わっていくのですが、いくつかご紹介すると、10万ダウンロードで植松伸夫氏の新曲追加、70万ダウンロードで協力プレイ開発開始、100万ダウンロードで対戦プレイ開発開始、などなど。前述の攻略本も、このダウンロードスターターによるものだったというわけです。

ダウンロード数が増えれば色んな企画が立ち上がっていくことは普通のことで、そういう意味では他のゲームとそれ程大きな違いはありません。しかし、最初からその道筋を公開してユーザーと共有することで、プレイヤーが増える喜びを分かち合い、盛り上がりを作っています。

もう1つ注目したい点は、このダウンロードスターターにある要素は、逆に言えばスタート地点では全て存在しなかったということです。協力プレイや対戦プレイ(対戦プレイは2015年2月27日時点でも未実装)、現在参加している作曲家、イラストレイターなども、多くの人は最初はいませんでした。テラバトルは非常に小さく始まっているのです。

大きく始めるモバイルゲーム

モンストの図

群雄割拠のモバイル端末向けゲーム。人気作に埋もれないようにするのは大変です

そしてこの「小さく始める」というのは、現在のモバイル端末向けゲームの潮流とは実は真逆です。モバイル端末向けのゲームというのは、小規模のゲームを展開できること、そして後から要素をどんどん付け足して運営していくことが、パッケージのゲームとの大きな違いですが、現状は大型化の波が押し寄せています。

モバイル端末向けゲームがどんどん増えていくと、ユーザーの取り合いになり、最初から様々な話題作りをし、広告をたくさん打って、事前登録をできるだけたくさん稼いでスタートダッシュを決め、App Storeなどのアプリ配信サービスのランキング上位に食い込んでいくという手法が取られます。

そうすると「小さく始めて大きく育てる」というやり方は中々難しく、大手メーカーは「大きく始めてもっと大きく育てる」を目指していきます。恐らく今後、この流れは加速して、ゲームの規模はさらに膨張していくことが考えられます。

そんな中で、「小さく始めて大きく育てる」を実践しているテラバトルの地道な成功は、大変に貴重な例であると言えます。
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