行政書士試験/試験対策・勉強本の選び方

平成26年行政書士試験の難易度と合格率、今後の展望

平成26年行政書士試験では初めて補正措置がとられ、合格基準が下がりました。なぜ補正措置がとられたのかその意味を考え、平成27年行政書士試験の展望を予想します。

山本 直哉

執筆者:山本 直哉

行政書士ガイド

平成26年行政書士試験の結果

平成26年行政書士試験の結果は、合格率は8.27%、合格者4043人でした。特筆すべき点は、補正措置が実施され、合格基準が180点から166点に下げられたことです。新試験制度が平成18年に導入されて以来、初めてのことでした。なお、平成26年行政書士試験の問題と解答はこちらで入手することができます。
 

史上初の補正措置の原因を考える

端的に言えば、平成26年本試験は民法択一が難しすぎたことが補正措置の主たる要因だと思います。実際、民法択一を1問も正解できずに合格した人がいます。合格者が1問も正解できない民法択一はやはり難しすぎます。

他方で、行政法、会社法、基礎法学は、例年と変わらない難易度で、会社法は易しいくらいでした。なお、憲法は評価がわかれますが、例年に比べると格段に難しいとまでは言えないと思います。

このように民法以外の科目は例年通りのレベルでした。

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補正措置の発動に業界は騒然、受験生は困惑です。

採点方法も一因だと思います。これまで択一が難しいときは記述の採点が甘くなり、択一が易しいときは記述の採点が厳しくなる傾向がありました。記述の採点方法が実質的に補正の役割をはたしてきたのです。しかし、今年は、上記のように択一が難しかったにも関わらず、記述の採点は甘くなかったようです。

なお、今年の記述の出題は、択一の過去問を記述に変換したレベルの問題でしたが、記述の得点は伸び悩んだ印象を受けます。これも補正措置の一因になったのではないでしょうか。

以上をまとめると、今回の補正の原因は、試験内容としては、民法択一が極端に難しく、記述も得点しづらかったのに、記述の採点が甘くならなかったことにあると思います。

今回の補正措置で判明した重大なポイント

私は補正が行われたことよりも、今回の合格率と合格者に注目しています。なぜかというと、補正により行政書士試験の実質的な合格基準がわかったからです。試験委員は、自由に合格基準を設定できる補正を発動して、行政書士試験の適正合格率は約8%、適正合格者数は約4000人という基準を明確にしたのです。

この基準から考えれば、一昨年(平成24年)の9.19%、昨年(平成25年)の10.10%の合格率は高めだったのでしょう。2年連続して過剰な合格者を出したので平成26年は難しくする方向で作成し、やり過ぎてしまったから補正を発動したと推測できます。

ところで、4000人という合格者数はどのようにして決まるのでしょうか。市場における需要と供給のバランスが大きな要因であることは間違いありません。この視点から、補正によって明確になった4000人という数字が今後どう変化するか、考えてみたいと思います。

行政書士会による調査がないので私の実感を述べますが、IT社会が発展するにつれ、反比例するように行政書士の業務領域は減少し、10年前と比べて依頼数は減少しました。その一方で、ネットの情報では処理できない案件が依頼されるため、難しい仕事が増えてきている印象を受けます。

仕事が減少しているから、もしくは、難しい案件に対応するため行政書士の資質は保ちたいとの理由から、行政書士会は合格者数の増加を望んでいないと思います。よって、今後、合格者数が大幅に増えることはないと思います。

次のページでは平成27年行政書士試験がどうなるか考えてみたいと思います。

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