3列シートミニバン「ホンダ・ジェイド」の試乗レポートが増えているが…
先日発表された3列シートミニバン『ホンダ・ジェイド』の試乗レポートがネットや雑誌で出回り始めた。読んでみたらウナるばかり。最近、新型車に甘い記事は増えている傾向ながら、ここまで私と異なる評価を見たのは初めてかもしれない。以下、極めて客観的なレポートをお届けしたいと思う。
まず3列目の居住性。3列目の乗員部分の屋根を凹ませた上、ガラスルーフにして狭さと暗さ対策している、という表記が多い。確かにハッチドアの天井部分に“えぐり”を入れているけれど、身長170cm以上の人なら「頭がハマる感じ」。しかも文字通り頭の部分しか”えぐれ”ていない。
もっと厳しいのは床が驚くほど高いこと。いわゆる体育館座りになってしまい、ヒザが2列目シートの背面に当たり、つま先の置き場所も穴のような形状。そもそも3列目シートの背面からボディ最後尾までの距離がほとんどないため、追突されたようなときに危険だと考える(日本の法規に追突要件は無い)。
2列目シートはV字型に前後スライドするようになっており、前に出すと2つのシートの間隔が離れ、下げたらピッタリ寄り添うという微妙な動きになる。大柄な男性で足を伸ばそうとすると……くっつく。逆に前に出したらくっついて、下げたら離れる動きを選んだらよかった。
1.5リッターのハイブリッドというパワーユニットは「よく走る」と、これまた好評。実際、フィットHVで問題になったギクシャク感が無くなり、普通に走ってくれる。ただ「50km/hくらいで巡航している時にアクセル全開したときのレスポンスの遅れ」という課題はそのまま残ってしまった。
アクセルを床まで踏み込んで2秒はほとんど反応せず、そこから少しずつ加速感が増していき、3秒後にフル加速体制になるというイメージ。ジェイドの試乗をするなら、この点だけは確認しておくことをすすめたい。普通に走っている限り、こういった反応遅れがあることは全く気づかないと思う。
同業者はあまり書かないが……自動ブレーキは素晴らしい!
乗り心地やハンドリングは292万円(総支払額で330万円を超える)のクルマとして考えれば普通。というか質感が低かったら誰も買わない。一方、同業者があまり書かないのに「これは素晴らしい!」と思ったのが『ホンダ・センシング』と呼ばれる、車両だけで無く歩行者も検知する自動ブレーキ。車速50km/hで停止している車両にノーブレーキで追突しそうになっても完全停止可能な性能を持っており(雨などを除く)、歩行者だって30km/h程度なら自動停止可能。それ以上の速度でもフルブレーキしてくれるため、加害性を大幅に減らしてくれる。このクラスではスバルと並んで最高性能だ。
ジェイドは中国だと「フィットの上級モデル」という位置付け。1.8リッターエンジンを搭載し、フィットの40万円高くらいで販売している。日本でもそういったクルマに仕立て、自動ブレーキ標準装備状態で200万円くらいの価格設定にしたら、きっとマーケットはあったと考えます。
ちなみにハイブリッドじゃないホンダのエンジンは素晴らしく燃費が良い。最近マツダのエンジンが世界一という認識をみなさん持っているようだけれど、同じ1.3リッターガソリンエンジン同士で比較(フィットとデミオ)したら、フィットが優性。普通のエンジンも見直したらいい。
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