不動産売買の法律・制度/不動産売買ワンポイントアドバイス

傾斜地を含む敷地の注意点

傾斜地を含む敷地は一般的に単価が安いことが多いものの、建築コストや安全性、建物の制約などについても考えなければなりません。不動産広告の規定もあわせ、傾斜地がある土地の購入を検討する際の注意点などを確認しておきましょう。(2017年改訂版、初出:2015年2月)

執筆者:平野 雅之

【不動産売買ワンポイントアドバイス No.066】

傾斜地を含む一戸建て住宅の敷地

傾斜地部分を含む敷地はコスト面以外にも注意が必要


住宅用の敷地は全体が平坦なものばかりではなく、その一部に傾斜地を含んでいる場合もあります。そのような敷地で注意しなければならないことは何か、不動産広告の規定をあわせて考えてみることにしましょう。

まず、不動産公正取引協議会による「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」では、傾斜地を含む土地について「傾斜地の割合が当該土地面積のおおむね30%以上を占める場合は、傾斜地を含む旨および傾斜地の割合または面積を表示すること」と定めています。

ただし、マンションや別荘地などは除かれる(30%を超えても表示義務はない)ほか、土地の利用が著しく阻害される場合には、傾斜地の割合が30%以上かどうかに関わらず、その内容を明示しなければなりません。

したがって、通常の一戸建て住宅の敷地の場合には、30%に満たない程度の傾斜地であれば広告に記載しなくてもルール上の問題はないわけですが、3分の1近い傾斜地部分を含んでいれば現地を見学したときにかなりの違和感があるのではないでしょうか。

一般的に傾斜地部分が多いほど土地の単価は安くなりますが、傾斜地部分の表示義務がないとき(おおむね30%以下のとき)は、その面積が事前に明確にされておらず、契約が終わってから測量をしなければ分からない場合も多いことに注意が必要です。

この傾斜地部分が土の地面のまま、あるいは芝生や植栽で覆われていることもあるでしょう。これをそのままにして敷地を利用する場合には、建物の配置や構造に一定の制約を受けることになるほか、その部分の手入れに意外と手間がかかることもあります。

さらに、当然のことながら地盤強度に対する注意も欠かせません。

また、傾斜地部分に盛土をして全体を平坦にする、人工地盤を造る、あるいは傾斜地部分を削って駐車場スペースにするといった場合には、新たに擁壁の築造が必要になるなどして想定以上の費用が発生することもあるでしょう。

新たに住宅を建てる場合の建築費も割高になりがちですが、その傾斜を逆にメリットとして生かした家づくりが可能になることもありますから、事前にそのようなプランに詳しい建築家などに相談してみるのも一つの方法です。

なお、傾斜地部分を含む土地の面積はあくまでも「水平投影面積」で表され、その表面積ではないこと、および建ぺい率や容積率の算定基準となる土地面積には傾斜地部分も含まれることについては、しっかりと理解しておきたいものです。


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