キッコーマンの醤油差しをデザインしたひと
また日本デザイン界の至宝の炎のひとつが消えてしまった。
日本デザインの先駆者のひとり:栄久庵 憲司(えくあん けんじ)氏。
病気療養中のところ、2月8日(日) に洞不全症候群のため、85歳で逝去された。
一般の方には栄久庵の名前は薄いかも知れないが、「あの○○」をデザインした人と言えば誰でもわかると思う。
「あの○○」とは、キッコーマンの醤油差し。
日本の食卓の顔の一つといっても過言ではない存在の醤油差し。家庭でも定食屋さんでも居酒屋でも、国内に限らず国外、世界中で愛用されている、あのキッコーマンの醤油差し。
何処にでもあって慣れ親しんでいるモノだよね。
そーそー思い出した!
僕が美大生時代、休学してアメリカ・LAに留学していた時。
「あっ!キッコーマンだぁ!」と、スーパーの棚で見つけたこのボトル。
緩やかな曲線の黒いボトルに赤いキャップ、ボトルに表記された黄色いロゴマークと英文:KIKOMANは、鮮明に覚えている。
なんだかとっても嬉しかったなぁ・・・そして、デザインって面白いな、と。
アイコンとして、言い訳をしないデザイン
日本製品の象徴、シンボル、つまり「日本製品、日本企業のアイコン」のひとつとして存在するものだね・・・車やファッション等と同じように。もちろん、使い勝手という「機能」も素晴らしく「キレ」がいいし、ね。
みなさん当たり前のように使用しているからおわかりだろうが、醤油を注した後の醤油のたれが生じないよう、つまり「キレ」が良い差し口。
醤油を注す時に指でもつ首元の程よい「くびれ」と大きさ、そして卓に置く時の安定性を保ち、スっと円やかな「立ち姿」の胴体が、キマっている。それにトップの「赤」・・・まるで日の丸・日本の象徴でしょ。
こういうの、「言い訳をしないデザイン」と、いうね。
成功者たちは、自分の過ちは自分で責任をとる、と聞きます。計画通りに物事が進まないこと、何かがうまくいかないことは誰にだってあるよね。そこで他人の所為にしても解決にはならなし、自分の間違いを認めて責任をとる勇気をもっていなくてはならない。
おそらく繰り返し繰り返し試行を重ねて究極のモノに仕上げたと推測するけれど、この醤油差しをみていると、まさに、言い訳をしないデザインだね。
栄久庵さんはキッコーマンの醤油差しのみならず、これまで様々な分野の企業とお仕事されてきた。まさに日本の産業史、暮らしの歴史と共に歩む姿がそこにみえてくるから面白い。
では、次のページで栄久庵さんが設立されたデザインの仕事場『GKデザイン』の変遷をご紹介しよう。