映像翻訳には、「字幕翻訳」と「吹き替え翻訳」があります。字幕は俳優本人の声を聞くことができる、吹き替えは気軽に「ながら見」ができる、などそれぞれに魅力があります。ただ吹き替えは、声優さんが必要になるなど字幕よりコストがかかるため、制作される作品は字幕に比べて少ないのが現状です。
これらの翻訳は、一般的に「映像翻訳者」と言われる翻訳者が担当します。韓国語力を活かし、魅力的な韓国コンテンツを日本の皆さんにお届けできる大変やりがいのある仕事。それでは、「憧れの仕事」シリーズ、「映像翻訳者」についてお届けいたしましょう。
※この記事は、「アイケーブリッジ外語学院」で実施された、「韓国語・字幕翻訳プログラム」デモレッスンにおいて、講師の方が進行された講義の一部をまとめました。
「字幕翻訳」の基礎用語とルール
(以下、講師の方の進行)こちらは「SST」というPCソフトの画面です。カンバスという会社の出しているもので、いま字幕翻訳の仕事を始めようとするなら、このソフトが扱えることが条件となることがほとんどです。
まず、字幕翻訳の基礎的な用語やルールについて簡単にお話いたしましょう。映像に字幕が入る部分を取ることを「スポッティング」、その字幕が入る部分を「ハコ」と言います。「ハコ割り」というのは、どこでどのようにハコを分けるか、ということです。「イン」、「アウト」という言葉もありますが、ハコの始まりを「イン」、終わりを「アウト」と言います。
この「ハコ割り」は結構悩みます。例えば、短い台詞ならまだしも、長く、まくし立てるような台詞の場合、画面いっぱいに字幕を書き連ねることはできません。その場合、読みやすいように字幕を切っていく必要が出てくるのです。
基礎的な字幕のルールについてお話しいたします。字幕の文字数は、台詞が話されている長さ1秒につき日本語字幕4文字と決まっています。
この「1秒4文字」がどうやって決まった気になりますよね。映画字幕翻訳の第一人者である清水順二氏(英語の映像翻訳者、戸田奈津子さんの師匠にあたります)が、『映画字幕は翻訳ではない(早川書房)』という著者の中で、「1秒4文字」になった経緯について触れているので、是非読んでみてください。
SSTはその字数を自動で計算してくれます。制限字数をオーバーすると、日本語訳の横に赤いビックリマークが出ます。制限字数内で日本語訳を入れるわけですが、だからといって台詞の長さに対し、字幕が短すぎても良くありません。明らかに長くたくさん話しているのに、一言しか字幕が書かれていないと、観客や視聴者に違和感や不安感を与えてしまうのです。
字幕に斜体を用いることもあります。何かを通した声……、例えば電話の向こうの声、テレビの声。ほかには心の声、回想の声、歌詞などですね。また、文字情報を表すとき、看板などの文字、メモ書き、名札、携帯の着信なども斜体になります。
また、字幕には句読点「、」や「。」を使わない代わりに、これらを用いたい場合は半角スペースや全角スペースを開けることで対応します。また、姓名の間は「・」を入れます。例えば、「キム・ヒョンジュン」などですね。
数字は原則として英数字で、固有名詞や慣用句などは漢数字です。私が個人的に迷ったときに目安としているのは、「数えられれば英数字、そうでないものは漢数字」です。例えば、「一人っ子」。「ひとりっこ」自体が日本語の単語になっているので、「1人っ子」ではないわけですね。あとは、「一度も見たことがない」の「一度(いちど)」や、「一人娘」「一人息子」などもそうです。「1度」と書いてあると、「1℃」という温度のことだと思ってしまったりも(笑)。
迷ったときは、「朝日新聞の用語の手引(朝日新聞出版)」や「新用字用語辞典(日本放送出版協会)」などの用字事典を見ます。例えば、「ひとりむすめ」「ひとりむすこ」を引いてみると「一人娘」「一人息子」だ、と書いてあります。