ストレス/女性に多いストレス

「更年期がつらい」 体調と感情の揺れに悩む40~50代女性に送る3つのヒント

【公認心理師が解説】更年期の女性は体調の変化に悩まされるとともに、憂うつや不安、苛立ちなどの感情にも襲われがちです。不安定な感情はどんな場面で湧きやすいのかを理解し、感情との上手な付き合い方を知っておきましょう。(※画像:shutterstock.com)

大美賀 直子

大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

メンタルケア・コンサルタント。公認心理師、精神保健福祉士、産業カウンセラーの資格を持ち、カウンセラー、作家、セミナー講師として活動する。現代人を悩ませるストレスに関する基礎知識と対処法を解説。ストレスマネジメントやメンタルケアに関する著書・監修多数。

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更年期女性

少し動くだけで疲れる……更年期の女性をおそう心身の変化とは?


加齢に伴う女性ホルモンの減少により、疲れやすさ、のぼせ、ほてり、発汗、不眠、頭痛、めまいなどのさまざまな体調不良が引き起こされる40代後半から50代前半にかけての「更年期」。

更年期には体調の変化に伴って憂うつ、苛立ち、不安、あせりなどの感情の乱れも生じ、気持ちが不安定になりがちです。さらに、この時期には家族の状態もダイナミックに変化していくため、家族関係に摩擦が生じることも珍しくありません。

まずは、更年期によく見られる心の変化とストレスにはどのようなものがあるか、チェックしてみましょう。
 

1. 疲労感や体力の変化で、家事や仕事が思うように進まなくなる

更年期にはホルモンバランスが乱れによって、自律神経のバランスも乱れ、上に述べたような体調不良がしばしば起こります。体調不良に振り回されて疲弊した体の調子を整えるために、体はたくさんの休息を必要とします。そのため、疲れを知らない若いころのようには頑張れず、できるだけ体を休めたくなるものです。

気がつけば、家事にも手がつかずソファで寝そべってばかり、昼寝をしてばかり……。このような状態が続くと「たっぷり休んでも元気が回復しないのはなぜ?」と落ち込み、「だらけているだけでは? 怠けているだけでは?」と自分を責め、「このままずっと不調が続くのかもしれない」といった不安に襲われがちになります。

なかでも仕事をしている女性は、毎日通勤するだけでも重労働に感じられ、仕事が終わったらいち早く家に帰って休息をとりたい、といった気持ちになることが多いでしょう。休日は出かける意欲も起こらず、ひたすら横になって体を休めたいと思う人も少なくないと思います。そんな疲れやすい自分に自信を失い、「この先、仕事を続けていけるだろうか」という不安を抱えがちになるものです。
 

2. 家族のライフステージが劇的に変化し、感情が乱される

更年期の年代は、家族のライフステージに変化が現れる時期でもあります。夫は、年齢的にも仕事上での難しい立場に立たされることが多く、管理職の重責に悩む人、リストラの危機に不安を持つ人も少なくありません。こうしたなか、夫は自分の仕事ことを考えるだけでも精一杯で、妻の健康状態に目を向ける余裕もないのが現実だと思います。
 
また更年期は、子どもとの関係にもたくさんのむずかしさがあります。親が更年期の年齢であると、多くの子どもは思春期・青年期という難しい時期に突入し、自分自身の自立の問題と格闘しています。そのため子どもの感情も不安定になりがちで、家庭でも学校でも小さなことでイライラし、親と衝突する機会も増えていくでしょう。
 
さらに、高齢となった両親からは、体の不調や高齢期の不安を相談されることも増えていき、介護のプレッシャーや高齢の親と接するストレスを抱えて憂うつが増えていく人も少なくありません。
 

3. 周囲の無理解に、孤独感が強まる

更年期は、体調の変化から感情面でも不安定になりやすいため、周囲のちょっとした言葉に傷つきやすくなります。体調を思いやれない周囲の人たちの態度に傷ついたり、「ダラダラしてないで運動でもしたら?」などと家族から不用意なアドバイスをされ、あまりの無理解にせつなさが募り「誰も私のことを分かってくれない」となどと孤独な気持ちに陥りがちです。

そうした憂うつ感の反動で苛立ちも募りやすくなるため、カチンときた途端にガマンの糸がぷつんと切れて、怒りの感情をヒステリックにぶつけてしまう人もいます。その怒りに周りが引いてしまうと、ますます自分が疎外されているような気がして、孤独感が強くなっていく人も少なくないでしょう。

更年期には、このようにさまざまな心の変化が起こりがちです。では、どのような心構えで生活していけばいいのでしょうか? 3つのヒントをお伝えします。
 

ヒント1. 無理せず、頑張らず、「楽になるための治療」を受ける

まずは、婦人科などの医療機関を受診し、この時期の体調不良や感情の変調が更年期障害によるものなのかを、把握することが大切です。更年期による症状だと分かったら、症状を緩和する薬(低用量ピルやホルモン補充療法、漢方薬など)を上手に使いながら体調を管理し、無理をせず、頑張らないことが大切です。

そして、「数年前まではあんなに元気だったのに」「私はもともとエネルギッシュなのに」などと、以前の自分と比べないことです。更年期の不調は女性なら誰でも経験するものなのですから、気長にあせらず、無理をせずに生活していきましょう。

家事でも仕事でも、完璧主義にならないことも大切です。どうしてもやらねばならない優先事項以外は、手を抜き、思い通りにできなくてもいいと、受け流していきましょう。ただでさえ、家族のライフステージの変化によって、気を揉むこと、対応することが増えていくのですから、完璧にやろうとするとパンクしてしまいます。

また、昨日は調子が良かったのに、今日はだるくてしんどい――というように、体調は日によって変わることが少なくありません。したがって、毎日のようにハードな予定を入れず、適度に休めるようなゆとりあるスケジュールにしていくことが必要です。
 

ヒント2. 周囲の無理解に落胆する必要はないと考える

更年期には、不快な感情に振り回されやすいもの。ただし、そうした感情に巻き込まれないように、自他の感情の状態を理解していく必要があります。「夫が気にかけてくれない」「子どもにだらしがないと言われた」などと落ち込む方も多いですが、そもそも更年期の不調は、当事者以外には理解しにくいものです。

異性である夫、ましてや子どもには分かりにくい症状なのですから、家族が思うような対応をしてくれないこと、優しい言葉をかけてくれないことに、落胆する必要はありません。自分の症状を伝えながら、理解を促していくといいでしょう。

また、憂うつがイライラに変わり、苛立ちをぶつけてしまうこともあるかもしれません。そうなってしまったとしても、そんな自分に過剰に落ち込まないことです。苛立ちが湧きやすいなら、次の「その3」のように自分の気持ちを分かってくれる人と、定期的に話をする機会を確保することが有効です。
 

ヒント3. 気持ちを理解してくれる人、分かち合える人と話す

更年期の不快な感情は、同じ経験をしてこそ理解でき、共感できるものです。自分の感情を理解してもらい、共感的に受け止めてもらえれば、それまで抱えていた思いがすっと楽になり、浄化されるでしょう。

同世代の友人同士、地域のサークルや勉強会などで知り合った友人などのなかで、すでに更年期を経験してきた人、または、今まさに更年期を経験している人と話をする機会を持てるとよいと思います。同じ経験をしてきた人の話のなかにこそ、生きたアドバイスがあります。当事者間で気持ちを分かち合うだけで、孤独が薄れ、安心感を持つことができます。

更年期の不調は、長きにわたって続くものです。その期間、少しでも気持ちと体を楽にし、安心して暮らせるように体と心の管理を続けていくことが必要です。
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